罠
「おはよう、ネーナ先生。」
「はい。おはようございます、ラリーゴくん。」
俺はひさしぶりに学校に来た。
先生は昨日の取り乱した姿は間違いです。と言わんばかりに通常運転だ。
だけど…気になるんだよなぁ。
たまに上目使いで俺を見るんだもの。
破壊力はミュウより低いが。
「あら、ラリーゴさん。ようやく出てらしたのね。」
「ああ、カノンさんおはよう。」
「聞きましてよ、ミュウと…」
はい、ストーップ!
「ダメだよカノンさん!噂が広がると誰に迷惑が掛かるかわからないんだから!」
「あら、おめでたい事でしょ?何も問題ありませんわ。」
なんでカノンさんが不機嫌なの?
「私じゃなくミュウを選んだんですから自業自得です!」
ちょっと何言ってるか分かんない…
ガヤガヤと騒いでる内に鐘が鳴り授業が始まる。
その日の内に街中に噂は巡った。
「ラリーゴ!!」
ギュネイ?
「やあ、ギュネイ。どうしたんだ?」
「いや、婚約おめでとう。街中の噂になってるよ。」
「面目ない。どうも誰かがあちこちでふれて回ったらしくて…」
「ところでラリーゴは虹石の用意はしたのか?」
~虹石~
虹石とは婚約者の女性に男性が贈る物だ。
婚約指輪みたいなものかな。
「いや、まだそんな…」
「ダメだよ、ミュウがかわいそうじゃないか。そうだ、今晩抜け出せるかい?」
「大丈夫だけど?」
「北の森で虹石が採れる地層があるんだ。案内するよ。」
「え?いいのか?是非頼む!」
俺もお金持ってないからなぁ。こないだ装備揃えてスッテンテンだから。
「僕も夜しか時間が取れないからね。」
「場所を教えてくれれば俺1人で行くけど?」
「ああ、場所の説明が難しいんだ。説明するくらいなら案内したほうが早いよ。」
そう笑ってギュネイは言った。
「じゃそろそろ行くよ。今晩、北門で待ってるから。」
そう言ってギュネイは荷物を担ぎなおして行ってしまった。
「なんだよ、いいやつじゃん。」
俺はギュネイについての認識を改めなきゃな、と思った。
~某所~
「今夜決行です。」
「では手筈通りに。」
~日没後・北門~
「待たせたか?」
「いや、僕もさっき来たんだ。」
やはり痩せたよ、ギュネイ。
「じゃ、行こうか。」
~北の森・虹石の地層~
「ここだよ。」
なるほど、ここなら。
おれの目の前には巨大な壁がある。
それは地層になっていて何層もの地層が歴史を思わせる。
「じゃ掘るか。どのあたりが虹石の出る地層だろう?」
「あの灰色がかった青い地層がそうだね。」
「よし、掘ろう。」
俺は地層にピックを突き立て地層を掘り始めた。
暫く掘っているとカツンとピックに何かが触る。
掘り出してみる。
やった、虹石だ。
それも結構でかい。
「凄いなラリーゴ。こんな大きい虹石初めて見たよ。」
俺もさ。
俺たちは道具を仕舞い帰り支度を済ませると帰路につく。
…
……
………何かいるな。
殺気だ。それなりに大きい。
「ギュネイ、気をつけろ。なんかいるぞ。」
俺が告げるとギュネイは驚いていた。
「来る!」
闇の中から一筋の光が襲いかかる。
剣撃。
俺はギュネイを突き飛ばし敵から距離を取らせる。
「誰だ?目的は?」
話すわけないか。
「お前の命。もらい受ける。さもなくば私の…っ!」
喋り終わる前にさらなる攻撃。
回避しながら距離を取る。
会話は無理か。
続く剣撃を捌きながら俺は獣気を巡らせる。
バリッ!
俺は白銀の猿人となり敵と並ぶ。
敵は驚いたのか動かない。
ギュネイも同じく固まっている。
俺は猿王の胸当てに拳を打ちつける。
固有スキル~ドラミング。
敵を威嚇し、さらに自分の筋力を上げる効果がある。
この威嚇で逃げてくれれば助かるんだが。
無理か。
敵は2、3撃目と続けて攻撃してくる。
岩猿の小手で捌きながら一気に間合いを詰めた。
「ぶっ飛べ。」
右正拳突きが敵を捉えた。
敵ははるか後方に吹き飛び、木に当たり動きを止める。
パンッと乾いた音が響き衝撃波が襲う。
音速拳。
初めて打った音速拳より遥かに早く、破壊力もある。
手加減はしたがまず立てまい。
「終わった、のか?」
ギュネイが近づいてくる。
「ああ、終わりだ。」
そう告げるとギュネイは敵に歩を進める。
「死んでる。」
「そうか、仕方ないな。俺は訳も分からず殺されたくないからな。」
ギュネイは俺のセリフに固唾を飲む。
「いろいろすまなかったな。帰ろう。」
俺たちは敵の死体をその場に残して森を後にした。
~翌朝~
「ラリーゴを出せ!」
家が囲まれてる。
尋常ならざる殺気が我が家を取り巻いている。
「うるせぇ!ウチの息子が何したってんだ!」
「ラリーゴは人殺しだ!」
な、に?
「燃料屋のゲスタが殺された!」
「北の森で死体が見つかったんだ!」
「ラリーゴは昨晩北の森に向かう所を目撃されている!」
「目撃者もいるんだ、来い!ギュネイ!」
う、そ、だろ?
「僕は見ました。ラリーゴが叔父さんを殺すところを」




