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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第2章 【最後の善意解放作戦】

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26/33

彼女の名は、凛


会談が終わり、今は極夜統主と卓を囲んで


「どうだったかね? 白夜統主と直接面会して 本物だと、思うか?」


「…間違いありません 彼は在核を所持してる 存在IDも確認しました 本人で間違いありません」

存在IDは隠蔽できない 存在というものは不定形で抽象的なものだが、それでも存在はするし、絶対に変わらない情報がある その人がその人であるという情報 例え完璧なクローンを作れても存在IDが重複することはない


「そうか…君がそういうのなら、そうなのだろうな」


「虚無には、死者を蘇生させる力があると思うかね?」

重要な話だろう



「…できると思います やり方次第ですが…」

この世界において無の力は死の情報よりも強力なのだろう 死んだという事実を無かったことにしたのか それとも本当に生き返ってるのか 冬にはそこまではわからなかった


「死者の蘇生か、そのようなことが技術化されれば、世の中がひっくり返るだろうな」

どのような世界であれ、生きとし生きるものには死とあうものは多かれ少なかれ恐怖の対象だ それすら克服できる可能性があることから、人は目を離せないだろう


「白銀でも、ひそかに虚無の研究がなされている、と噂がある」

それを調べに自ら敵地に乗り込むか 危険を冒すのがよほど好きらしい


「…君が、四季の開発者なのかね?」


「その質問にはお答えしません」


「そうか…」

答えないのではあれば無理に聞くことはできない 話題を変える


「冬、私の都市で雇われないか?」

率直な誘いだった


「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます もうどこかに雇われる、というのはこりごりですので」


それに自分にはやるべきことがある 


「ふむ、残念だよ」


本当に残念そうではありながら予想できていた回答でもあるのだろう 


「君はこれからどうする?」


「街を調べます この機を無駄にしたくはありませんので」


「そうか だがくれぐれも」


「わかってます 少なくとも俺が俺だとバレることはないですよ」


「頼もしいな それでは頼む」


調べなければならない 誰が生き返り、誰が死んだままなのか その違いはなんなのか?

