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16:嘘吐きのオブリガート

 侵入場所は、確保していた地下駐車場口。暗い屋内を、進む影は三。自分以外の二は一時共闘の関係であり、信頼できる仲間とは言えない関係。そんな連中と共に、向かわざるを得ない程、フォルテは追い詰められていた。

 Barockの歌姫二人が倒れた。これは味方内にも敵側にも動揺を走らせる。クロウの奇策で送り込まれた影武者の、正体がバレたらそこで時間稼ぎは終了だ。


(それまでに、何とか……)


 フォルテは思う。隣に奇跡を引き起こす男が居ても、これは本当に難しい仕事だと。


(シュリーと俺くらいなら何とかなる)


 しかし手を結んだ大和と撫子。彼らもそう簡単には見捨てられない。踏み込んだなら、簡単に逃げられない。それでもリードの裏切りが此方の陣営のためではないと解れば、Barock内での仲違いはひとまず収束へと向かう。そうでなければ俺の命すらも怪しい。教会が裏切るかも。


 「バロック」

 「なんだ」

 「ボディーガートもいなかったのか、あの子」

 「付けた。無気力だけど無力じゃない奴を。あいつなら、停電くらい……」


 破れない、ウェルまで殺されてしまった? 裏切ったのではなくて、殺された。無意識の内にリードを庇いたいばかりに、今まで思いつきもしなかった。暗闇を進む足が止まったために、背後のクロウがぶつかってくる。


(リード……)


 信じたくはない。それでも信じざるを得ない。この暗闇こそが答えだ。リード、お前が他の組織に付いた。お前がこの俺を裏切ったのだから、いよいよ俺の味方はいなくなる。それがリードの意思か、ボスの指示かが明るみに出るまで味方は誰一人信用できない。今は組織の足を使ったが、組織がシュリーを殺したいのなら、迎えは組織に頼めない。自力でここから脱出するか、光明が見えるまで籠城を続けなければならない。


 「どうしたバロック? ネズミかゴキでも踏んだか? 」


 此方の気も知らないで! こんなに不安で押し潰されそうな人間に向かってこの軽い言葉は! フォルテは激怒し背後の男を強く睨んだ。


 「っていうかなんで俺が先頭なんだよ、お前が前歩け! 」

 「そうしたいのは山々なんだが、お前にとって俺なんか存在自体目障りだろうし、お前等三強なんて、背後からぐさって刺したりしそうだろ」

 「大丈夫ですわ。クロウ様の後ろは私が守っておりますもの。フォルテさんが怪しげな動きをしたら撃ちます」


 会話に加わってきた声に、フォルテもクロウも驚いた。驚きのあまり思わず抱き付いてしまった奴を、慌てて突き飛ばす。その後も怯えの余り、情けない男が此方へしがみついて来た。


 「恐えよ……」

 「解った! 俺が先頭で良い!! お前俺の背後盾になれ! っていうかおかしい、いつの間に憑いてきた!? お前がいないんじゃ、丸腰だっ! 帰れ今すぐ邪魔だТро́йка! 」

 「嫌ですわ」

 「嬢ちゃん、ほんと何しに来た。分かってるのか? 」

 「ええ。盾があろうと既に侵入した者がいる。それなら私という盾も内部に在らねばなりません」


 ローザは強く言い切った。確かな情報源を持っているのだろう。こ、心強い敵……いや、一時的な味方が背後に控えている。ありがたいと言えば双ではあるが、状況が変われば殺し合うような関係だ。ローザは信用できない。


(この男は……)


 フォルテを掴む男の手は震えている。暗闇が怖いと言うより、ローザが怖いのだろう。彼女の好意が怖いのではなく、三強の歌姫から思慕の念を向けられることが恐ろしい。信者(ファン)に知られたら、それこそ彼を狙う暗殺者が増える。歌姫に神聖性を求める自身のファンが離れること、それを恐れずに好意を示す。それが国益を損なうともなれば許されることではない。けれど彼女がそれをするのだ、969メイカーのファンを減らすため、上からの指示を演じているだけ……その可能性も大いにある。そこまでクロウも察しているのだ。如何に相手が完璧な美少女であっても。


