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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第2章 【最後の善意解放作戦】

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18/29

神の遺骸


「やぁ、冬 今日も顔だけはいいね そんないい顔、どこで拾ったの?」

どこぞの国民的ヒーローじゃねぇよ俺は カビでも食わせんぞ


顔面を机にたたきつける 


「鼻血が似合うなお前、いい顔になった 鼻血が似合う男はいい男だ でも片方だけってのはいただけない」

もう片方も増やしてやろう 


「暴力反対だよ」


「反抗的だな もう一発いっとく?」

 

「勘弁願いたいな 私が話したくなくなるかもよ?」

もう一発いくことにした 


「人の話、聞かないね」

両鼻から血を垂れ流すにやけ面のイケメン 多分一定の需要はあるよ


「俺らしいだろ? 好きになった? だめだよぉ~ おらぁ、男同志なんて、だめだよぉ~ ちゅちゅちゅっ」

挑発するように、唇を突き出して、拳を春の頬に当てながら、ぐりぐりちらつかせる

話す気になったらしい 最初からちゃきちゃき話せやカス 毎回てめぇのためになぜ俺が漫才せなあきまへんの~?


こいつとの会話は大体こんな感じで始まる いつもの光景だ 特に驚くようなことなど起きていない 大変なのはこの後なのだから 神の遺物の所在を、はなせ


「神の遺骸はどこだ?」

神の遺骸 この世界は神が死んでしまったことで、聖寵ギフトが失われた

だがこいつがいうには、ばらばらになった神の遺骸には、まだ神秘が残っているのだとかなんとか 俺はそんな設定しらないから、作者だけが知る裏設定かと最初は思っていたが、こいつ曰く、後付け設定だそうだ この世界に来たことで、何かしら設定を追加できないか試してできた成功例の一つだと ストーリーもある程度、コントロールできるとのこと ただし、突飛な設定は不可能で あくまでこの世界のルールに沿うこと、現状の状況にそぐわないルールは弾かれるらしい 例えば死んだやつらが全員生き返って、なんやかんや全員が救われる、みたいな整合性が取れないものは再現できない あくまで土台ベースありきということ


それは理解できる、この世界のアップデートはまだ完了していない 不安定な状況下であるなら、ある程度、原作者の創作が入り込む余地すきまがある それをわかっててこいつを中に入れた奴がいるってことだ 空想世界だからといって再現なくなんでもかんでもぶっこめるわけではない 土台ができてしまっている場合は特に 例えば別世界のものをこの世界で再現するというのは、境界を曖昧にする


頭の中身を除いて、あとは殺して終わり 事態はそんな単純なことではなかった

原作者の能力は創作にある 殺して終わりにするより、ある程度、こいつのストーリーラインを把握すれば、事態のコントロールがしやすいと判断した 

不測の事態はできるだけ避けたい


「冬はさ、アニマを助けたいんでしょ? でも、彼らのことを完全なる善だとでも思ってる? 人の善良さって、どこで決まるの? ダエワだって、見方を変えれば、彼らなりの生体構造が所以だ そういう風に作られている、というだけだろう? 命の形に善悪を問うのかい?」



「おいおい、きみ正気? 自分で作っておいて? まさかの俺相手に善悪議論をするつもり?」

こっち元テロリストぞ?


「それはそれで面白い試みだと思うけどね 君の精神構造には興味がある」

まるでモルモットだな


「俺がよいと思ったものが善で、俺が悪いと思ったものが悪 以上だ」


「身も蓋もないね」


「君とくだらない言葉遊びをする気はないってことの決意表明だよ」


仮にお前に100%正義があっても俺がお前を認めない


ソクラテスも孔子も、善に絶対は持たせられなかった

誰だってそうだ 善とは魂に宿る?、それとも関係性?、何かしらの法則があるのか、あるいは生命には初めから善悪の概念が組み込まれてるのか?

自分の中に答えがあるのか、自分の外に答えを求めるのか



善悪の問いとは残酷だ

絶対がないがゆえに人の行きつく先は、多数決

絶対がある場合起こることは、善でないものの排斥 魔女狩りがわかりやすい例だ


結局善悪とは、分断を起こす

善悪は議論の種にはなるが、武器にはするな というのが俺の結論だった


人は必ず誰かと争う その時に正義だの悪だのというものを振りかざすのは言い訳しているように見える

誰かの尊厳を踏みにじるなら、そこに言い訳はしてはいけないと思う

俺は白銀を潰した 後悔はしていない 言い訳もしない これからもしないだろう そして、誰が何をいようがダエワはつぶす 相いれないなら、殺しあうしかない



「やるべきとかやりたいとかじゃなく、君の本質が、見えないんだよね 私には」



「他人の理屈に納得がほしいの?」

おすすめしないけどな 俺は春の理屈、欠片も理解できないし

それに人の本質なんて、一生費やしても理解なんてできないよ した気になるのがせいぜいじゃない? 理解しようと努力する人は嫌いじゃないですが


「私には君が、他者を求める人種に見えない 理解できないものを、理解しようとは思わないだろう?」


「...」


「君は、一人で完結してる 特別他人がほしいと思ったこと、ないだろ?」


「みつかるわけ? 他人を必要とする理由って」

それはある種の自問自答のようにも見えた


「保障がないと、お前は何もしないわけ?」


「は?」


「正解が常に用意されて生まれてくるわけじゃないでしょ 意味なさそうなことでも、やってみたら、まったく予想もつかない場所につくこともある」

どれを選ぶにせよ これだけやっとけばOKな人生なんてない 少なくとも俺は知らない 限りなく正解っぽい間違い、限りなく間違いっぽい正解 その見分け方なんて、たぶんその瞬間までわからないと思う