白銀は全員が生き返ったわけではないことがわかってる 

それを調査しにいく 

その生き返った人物の中にいるかもしれないとある人物のことがずっと頭から離れなかった


街を歩く かつてとは少しだけ変わった街並み 

そこで、ふとすれ違う女性

はっとなる


「麗…?」




バシャッと、頭から冷たい水が降ってくる

「きゅはは」と、外から笑い声がした

「ごめんね〜。中に人がいるとは思わなくて〜」

そう言いながら、また笑う

「にゃーこ、それキッツ!」

トイレの中でお弁当を食べるのも惨めだけれど、こうして水浸しになるのは、せっかく用意してくれたお母様に対して申し訳ない気持ちになった

「てかさ〜、ま〜だ学校来んだ? あんた」

「早く消えてくれればいいのに」

憎々しげに、彼女は私へ憎悪をぶつけてくる

始まりは、彼女が好いていた男性が、私に告白してきたことだった

よく知りもしない相手だったため、断った。すると今度は彼女が出てきて、私への当たりが強くなった

「凛ちゃ〜ん、聞こえてますかぁ?」

ドンドンドン、と扉を強く叩く音

私は耳をふさぎ、必死にうずくまった


制服が水浸し、乾かさないと 

換えの服もズタズタに引き裂かれていた


「凛ちゃん!」

後ろから声がかかり、振り返る


「すなおちゃん…」


少し赤みがかった髪をした女の子

赤錆都市よりやってきた留学生で、友人 クラスが違うのだけが救いだった 

いつもの姿は見られたくなかった



「どうしたの、その制服……」

すなおちゃんの視線に気づいて、私は思わず肩をすくめた

「あ……えっと……ごめんね、ちょっと汚れちゃって」

先に謝ってしまう

理由を聞かれる前に、申し訳なさを差し出すみたいに。

「汚れたっていうか……濡れてるよ?」

「うん……たぶん、ちょっと不注意で……」

語尾が曖昧になる

それ以上、うまく言葉が続かなかった。

すなおちゃんは眉をひそめて、少し身をかがめる

「転んだとか?」

「……うん、そんな感じ」

嘘だと、ばれてしまいそうで視線を逸らす

「凛ちゃん」

名前を呼ばれて、びくっと肩が跳ねる

「最近、元気ないよね」

「そ、そんなこと……」

慌てて首を振る。

「ごめん、心配かけちゃって……」

また、謝ってしまう。

「心配するくらい、いいじゃん」

すなおちゃんの声は優しい

だからこそ、胸が苦しくなる

「でも……私、だいじょうぶだから」

「ほんとに?」

「うん……ほんと」

嘘が、喉に引っかかる

「何かあったら、言ってほしいな」

「……うん」

小さくうなずく

言えないって、わかっているくせに

すなおちゃんは少し黙ってから、ぽつりと言った

「無理して笑ってる感じ、する」

胸が、ぎゅっと締めつけられた

「……ごめんなさい」

反射的に言葉がこぼれる

「え?」

「私、変だよね……」

俯いて、指先を絡める

「変じゃないよ」

「でも……」

「凛ちゃん」

すなおちゃんが、困ったように笑う

「謝らなくていいのに」

それが、いちばん難しい

「……ごめん」

やっぱり、そう言ってしまった

すなおちゃんはため息をつくでもなく、怒るでもなく、

ただ静かに言った

「じゃあ、今は聞かない」

その言葉に、少し救われて、

同時に胸がちくりと痛んだ

「……ありがとう」

消え入りそうな声で、そう返した



校門を出ると、空が少しだけ赤くなっていた。

早く帰らないと、制服も乾かないし、お母さんにも心配をかけてしまう

そう思って歩き出した、そのとき

「凛ちゃん♪」

背中に、軽い声が刺さる

足が止まった

振り返ると、三人

昼間、笑っていた顔と同じなのに、夕方の影のせいで、少し違って見えた

「あ……」

声が、うまく出ない

「なに無視してんの?」

「ご、ごめんなさい……」

反射的に頭を下げる

「ほらさ」

一人が、腕を組んで言った

「帰るときは、ちゃんと言えって言ったよな?」

「……はい」

言われた覚えがある

昨日も、その前も

「今日はさ〜、いい話あるんだよ」

別の子が、楽しそうに笑う

「凛ちゃん向きの、バイト」

「……バイト、って?」

聞き返してしまった自分を、すぐに後悔する


「そ。いい感じのを、紹介してあげる」

「お金もいいしさ」

「凛ちゃんもお金、欲しいでしょ?」

嫌味になるが、お金には苦労していない ただ…

「で、でも……今日は……」

「何?」

一斉に視線が集まる

「……ごめんなさい」

断りたいのに、言葉が出てこない