(そう、完璧……)


 ローザは装備まで完璧だ。動きやすさを重視した迷彩ドレスは、周りの明暗や色に応じて姿を変える。頭に被った薄手のベールにもその効果はあるようで、明るい髪色さえ闇の中には浮かばない。色白の顔を伏せられたら本当に何も見えなくなる。その顔にだって、装備はあって……最新の暗視鏡が辺りを見回す。

 嗚呼、出し抜かれた。まさか暗闇だとは思わなかった。自分の備えの不十分さにフォルテは呆れてしまう。日中に自分は何をしていたか、心配しかしていなかった。今だって……


 「すげー装備だな……嬢ちゃん、どっから持ってきた」

 「クロウ様、申し訳ないですわ。クーデターの皆さんにはお貸ししても良いのですが、違う組織の方には上からの命令で装備をお貸し出来ないのです」

 「気持ちだけ受け取っとくよ。ありがとな嬢ちゃん」

 「俺には何もないのか」

 「あら? ふふふ、三強相手に技術の横流しなんてしたら私どころか弟や妹まで国から始末されますわ? 」

 「楽に始末できるかと思ったのに」

 「随分と素直に敵意を口にして下さいますのね。私そういう方、個人的には嫌いでありませんでしてよ? 」

 「俺はあんたみたいに何考えてるか解らない奴は嫌いだよ」

 「クロウ様のような真っ直ぐな方も嫌いなのに? 」


 好きな“人間”なんて、誰も居ないくせに。ローザの言葉がそう聞こえ、フォルテは口元を押さえ込む。そうしなければ大声で怒鳴り返していただろう。


 「ほらよ」

 「!? 」


 再び足を止めたところで、視界が急に明るくなった。クロウが此方に暗視鏡を掛けてきたのだ。触れてみれば妙な形状。側面の仕掛けを弄れば視界が今度は暗くなる。暗視鏡の機能を搭載したサングラスか!?


(この軽さ……形状、何て技術力だ! )


 このまま持ち帰りたくすらある。そんなフォルテの心境を見て取るクロウが釘を刺す。


 「俺の相棒の形見だ。ちゃんと俺に返してくれ」

 「大事な相棒なんだろ、会話で殺すなよ」

 「いや、逆死亡フラグでな。死んだつもりで話してると割と生還するんだよ」


 歌姫としてローザが真っ当な対応。クロウは型破り。損得以外の感情で動いているのは本当らしい。惚れ込むファンが多いのも頷ける。時計屋は……敵さえ味方に吸収し、いくつもの革命を成し遂げた生きた伝説。今更ながらに、そんな男の助力を得られた偶然と、有り難さに気も昂ぶる。これは祈りでは無い。それでもやり方を間違えなければ、まだ……いいや、本当に“何とかなる”。


 「階段か……電気がない、つまり敵も仲間もここを通るって訳だよな」

 「他にもあるんじゃないか? 結構でかいテレビ局だろ? 入り口も階の移動手段もわんさかある。日中に見た地図は覚えてるか嬢ちゃん? 」


 停電でエレベーターは使えない。関係者の出入りが多い最上階までの直通箇所も当然使えはしなかった。エスカレーターならば登れはするが、目立つ場所にある上に、行けない場所が多すぎる。それを用いて行ける場所など客の見学用に解放されたスペースくらいなものだ。


 「階段を爆破でもしていくか? 俺達が登った所を壊して、上の階に行く度に下への道を全部塞いでいくとか」

 「もう防火扉が降りてるだろ。物にもよるが多少は爆発も防げる。それを吹き飛ばすとなるとこっから侵入しますと教えてるようなもんだ。つか、なんでここが残されたんだ? いきなり俺が幸運を招き寄せたとは思えないな。……何かあったか? 警備の連中は何も言ってなかったぞ? 地雷でも埋めたか? 」