「うん、ま、今回はそれでいいや」

全然腑に落ちてませんって顔をしている春

別に納得してもらう必要はないけどね 俺だって全部理解して生きてるなんて思いあがってない これこそ俺の道だって理解して生きてる人間なんて、ほとんどいないだろうし 俺はそこまで特別な人間ではない


「冬は、どんな子供時代だったの?」

は?いきなり過去話? 急に距離詰めてくんなよ


「別に、普通の子供だったよ どこにでもいる毎日、ああ、なんか、おもしれ~ことおきねぇかなって周りに期待して、何もしない普通の男だよ」


「アハハハッ」

嗤われたんだけど 


「君みたいなのが、スタンダードでいたら世界中大変になってるよ 嘘つくなら、もっと考えてやってね 10点」

低っ 人の会話に点数つける奴、さいてーだとおもいました まる

爪いじんな あきてんじゃねぇよ






「ハルナはどう? 元気にしてる?」


「今日はまだあってないけど、この前会った時は元気そうにしてたよ 毎日あしげく神様の家に通って」


「そう」

春はなんとも言えない表情をする 


「神に祈る人間の気がしれないね 己の罪過も恥も、神なんてものに投げるから自分で背負うことを覚えない人間が出てくる」

神様にあまりいい印象がないのだろう まぁいるかどうかもわからないものに祈ることに価値を感じないのは同感だけど 俺のそれと春のそれは、おそらく意味合いが違う


「冬は神様って、いると思うかい?」


「さぁ?」

この世界の神のことを言ってるわけではないのだろう いるかどうかなんてわかる奴はいないだろう 聞かれてる内容が言葉通りなのかは、わからないが、ストレートに受け取るなら否定できる材料も肯定できる材料もない 俺に言えるのは、いようがいなかろうが、俺には関係のない話だってことだけだ

いても俺のことは助けちゃくれないし、興味もないだろう


「お前ってさ、なんでハルナさんと一緒にいるの?」

明らかに相性悪そうなのに 彼女は敬虔な信徒だ 彼の知り合いの補完体、なのだろう、春は彼女を特別目にかけている 現実の知り合いに似ている可能性はある


この世界に宗教は存在しないが、彼女のように神様を慕って世話をするものもいる


春にどこからこの世界に入ったのか聞いても、それを答えることはなかった 知らないの一点張り 誰がやったのかも不明 黒金のことを聞いてもノーコメント もう少しシメるか?


「本題に入ろう 神の遺骸の件だけど...」

どうやら話すつもりはないらしい 神の遺骸、重要な話だけど... こいつの背景も不気味だ その目的も だが生かしておく価値がある理由の一つがこれだ


「冬は学園って、通ったこと、ある?」


「一応 学徒の資格が必要で、どうしてもね」

ひどいもんだったな 養成所とはまた毛色の違う連中 白銀のおぼっちゃん達

だが、タイプが違うだけで、中身は大して変わらなかった


「君の学生時代に興味がないわけではないけれど、今回はそれはおいておこう 君にはこの聖都の学園、今では監査所になってる場所にいってもらいたい」

この聖都に入るために必要な手続きがなされる場所 訓練や決まり事を守れるかどうか、監査官が管理・監督する場所だ 



「なんでそんなとこに神の遺骸があるわけ?」


「あるとは限らない でも、そこにいくことで、物事は動く 存在価値 というやつかな」

神は死してなお、人に寄りたいらしい 

トラブルの起こる場所に神の遺骸は引き寄せられる

創作である以上、物事には流れや順番がある ただでは手に入らない


「たぶん、ヒジリもそろそろ連絡を寄越してくるよ ナツによろしく」


「それは、なぜ?」

二人の間に緊張が走る


「それは内緒」

シメてやりたいとこだけど、エピソードが必要になるってのは信憑性が高い



「お前さ、ナツのこと、そんなに貶めたいの?」

始まったな、こいつの病気が 春が全部ほんとのこと言ってないのは、わかってる こいつがロクな創作をしていなさそうなことも


「特別なエピソードが必要かい? 物語のヒロインに悲劇はつきものだろう? それとも、何かしらの理由があれば納得するの? それともかわいい子ほど、いじめたくなるのが性とか、人を不幸にしてやりたいだけっていえば満足する? それとも、人はなぜ創作をするのか、って質問する? 意味ないよ、その質問は 君の質問の中で一番面白くない 答える価値もないほどね」