「心配しなくていいって」

肩に、手が置かれる

爪が、少し食い込んだ

「行くだけ行ってみよ?」

「ね?」

足が、勝手に前に出た

「大丈夫、大丈夫」

「怖い人じゃないから」

そう言いながら、細い道に入っていく

街灯が少なくなり、空の赤も消えていく

建物の影が、やけに濃い

「……あの」

勇気を振り絞って、声を出す

「やっぱり……今日は……」

「は?」

振り返った目が、冷たくなる

「今さら?」

「もう約束してんだけど」

「失礼じゃん」

「……ごめんなさい……」

謝るたびに、逃げ道がなくなる

やがて、古いビルの前で立ち止まった

看板はなく、窓も暗い

扉の前に立つ男は、笑っていなかった

低い声で、短く何かを言う

空気が、変わる

「あ、凛ちゃんね」

いじめっ子の一人が、急に媚びた声になる

「連れてきました〜」

背中を、軽く押される

足が、震える。

「……ごめんなさい」

誰に向けたのかも、わからないまま、

私はその建物の中へ、足を踏み入れてしまった




胸の奥が、ずっとざわついていた

凛ちゃんが校門を出ていく背中

放課後の校門付近

すなおは、立ち止まった

凛ちゃんが、誰かに呼ばれている

昼間と同じ、悪そうな女の子たち

彼女達の顔は笑顔なのに、凛ちゃんの顔には笑顔がない

「……あれ」

凛ちゃんは少し俯いたまま、頷いている

そのまま、女の子たちに囲まれて歩き出した

逆方向だ

家とは、違う

「……やっぱり、おかしい」

すなおは、咄嗟に後を追った

距離をあけて、気づかれないように

角を曲がる

細い路地に入る

「すなお?」

背後から、明るい声

振り向くと、正義が立っていた

制服姿のまま、いつもの快活な笑顔

「なにしてんだ? こんなとこで」

「しっ……!」

すなおは指を口に当て、前を指差す

「凛ちゃんが……」

正義の視線が、凛の背中を捉える

「……あれ、ヤバくね?」

即答だった

「絶対、ロクなことじゃない 俺も行く」

迷いのない、まっすぐな言葉だった

「でも……」

正義君を巻き込むべきか否か

「友達だろ?」


正義はそう言って、すでに歩き出していた

薄暗い場所に建つビルの前

古いタイプのビルだ


古いビルの中は、ひどく静かだった

外の音が、嘘みたいに遮断されている

「凛ちゃん……!」

薄暗い奥、床に座らされている凛ちゃんの姿が見えた

目の前には太った男と痩せぎすの男が2人たっていた

鋭い目つきとゴツゴツとした趣味の悪い指輪をたくさんはめている


「すなお、ちゃん……?」

驚きと涙で滲んだ目が、かすかに光る

「ごめんなさい……私……」



「話はあと!」

正義くんが一歩前に出る

「その子を、離してください」

男たちが、こちらを向く

笑っていない目

「なんだ、お前ら」

「ガキが二人で正義の味方ごっこか?」


「あんたら、こんなこと、許されると思ってんのか!」

正義くんの声は震えていなかった

周りには凛ちゃんだけでなく、複数の女の子が薄着で並べられていた 

その表情からはとても合意で勧められたものとは思えなった


「今すぐ治安部隊に連絡を――」

言い終わる前に、鈍い音が響いた

後ろなら別の男がバットで殴りつけてきたのだ


正義くんの体が、壁に叩きつけられる

「正義くん!」

すなおちゃんが駆け寄ろうとするが、腕を掴まれて床に転がされる。

「うるせえな」

「正義感ぶってんじゃねえよ」

正義くんは何度も殴られ、それでも立ち上がろうとした。

「やめて……!」

凛ちゃんの声は、か細く、掠れている

「ごめんなさい……私のせいで……」

「違うよ!」

すなおちゃんが叫ぶ。

「凛ちゃんのせいじゃない!」

「お前もそこそこ顔がいいな 俺様の好みじゃないが… おい! お前らにやるよ」

「マジですか?アニキ!」

すなおちゃんの表情が固くなる


男は、凛ちゃんの制服に手をかけた

「そのかわり、こいつはおれがもらう」

指が、布に食い込み、引き裂かれる

その裸体をみて、身震いする男達 

興奮が隠せないのか、顔に高揚の跡が出ていた

「そんな後生な! 俺らにもあとで分けてくださいよ」

「考えといてやるよ くくっ」

こいつを使えばどんな人間も、イチコロよ


懐から出したそれはザインクラフトに類する技術で作られたデバイス 闇市で出回る品 注射器のようにも見えるそれは人の存在にウィルスを注いで、言うとおりに聞かせるタイプの簡易的なものだ 催眠術よりも確実に人を縛る 