 地下駐車場から一番近いルートが残されている。退路として? いや、あの場所の警備はそこまでじゃなかった。駐車場に至るまでの道も封鎖してあるとクロウは唸る。


 「時計屋、上と連絡取らないのか? 」

 「俺達が入った10分後に、連絡はするよう指示は出してる。事後報告だけどな。もう内部に敵が入っている以上、なんでもポンポン教えられはしねぇんだ。敵を騙すには何とやらって奴だ」


 軽そうな見た目に反し、クロウは多少は考えている。クロウの語りに、後方で……女が小さく笑う声。


 「ええ。けれど階段はいけません、正解の場所以外は全てに罠があります。逆にエレベーター側が安全ですわ。あそこを登れば良いだけです」


 ローザは可憐な外見の癖に、なかなかに行動的。その細腕で、クライミングの真似事をするか。


 「敵が既に私達より上に居るのなら、階段は駄目です。強行突破はうるさすぎます。ここからならば、油断させて侵入できるという物です。歌姫フォルテ。貴方は私の味方ではありませんね。ですから私の言うことは信じなくて結構ですわ」

 「何言ってんだ嬢ちゃん、こんな所で別行動なんてそれこそ……」

 「駄目ですわクロウ様」

 「貴方まで此方に来たら……私恥ずかしい」

 「え? 」

 「それに私の持っているワイヤーでは人一人が限界ですの。まず私が上に上がって、それから罠を解除しましょう。ですからお二人は此方でお待ち下さいな。私の合図が来てから登ってきて下さいましね? 」


 スカートの下を覗かれたくないと恥じらう素振りで手早く告げて、後方からローザが前へと駆けだした。その通路を抜けたら中央口正面。一番目立つ、大きな昇降機が並ぶエントランスだ。


 「行くぞ、バロック」

 「何言ってるんだお前っ、ローザを置いて行くのか!? 」

 「でけぇ貸し作っちまった。ったく、恐えよ」


 罠が仕掛けられているという階段に、クロウは向かって進み出す。一段、二段三段と……まだ何も起こらない。


 「だけどあいつは待ってろって」

 「馬鹿かお前は」


 誰が馬鹿だと言い返す気も掻き消すような、初めて耳にするような冷めたい男の声。予期せぬ男の反応に狼狽え、立ちすくんだ俺の前までクロウは再び降りてきて、一度胸ぐらを掴み……その後此方の身体を抱えてさっさと階を駆け上がる!


 「敵がもうここにいるなら、盗聴器だってそこら辺に仕込まれてるかもしれねぇ。だけどこの暗闇で、声を抑えたって烏合の俺達は会話以外に意思の疎通が出来ない。それなら嘘を吐くしかねぇんだよ」

 「!? 」

 「嬢ちゃんは俺達とは違う連絡ツールを持ってる。その上での決断だ。待ってろは、ここを突っ切れ。そういうことだ」

 「それじゃあ……」

 「あれは囮だ。俺達の会話を聞いた奴らがあそこに集まってくる。ローザはそれを仕留めるつもりだ。何匹釣れるか解らねぇけどな。怖い女だよ、殺れる自信があるんだろうさ」


 早速聞こえてきたぜと零すクロウの身体から、震えをフォルテは感じていた。まずは近くの階から爆撃音。続き、階下からの銃音。それを尻目にクロウと共に何階上へと進んだだろう。今度は上だ! 上から銃声が耳へと届く。これまで担がれるまま運ばれていたフォルテも、その音に再び取り乱す。


 「シュリーっ!! 」

 「こら、暴れるな! 走り難いだろうが! 」

 「だって!! 」


 ローザを案じる気持ちを一瞬で塗り替える、シュリーの銃の発砲音だ。撃ったのか、撃たれたのか。生きていたのか死んでいるのか死んでしまうのか間に合うのか。不安で、不安で堪らない。今すぐ風になれるなら、真っ先にあの子の元へと向かいたいのに。


 「私、あの子がいなきゃ……いなくなったら」

 「荷物抱えてても、俺の方が足が長いし俺の方がお前みたいなガキより速い! 間に合わせるから泣くんじゃねぇ! 泣くのは、本当に最悪なときに取っておくんだよ! 」


 そうでなきゃ、本当に人は立ち直れはしないから。彼はそう言いたかったのだろうか。顔を上げた先、歯を食い縛り走る男の顔にも、一筋の涙が流れて散った。本人は汗だと思っているのだろうか?


