序章 ートルガーヌのアーヴィン―
この本は、ファンタジーを愛するあまり書いてしまったものです。
小説を長編で一人で書くのは初めてで、複線とか結末とかを張れてないでしょうけれども、読んでやってください!!
鳴神 紫貴
その南の大地はアルザルトと呼ばれるようになり、指導者を中心にさまざまな貴族、人々、歴史が生まれていた。
東西南北に分割され、その間を縫うようにいくつかの小国が網羅する大陸の中でも、比較的大きな国となり、王家は途絶えることなく続き、今に至るアルザルト。
そこに、いくつかの小国の中でここ500年で飛躍的に大きくなりだした、北の国タヌゲルトが
宣戦布告・・・土地を求めてだ。
軍事国家である彼の国は南下を試みいくつかの国を取り込み、とうとう大国アルザルトの淵までも降りてきた。
かくして、二大王国の戦いの火蓋は切って落とされたのである。
だがしかし、そんな戦いのなか大陸全体を脅かす、新たなる敵が蠢きだした・・・
そんなことは露知らず、アルザルトの貴族、トルガーヌ家では、2人の子供達が騒ぎまわっていた。
トルガーヌ家はだいたいのところ伯爵あたりの地位にある家で、東よりの広い土地を持っていた。
正確には4人の子供が居る家だが、長男と次男は成人の儀を済ませ、二人とも王家に近しい女性と結婚している。
残ったのは、明日12歳が終わる息子アーヴィンと7歳の娘ミュリエルのみである。
唯一の男であるアーヴィンは一家のものと同じ暗い灰色の髪であったが、目は誰ともちがう明るい琥珀色であった。
唯一の男・・・と言うのは父親が戦に狩り出されていて、兄達は入り婿となっているからだ。
父親が居ない中豪勢には出来ないものの、幼友達である貴族の子供数人を呼んでの誕生会を控えた今夜は、彼にとって喜ばしいものであった。
しかし、少し浮き足立った屋敷の雰囲気に反して夜空には星が浮かばずに、重たい霧がトルガーヌ邸の周りの林と丘に幕を下ろし、大気は静まり返っていた。
おりしも、嵐の前触れの小雨のごとく唐突に、屋敷の扉が激しく叩かれた。
「夜更けにやってくる客にろくな者は居ない」とつぶやきつつ執事が玄関に向かうのを見て、子供部屋から廊下に少し出たアーヴィンは執事の背中に「早めのプレゼントに決まってるさ!それでもキミはろくでもないといえるのか?」と笑いながら叫んだ。
そのときの彼は、執事の言葉に納得するとは思っても見なかった―――。