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我輩は猫であるが、英雄の足元にいた ~異世界転生した猫は、英雄譚の裏側を見てしまった~  作者: 我輩
我輩は猫であるが、世界が我輩を忘れてくれない ~英雄譚を壊した存在は、神話になりかけている~

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別の町

 別の町では、

 まだ静けさが保たれていた。


 


 市場は開かれ、

 子どもは走り、

 誰も急いでいない。


 


 だが、

 噂は先に到着している。


 


「英雄が、

 来るらしい」


 


 それだけで、

 空気が少し変わる。


 


「今度こそ、

 本物だって話だ」


 


 誰も、

 前の英雄の名前を出さない。


 


 名前は、

 失敗の証拠だからだ。


 


 町の掲示板には、

 新しい張り紙が出ている。


 


 ――危険区域あり

 ――立ち入り禁止

 ――英雄対応予定


 


 予定。


 


 まだ、

 誰も来ていない。


 


 我輩は、

 高い塀の上から

 その町を見下ろしていた。


 


 前と同じ。


 


 地下がある。

 不安がある。

 説明が用意されている。


 


 学者が訪れ、

 地図を広げ、

 言葉を並べる。


 


「前例があります」

「対処は可能です」

「英雄がいれば」


 


 前例。


 


 それは、

 失敗を成功に言い換える

 魔法の言葉だ。


 


 町の者たちは、

 うなずく。


 


 英雄がいない世界より、

 英雄がいる世界の方が

 想像しやすい。


 


 誰かが言う。


 


「猫は?」


 


 一瞬、

 空気が止まる。


 


 すぐに、

 笑いが起きる。


 


「今回は関係ないさ」

「象徴だろ?」


 


 同じだ。


 


 否定しながら、

 必要としている。


 


 我輩は、

 ゆっくりと尻尾を揺らす。


 


 町外れの宿屋で、

 一人の若者が剣を磨いている。


 


 まだ、

 英雄ではない。


 


 だが、

 目を上げるたびに、

 期待が視界に入る。


 


 その背後に、

 物語が立っている。


 


 我輩は猫である。


 


 同じ構図は、

 繰り返される。


 


 違うのは、

 速度だけだ。


 


 人は、

 学習したと思い込むたびに、

 同じ場所へ

 より速く辿り着く。


 


 夕暮れ、

 鐘が鳴る。


 


 町は、

 準備を始める。


 


 誰かが、

 英雄の席を用意する。


 


 まだ、

 座る者はいない。


 


 だがその椅子は、

 もう逃げない。


 


 我輩は、

 その町に背を向けた。


 


 見なくても、

 先は分かる。


 


 だが――

 見届けるかどうかは、

 まだ選べる。

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