 「……クロウ」

 「何だ?」


 呼び名を変えた此方の言葉に、男は既に何かを感じ取った風。何故だろう。ここに乗り込んでから初めて、……“フォルテ”は冷静になっていた。


 「お前が俺を信じるなら、私は貴方を信じてあげる」


 手短に私が彼へと作戦を耳打ちすると、彼は呆れと感嘆を同時に示した。


 「ちっこくて可愛い成りで、随分と恐ろしいな。全く三強様は」

 「でも、それが一番。それしかないわ」

 「まぁ、嫌いじゃないぜ。面と向かって俺に死ねなんて言う奴はな! 」


 到達した階には、良い箱がある。そしてとびきりのエサも。正面突破や手当たり次第より、余程安全な策。


 「私のとっておき、貸してあげるわ」

 「バロッ……フォルテ。意味は分かってるのか? 」

 「ええ、勿論分かってる」


 *


(やはり盗聴されていたか)


 ローザがエレベーターホールに着いた頃、扉は既に開いていた。昇降機自体は下の階層、地下へと落ちていて……電力が復旧するまでは動かない。敵は窓でも切り取り入ってきたのだろう。こうなっては防犯装置も作動はしない。素直に入り口から入る方が馬鹿なのだ。


(彼もその位は気付いてる)


 盗聴しているのが敵以外にもいるならば、安心させるために足取りを残したとも言える。ラジオジャックの音声も、録音で流させた。流したのは突入後。私が外ではなく中へ来たのは、ここで食い止めるため。

 私の言葉に釣られた愚か者が、今頃ここを登っている。手始めに手榴弾をいくつか上へと投げてやれば、悲鳴と共に影が数体落ちて来た。彼らは私達の先回りをし、上から同じ事を考えていたのだからお相子だろう。今の爆発に、局前の人々が騒ぎ出すのもまもなくだ。注目を集める仕事は成功する。


 「あら、挨拶もないだなんて、不躾な方ですわ」


 私を誰か知っていて、何の躊躇もしないとは。傷付けず、生かして捕獲するつもりはない攻撃。殺すつもりで来ている。それなら遠慮も要らないか。

 物陰から放たれた閃光弾。動けなくなった私を取り囲む連中からは、武器の音が耳障りな程喧しい。あれは刃物だ。なるほどね、それはとってもсенсационный(センセーショナル)! 正面から乗り込んだ報道陣が、三強が歌姫ローザの解体ショーを目撃するとあっては大事件! 


 「私、踊りの相手にはうるさいんですのよ? 」


 眩しさで動けなくなるなんて、何世紀前の考えかしら。そんな軟弱な装備をこの私が支給されるはずがないのに。


 「……さて。あんまりにも強い歌姫も、可憐と程遠く思われますわ。そういう不祥事が目的? 」

 「馬鹿ではありませんね、歌姫ローザ」


 ぱちぱちと、乾いたやる気のない拍手。やって来たのは地下からだ。私同様ワイヤーで、此方の階までやって来る。撃ち殺すべきだったのだが、私の銃にロックがかかる。これは自動だ。背格好、声からの音声認識機能上からの許可がなければれない相手と判断したのだ。私は急遽、緊急用殺害許可を求める装置を押した。返答が来るまで、時間を稼がなければならない。最悪……刃物と残りの爆薬でやり合うしかない、か。間に合わないようなら許可は後から取れば良い。相手は此方に武器を、銃口を向けているのだから。


(フォルク……違う、×××の歌姫)


 形式上、今はBarockと手を組んでいる。それでも少し話が変わったら、Тро́йкаは×××と手を組む。三強は、そんな危うい場所にある。だから今は敵でも、簡単に殺せない。国にとっての不利益になる可能性があるのなら……時に歌姫は盾から“交渉材料”、“必要な犠牲”へと変わる。弟や妹を少しでも安全な場所に配置するのは、私のエゴだけど……一番先に死ぬのは私で良い。


