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我輩は猫であるが、英雄の足元にいた ~異世界転生した猫は、英雄譚の裏側を見てしまった~  作者: 我輩
我輩は猫であるが、世界が我輩を忘れてくれない ~英雄譚を壊した存在は、神話になりかけている~

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外側

 地上は、

 異様なほど静かだった。


 


 地下へ続く入口の前に、

 人々は集まっている。


 


 誰も、

 話さない。


 


 音があるとすれば、

 それは時間が進む音だけだ。


 


「……遅いな」


 


 誰かが、

 小さく言った。


 


 誰も、

 それに答えない。


 


 町長は、

 祈りの言葉を繰り返している。


 だが、

 その目は地下を見ていない。


 


 英雄候補が、

 どうなっているか。


 


 それを想像すること自体を、

 避けている。


 


 我輩は、

 建物の影で、

 人々の背中を見ていた。


 


 外にいる者は、

 中で起きていることを

 知る必要がない。


 


 なぜなら、

 結果だけが欲しいからだ。


 


 時間が過ぎる。


 


 長すぎる。


 


「……成功してる、よな?」


 


 その問いは、

 確認ではない。


 願望だ。


 


 もし、

 ここで失敗という言葉が出れば、

 誰かが責任を取らねばならない。


 


 だから、

 誰も言わない。


 


 子どもが、

 母親の服を引いた。


 


「ねえ、

 あの人、戻ってくる?」


 


 母親は、

 一瞬だけ黙り、

 それから笑った。


 


「戻ってくるわよ。

 英雄だもの」


 


 英雄。


 それは、

 安心のための単語だ。


 


 地下から、

 振動が伝わった。


 


 誰かが息を呑む。


 


 だが、

 すぐに何事もなかったように

 視線が逸らされる。


 


 もし、

 何かが起きていると認めれば、

 祈りは恐怖に変わる。


 


 時間は、

 さらに過ぎる。


 


 我輩は、

 空を見上げた。


 


 雲が流れている。


 


 世界は、

 英雄の有無に関係なく、

 進む。


 


「……猫」


 


 誰かが、

 小さく呟いた。


 


 我輩は、

 耳を立てる。


 


「前のときも、

 猫がいたって……」


 


 すぐに、

 別の声がかぶせた。


 


「今は関係ない」


 


 関係ない。


 それは、

 切り離すための言葉だ。


 


 町は、

 すでに決めている。


 


 戻ってくれば成功。

 戻らなければ、

 英雄ではなかった。


 


 それだけだ。


 


 扉は、

 まだ開かない。


 


 誰も、

 開けに行こうとしない。


 


 我輩は猫である。


 人は、

 自分が見なかったことを、

 最も簡単に正当化する。


 


 地下で何が起きているか。


 それは、

 物語の外に置かれた。


 


 ここにあるのは、

 ただ一つ。


 


 結果を待つ顔だけだ。


 


 そして、

 その顔は、

 すでに結果を決めている。

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