人体を調べたくらいでは検出されない代物なので、ザインクラフトを扱えないものには何をされたのかさえ理解できない

技術は漏れるもの どれだけ黒金が規制をしてもお金が絡めば絶対はない 規制する側が禁止しても悪用する者はでる 

そして禁止する側がその技術に対抗できる技量がなければ悪用する側の技量だけが伸びる、その関係は今、とても危うい状態だった


凛ちゃんは目に涙をためて

「……ごめんなさい……」

その瞬間


扉が、音を立てて開いた 

そこには一人の少年が立っていた 冬だった



彼女が裸で倒れている その上にのしかかる大男

かつての記憶が重なり、俺の中の蓋が開く


「な、なんや… おどれ…」

大男は冬の孕む尋常ではない気配に冷や汗をかく



「見張りは何しとんねん!」

いかる男の胸ぐらに何か大きなものがぶつけられる 見覚えのある人の頭だった

「おまん…ええ度胸してんの… ワイらが真黒組と知っててこんなことしとんのか!」


男は冬の威圧に負けぬよう、必死で啖呵を切る


男の顔面に、拳が叩き込まれた

鈍い衝撃音

巨体が、信じられないほど簡単に吹き飛ぶ

「なっ……!?」

もう一人が振り向く間もなく、腹に蹴りが入る

男は声も出せずに崩れ落ちた




「真黒ね… お前ら あれの関係者か… なら、殺さないとな…」

真黒冬始 かつての惨劇の理由の一つ 

その関係者は皆殺しにする 

冬の中でまた一つこいつを殺してはいけない理由が消えた


「チョーシこくなや! ガキが!」

ナノテクによる身体拡張で、太った大男の両腕が異形に変形する。

肥大した腕がうなりを上げ、近くにあった机を掴み取ると、そのまま投げ飛ばした

ナノテクの技術は、ザインクラフトがあろうとなかろうと廃れない

情報構造と物質、その両方が強化されるなら、強いほうがより強くなるのは自明の理


だが

机は冬に直撃しなかった

いや、正確には――当たる前に、冬の姿が消えていた

飛来する机は視界を塞ぐだけのブラインドと化す


「どこや!」


怒号が響いた、その瞬間

死角から放たれた冬の蹴りが、大男の顔面を正確に捉えた

巨体が壁際まで吹き飛び、粉塵が舞い上がる


「なめ腐りやがって……!」


男は唸りながら、ザインクラフトによる情報強化されたフォースフィールド、フォースエッジを展開する

腕部を中心に力場が形成され、骨格と筋肉が補強されていく

伸縮する腕


その動きは、もはや純粋な物理挙動を超えていた

鞭のようにしなり、高速で空間を裂く

冬は、静かに移行する

ザインクラフトにおける戦技変換機構――武変

不変から【天変】へ

人体構造では不可能な挙動を可能にする


振るわれた腕を、冬は軽くかわす

歩くような速度で距離を詰め、一瞬で背後へ回り込む


――上手い

身体の動かし方、相手の動かし方 無駄な所作が一つもない


完璧な動作と完璧な予測から生み出される余裕はある種の芸術性と畏怖を感じられた


見る者に、そう思わせるだけの自然な所作で、蹴りが叩き込まれる


大男の体が、再び壁に打ちつけられる

――物理的な動きじゃない

大男は悟る

ザインを使っている それも、かなりの使い手だ


まるで、互いが生きている“時間の速度”そのものが違うかのようだった 

そう感じるのは、冬と大男の技量レベルの差がありすぎるためか...



冬が迫る中

大男は反射的に、隠し武器を起動する

腕部に仕込まれたレーザー銃

レーザー砲ほどの威力はないが、不意打ちには十分な代物

しかし――それは、冬相手には最悪の選択だった

放たれた光条を、冬は“見てから”斬る

光速相対性調整器プネウマ・リス・マータ

対光速兵装が光の速度と冬の相対速度を調律する装置


光の残光が切り裂かれ、消失する 

本来は避けるだけで良かった

だが冬はフォースエッジの使い方を試すためにあえて斬り払った


そんなことが可能なのか

ザインを使っても、あり得るのか


男には理解できなかった。

「お前は……なんなんや……」

冬は答えない。

「今から死ぬお前が、知る必要、ある?」

凍えるような冬の瞳 


黒金にとっても最大の対抗馬と呼べる相手にさえ、技術は流れている

――もう、時代の流れは変えられない

ただし、男の動きには、ザインクラフトの表現を数式で無理やり補った痕跡が見えた

遊びがない ガチガチに固めた最適解

表現法ミレアは使えないということだ 市販品レベルの限界 そこが唯一の救いだった


だが、十五年という年月は伊達ではない

サポートAIが音声で指示を出す

人ではなく、機械に処理を任せている

形而上の情報が変換され、

男の身体は、見た目以上に凶悪さを増していく

伸びる腕

ナノテクの変形機構を超えた強靭性を保ったまま、

鞭のようにしなり、空間を叩く

――追いつかれれば、ただでは済まない。

冬は、そう理解したうえで、踏み込んだ


敵の挙動はこちらの天変に近い動きを見せてる 

いやナノテクの恩恵を考えればあちらのほうが有利に近い 使ってる相手の技量を除けば


ものすごい速さとAIによるサポートによってこちらの動きを解析し、先読みしてくる


......ここ


その間隙をさらに予測してかわす 


「どうなってんだ!