(イーリャ……)


 早く姉離れさせないと。カチューシャはもう大丈夫だけど、あの子はまだまだ弱い。私がいなくなってもあの子一人でも、戦って生きていけるように育てなければいけないんだ。


 「正面から強行突破をしたものは、必ずここに来る。間違ってあなたを殺しでもすれば大事。動く盾ほど厄介なものはない」

 「……」

 「でも、それではカバーできないほど愚かですよね首謀者は。最初から味方に敵がいたとは思わなかったのかな。これだけのことを秘密裏にやるには優秀な人間が必要です。技術が必要、人脈やコネ……スポンサーも要りますね」


 随分と口の回る暗殺者。それの意味するところは、これは私の足止め? そう思わせてここを立ち退かせるのが目的? 何故すぐに撃たない? 奴も上から許可なくТро́йкаを殺すなと言われているのか?

 嘲りを含んだ女の声は高く、響きだけなら愛らしい。それでも私にとっては耳障り。Тро́йкаに裏切り者はいない。だからこう言いたいのだ。大和と撫子がスカウトした人間の中に、すでに内通者がいたのだと。

 撫子は、見栄えも良く血筋もある。クーデター後、どの陣営がこの国を手中に収めるにしても、必要な駒。どんな結果になろうとも、彼女だけは恐らく死は免れる。ならばそのために……クーデターを望んだ者は誰だ? 代わり映えのしない平穏をぶち壊す一手を望んでいたのは………すべての、陣営。


 「ね、ローザさん。何発撃ったら腰抜け共が突入してくると思います? 」


 撃った後に女は言った。わざと外してはいるが、私の頬を微かに掠る。思えば此方をはっきり認識しての言動が続く。見えていると見て間違いはない。熱線感知装置も身につけているのだろう。


 「三強がТро́йкаを敵に回す覚悟があるのね? 」

 「人は間違えてしまうことがあります。うっかりって良い言葉ですよね。故意ではなくて誤っての惨事は誰に責められましょう? 暴発かも知れませんよ、一発くらいなら! 悲しい事故ですよね! 」


 二発目は左足、三発目は脇腹を掠った。それにしたって見えすぎている。一式の装備には、赤外線遮断機能は付いている。表面体温を付近の気温に近づけ、熱での視認も困難にする優れもの。旧式はおろか他国の最新式の感知装置であっても、そう簡単に……そもそも身体のラインまでは見えないはず。……いや、認めよう。見えているんだ奴は。その上で何を企む? 機能停止が目的か。それで装備を脱ぎ捨てるのを期待して? 


 「凄い科学迷彩ですよね、その装備」

 「最新技術は売らないわ」


 黙っていたところで無駄か。観念して私は答える。


 「ええ、なので有り難く頂戴致しました。近くのビルにいましたよね、貴女の組織の人間が」


 女が黒いマントを脱ぎ捨てると、ローザからは何も見えない。その下に、此方と同等の装備を用意していた。うちの人間を……殺して、奪って。

 私は再び装置を押すが、銃のロックは外れない。直接殺したのは×××ではないのだ。×××と手を組んだという、RAnkabut! 私のような小娘より強力な兵士を屠った暗殺者。油断ならない相手がどれだけ近くに潜伏している? 全ての空路を絶たれた可能性がある。ローザは女に背を向け投げたワイヤーを上へと伸ばした。


 「あはは! 鬼ごっこですか? 意外と子供っぽいんですねローザさん! いいですよ、10まで数えてあげます。いーち!にー……」


 女は愉快そうにローザを狙い、かけ声で火炎瓶投げを始めるが構ってなどいられない! 装備の一部が吹き飛ばされたが、ナイフを使い足場を作り駆け上がる! 


 「“応答、×××殲滅許可を! 逢瀬は終わり、白鳥は湖に! 潜伏兵に多数被害あり……っ”」


久々のカタストロフ。剣と魔法の世界ばかりにいたので、バトルが心底難しい_| ̄|○ 音楽をもっと前面に出した展開を今後は予定しています。

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