帰ろう
「レン、どうしても人間と戦うのか?」
俺は懇願するでもなく敵対するでもない妙な口調で問う。
「一族の存命を確認した後、何故牙を収めたのか問うてから…の。」
「やっぱり許せないかい?」
「無論じゃ!人間共は我が友を、家族を…」
「それは此方も同じだ。」
「!」
「戦争とはそう言う物だろ?個人を只の戦力と認識し、その人たちの人生なんて一切考慮しない。」
俺は前世で得た戦争と言う行為に対する持論を説く。
「そ、それは…」
「レン、君が倒した人間の戦士たちにも家族や友人はいたはずだ。それについてはどう思う?」
「くっ!敵にかける情けはない!」
「人間側もそう思っただろうね。」
「なればこそ!」
「…不毛だよ。愚かだ。」
言ってる俺もどうかと思う綺麗事だ。
個人の意志は権力と大勢の想いに容易く飲み込まれると知りつつ続ける。
「な!我らが戦を愚弄するか!」
部屋中に殺気が満ちる。
「君にとってとても耳の痛い事を言うよ。君たちは負けた。つまり野神ゴリラの言う生命の監視の任から解かれたんだ。現実的にね。」
レンは驚愕の表情で俺を見る。
「生きると言う事は突き詰めて言えば戦いなんだろう。けどそれは決して命の奪い合いではないと俺は思う。」
「では、我らは…」
「レンの話しを聞くと非は人間側にあると思う。君たちは守ろうとした。だが負けた。」
ぐぬぬっ、とレンは唸る。
「よく考えて欲しい。それでも争いを選ぶのなら俺はレンの敵になる。大切な人たちを守るために…」
暫しの静寂…
「…分かった。お主らには恩がある。その申し出、今は受けよう。」
「良かった。聡明な判断を期待するよ。」
俺は内心ホッとした。
見た目は小さな少女でもドラゴンの眷族なら単体での戦闘力は俺には想像も出来ない。
「じゃあ、レンちゃん。また幾つか質問してもいいかな?」
今まで沈黙を守っていたミュウがレンに問いかける。
「うむ、構わんぞ。」
「ここは何処なの?」
「タンロンの祠じゃ。」
タンロン?聞いた事のない地名だ。
…地名なのか?
「ラウルゲオからはどの位距離があるの?」
ミュウ、ナイスだ。
「そうじゃの、ラウルゲオから北に3日飛んだ位じゃ。」
ふむふむ、飛んで3日か…って遠いな、おい!
渡り鳥がだいたい50~100km/hだとしてドラゴンは何km/hで飛ぶんだ?
最高速度に二割増しとして…約9000km?!
「ち、ちょっと待てレン!不眠不休でか?!」
「いや、日の出から日の入りまでじゃよ。」
それでも約4000kmか。
ユウタウンに戻るのに何年かかる事か…
「予想以上に遠いな…」
俺の呟きにミュウが反応し不安な眼差しを向ける。
「そんなに遠いの?」
「ああ、何年かかるか分からない。」
俺たちは黙り込む。
「我が送り届けてやろうか?」
正に渡りに船とはこの事だ!
俺は即決し答える。
「お願いします!」




