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我輩は猫であるが、英雄の足元にいた ~異世界転生した猫は、英雄譚の裏側を見てしまった~  作者: 我輩
我輩は猫であるが、世界が我輩を忘れてくれない ~英雄譚を壊した存在は、神話になりかけている~

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数日後

 数日後、

 町は、平穏だった。


 


 地下への入口は、

 板で塞がれている。


 新しい木材だ。


 急いで用意した形跡がある。


 


 誰も、

 それについて話さない。


 


 英雄候補の名は、

 口にされなくなった。


 


 完全に、

 というわけではない。


 


 「ほら、あのときの……」

 「名前は……なんだったか」


 


 記憶は、

 曖昧になることで守られる。


 


 酒場では、

 別の話題が中心だ。


 


「最近は、

 危険なことも減ったな」


「地下は封じたしな」


 


 因果は、

 都合よく整理される。


 


 我輩は、

 町の外れで、

 人の流れを眺めていた。


 


 英雄候補のために用意された

 部屋は、

 もう使われていない。


 


 だが、

 空ではない。


 


 物置になった。


 


 箱と、

 余った寝具と、

 壊れた椅子。


 


 英雄がいた痕跡は、

 役に立つ物に変換される。


 


 子どもたちは、

 地下の入口の前で遊ばない。


 


 大人が、

 そうさせている。


 


「危ないから」

「もう終わったことだから」


 


 終わった。


 


 それは、

 区切りの言葉だ。


 


 町長は、

 書類を整理している。


 


 記録には、

 こう書かれた。


 


 ――魔獣討伐

 ――被害なし

 ――英雄協力


 


 英雄の名前は、

 書かれていない。


 


 我輩は、

 その紙を見ていた。


 


 名前がない方が、

 責任が分散する。


 


 噂は、

 別の形で残った。


 


「猫は、

 見なかったな」


 


 誰かが言う。


 


「だから、

 本物じゃなかったんだろ」


 


 納得の声。


 


 猫は、

 相変わらず便利だ。


 


 我輩は、

 町の外へ出る。


 


 道は、

 次の町へ続いている。


 


 英雄の話も、

 きっとそちらへ流れていく。


 


 形を変え、

 名前を落とし、

 影だけを連れて。


 


 我輩は猫である。


 


 数日後の町は、

 何事もなかったように

 息をしている。


 


 そしてそれが、

 一番正しい終わり方だと、

 人は信じている。


 


 だから、

 同じことが、

 また起きる。

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