とある女性の体験談 ― 巨木と私 ―
どうも、初投稿です。
よろしくお願いします。
では、また後程……。
※これはフィクションです。
それは、とある雨の日の夕方のことでした。
私は、大学でのサークル活動を終え、家路につこうとしていました。
私の家は、幹線道路を挟み大学の真向かいにあり、その近さ故に、小雨の日には傘を持たず大学へ登校することがしばしばありました。その日も朝は小雨で、傘を大学に持ってきていませんでした。
その日のw雨は、いつもにも増して強く、同時に濃霧がかっていたので、数メートル先も見えない状態でした。私は、傘を持って来なかったことを後悔しながらも、肩にかけていた鞄を頭にのせ、その雨の中を走り出しました。
しかし、いくら走っても家に着きませんでした。いくら濃霧の中でも、自分の家が分からなくなることはありえません。私は何かがおかしい、そう思い濃霧の中で立ち止まりました。同時に、さっきまで降っていた雨が止んでいることに気がつきました。頭の上に持ち上げていた鞄を肩からかけ直し、ポケットの携帯電話を取り出し、時間を確認しました。時刻は、大学を出て、まだ数分程度しか過ぎていませんでしたが、携帯の電波状況は圏外でした。おかしいなと思いつつ、私は周囲を見回しました。そうしているうちに、少しずつ霧が晴れていくのが分かり、同時に辺りは暗くなっていきました。この時、私は、初めて自分がどこにいるのかを知りました。そこは、どこかの森の中で、木々が生い茂りそのせいで陽光が地面まで届かない、かなり暗い場所でした。
私は、突然のことで、訳がわからず、足がすくみました。大学は住宅街の中央部に位置しており、10分程度でこんな不気味な森の奥深くへたどり着くことなど、到底ありえないことでした。 そして、不可解なことはもうひとつありました。周囲の草木は勿論、私も含め全く濡れた気配がありませんでした。
私は、二、三度程深呼吸をした後、どうすればいいか考えることにしました。
しかし、あまり良い解決策が浮かばなかったので、ただ闇雲に周囲を歩き回ることにしました。
木々や茂みをかき分け、なんとなく適当に歩いていると、運よく少し開けた明るい場所に出ました。空を見上げると青々としており、ゆっくりと雲が流れていくのが見え、その間から陽光が射し込み、降雨など偽りであったことを主張しているかのように思えた。
ここは、円形の広場のようで、陽光を浴びている地面は草花に覆われ、とても気持ちの良い場所でした。そして、中央にはまるでその広場の主のような、樹齢数百年は越えていると思われる巨木が聳えたっていました。私は、ゆっくりとその根元を目指し、歩きはじめました。
しかし、その巨木は思った以上に遠くにあって、その根元にたどり着くまでどれくらい歩いたか分かりません。やっとのことで、根元に到着しました。
根元から巨木を見上げていると、その大きさが何もかも桁違いであることが、遠くから見た時よりはっきりと分かりました。時折、風に葉をなびかせ、ざわざわっと大きく揺らす音がとても気持ちよく、そして優雅に見えました。その後私は、恐る恐る巨木の幹に触れてみました。その幹肌は、とてもゴツゴツしていましたが、痛いという感覚ではなく、逆に気持ちが良いと感じました。
しかし、その感覚と共に、巨木から何故か寂しさのようなものも伝わってきました。
周囲よりも育ち過ぎてしまい、容姿の違いから避けられ、集団から離れ孤独になってしまったということなのか……。よく見ると、巨木の周囲数メートルには、草木が一本も生えていませんでした。巨木の枝々で陽光が当たらず、草木が生えることができないのは分かるけれど、私はこの光景を見て、例えそれが偶然であろうとも、そう悟らざるおえないのでした。
いつの間にか、その思いを感じとった私は、目に大粒の涙をためていました。そして、私は泣きながらこの巨木に抱きついて、大丈夫……私がついてる、と何度も語りかけていました。
いつの間にか、私は抱きついたまましゃがみこみ、泣きつかれて眠ってしまいました。
気がつくと、私はどこかのベッドの上に寝かされていました。口には人工呼吸器があてられ、体からは何本もの管がでて、腕には点滴がされている。この状況から、私はここが病院であり、私が入院していることが分かりました。それと同時に、体に激しい痛みが溢れだし、自の身に何が起こったのかよく分からないという混乱と不安、ショックとで泣くこともできず、ただ虚空を見つめることしかできませんでした。
後日私が母から聞いた話ですが、私は、大学前の幹線道路で交通事故があったらしいのです。それもかなりの大惨事で、あなたはそれに巻き込まれて助からなかったかもしれなかった、とのこと。
今思えば、あの私が入り込んだ世界は、あの世とこの世の境目だったかもしれません。しかし、あの巨木が私の魂を導きこの世に繋ぎとめてくれたと考えると、なんとなく私が助かった理由に合点がつくきはしますが、だとしたらなぜあの巨木は私を救ったのか……。
今となっては分からずじまいです。
さて、これで私のお話はお仕舞いです。
聞いていただき、ありがとうございました。
(終)
いかがでしたか?
お読みいただきありがとうございました。
次回作を現在考え中ですが、まだまだ先になりそうです。
では、またの機会にお会いしましょう。