全然あたんねぇじゃねぇか!」



『対象の行動アルゴリズムに変動が見られました』


「なんだそりゃ? どういう意味だ!」


あちらもこちらの思考予測アルゴリズムを解析してると思われます


こちらの予測を、さらに一段先で潰してくる

それを人間がやっている――そう理解した瞬間、大男の背筋が冷えた


物理的な駆動ではありえない動きで鞭のようにしなる両腕をかわす

AIとこちらの思考の読み合いが始まる


追いつかれれば、ただでは済まない。

そもそもこれは、戦闘用のアバターではないのだ。

鞭のようにしなる腕から放たれる衝撃波を、冬はフォースエッジで受け流す

フォースエッジは、単なる力場発生装置ではない

粘性、靭性、冷熱、毒性、弾性、硬性――

物性そのものを自在に変えられる

フォースフィールドの力場生成とザインクラフトの情報制御、【刻紋:無頼】による合作 

それがフォースエッジ

振る舞える値の幅は広いが、使いこなせる者は少ない

力場の性質を逐一変えて対応するより、

純粋な力場で弾き返すほうが扱いやすい

大抵の相手は、それでどうにかなる

そして、どうにもならなかった時に、泣きを見る


だから冬は、安易な使い方で満足してはいけない

これから先を見据えた戦いを予感して、今から準備するために


これからの敵は、ザインクラフトの使用を前提に考えなければならない

フォースエッジも、ナノテクによる人体拡張も、

あるいは――それ以上の技術すら

目まぐるしく変わる技術の波に、飲まれないために


エネルギー消耗率を抑え、効率的に使うことで

衝撃波をいなし続けていた

熱気も冷気も、電撃でさえも、理論上はいなせる

ザインを使えば、冷気や熱気を断ち切ることも可能だ

だが、それはあくまで机上の空論

本当にできる者が、果たしてどれほどいる?

ましてや、高速戦闘の最中に

調整を誤れば、一瞬で致命傷

針の穴を通すような操作を、ここであえて行う


それはつまり――

「舐めやがって!」

そう、敵が弱いからだ

これは実践でありながら、訓練でもあった


どれだけAIが優秀でも、

使う人間が対応できなければ、宝の持ち腐れに過ぎない

AIサポートからのアラート推奨 戦闘を離脱し、逃げることをすすめてくる


ふざけるな! ぶっ殺してやる!

頭に血が昇った大男にそれは届かなかった


冬は意識の隙間を見逃さなかった

ここ

一瞬で距離を詰める 飛んできた腕が伸び切る寸前にできてしまう一瞬の力場の薄い部分に刃を通す 

ズタズタになる両腕

しかしAIもまたそれを読んでいた 

ヤクザの口が割れる

口内から飛び出す舌が強力な貫通性を持って冬の左眼球を貫く 男の初見殺しの隠し球 両腕を犠牲にした起死回生、渾身の一撃だった


とった!


そう確信したその時に男の視界がずれる


「な、なんだと!」


冬はいつの間にか懐に入り込み左の手刀にフォースエッジをまとって振り払っていた


質量情報を持った身代わり――空蝉

かつて忍びと呼ばれた者たちの技を、冬なりに再構成したものだ


お見事です

AIは賞賛の言葉を述べた後、機能を停止する


「す、すげぇ」

正義と素直は冬をみて、息を呑んだ


凛は二人とは違う意味でその姿に見入っていた 自分一人の力だけで、全てを覆してしまえる強さに 

その憧憬はある種の崇拝に近いかもしれない


白馬の王子様 彼女は冬を見て そんな言葉を思い浮かべた


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