めちゃくちゃ語ってるけどね


「言葉数が多くなるのは、なんでだっけ?」


「嫌なやつ」

そのわりには楽しそうに笑っている


「本物の、マシロは、どうなったんだろうね?」

「なんともいえないね」

「君はそのことについて、どう思ってるんだい?」

「複雑な心境」

マシロは決していい奴じゃない だが人の体奪って、ってのはいい気がしない


「もし目の前に現れたらどうする?」

「わからない その時、マシロがどうしたいのかにもよる 体返せってだけなら、今すぐは無理だが、返すつもりはある ナツにちょっかいかけるなら、放置はできない」

結局のところ、俺の都合が優先される 嫌な話だ


「じゃ、俺はもういくわ」

こいつと会話してても、喧嘩にしかならない 聞きたいことも聞けたからお暇しようとすると


「冬」

春が冬を引き留める


「なんだ?」


「今はね、二次創作も、悪くないと思ってるよ」

またろくでもないこと考えてそうなことを言い出した

冬は何も答えずにでていく 喋ることがいちいち不穏


「自分監修の、ね 種も捲いた あとは、神のみぞ知る、だ」

冬が出ていったあとに、春は一人そうごちた

神など信じてはいないものの、言葉遊び

あくまで手綱は己の手の中にある 








この世界には教会がない 神様があまりにも身近にいたから でも神様の住む家は存在する そして、今その家を管理してるのがハルナさんだった


「お疲れ様 ハルナさん 調子はどうですか?」


「冬さん、お疲れ様です」

あまり歓迎されてないのはわかってるけど、様子は見ておかないといけない

彼女は春にとっての切り札 つまり人質だ


「春は、どうでしたか?」


「いつも通りでしたよ へらへら笑って、人を小馬鹿にしてくる」


「あまり暴力は、振るわないでください」


「アハハハ それは無理じゃない? すぐ手が出る奴と、口悪い奴が同じ場所にいて、何も起きないわけがないよ」

乾いた笑みとあきれたような声で答える 春と俺は水と油だ 相いれないと思う


善と悪でもなければ、正と負でもない 同族嫌悪とも違う 少し似てて、でも致命的に違う部分がある

ハルナは得も言われぬ顔をする


「冬さんは、暴力が、好きですか?」

「いやな質問するね 好きか嫌いかで言われれば、好きとしか答えられないよ」


最終的に俺を救ってくれたのはいつだって暴力だった 言葉では自分の身を守れなかった 暴力を信奉してるともいえる 神さまよりは、俺によってずっと身近だ

それに俺は教団とかなり深い因縁がある あいつらのイカれ具合にずいぶんひどい目にあわされてきた 神様に罪はないけれど、神様ってものを持ち出すものたちにいい印象は抱けなかった

もっとも神様を大事にしてる人にそんな無神経なことを言えないけれど


「...私をこうして生かしているのは、春のことがあるからですか?」

「もともとあなたのことは恨んでませんよ 殺す理由もありません」

下手に拘束はしない こうして自由にさせてるのがその証拠 もっともこの町から外には出られないのだから、脅迫してるも同然だろうが


「ですが、この町はずっと苦境の中にいます 私を生かすということはすなわち...」


「あなたも死にたいわけではないでしょう あなたがケガをした人の治療をしてるのもしってます 決して働いていないわけではない こういうと嫌な気持ちになるでしょうが、あなたは戦力としても必要な存在ですよ」


「ほんとにいやなひと そんなふうにいわれてしまうと、私は結局いまの状況を投げ出せませんから」


「嫌なら答えなくても構いませんが、春とは、どういう関係なのですか?」


「...私も、よくわかりません あの人は、最初、この神様の家の前で倒れていました 私をみて、ひどく動揺していたように見えた それからも彼はどこか虚ろで錯乱もしてたんです ここは、私の世界じゃないって

その後は私も心配になってしばらくお世話をしていました

 

ただ守られていたのは、私のほうですね 暴徒がでると、彼が私を助けてくれました 

でも、ある時期から一人でうろうろ町を徘徊するようになったのです なにかを試しているようにも見えました 


そしてある日、彼は神の遺骸というものを持ってきました そしてそれを私に使うようにいってきたのです 迷いました ですがこの町の状況がそれを許してはくれませんでした 彼はその後もいろいろ試しているようでしたが、ある日、地下に目をつけました


いつの間にかできていた地下の存在 言われるまで気づきませんでした 迷路のような作りに我々よりも進んだ技術で作られた地下水道 彼はこちらの静止も聞かずに突き進みました 私もついていきました 


ヒジリさん達とはその時、出会いました

ヒジリさん達もこの謎の地下を調べているところだったようです

お互いに協力して地下を探索することになりました 春のもつ不思議な道具によって導かれ、大きな広場にでて、いろいろ調べました そこにあったのは我々の見知らぬ技術で作られた物の数々でした 入れない部屋もあって、しばらく、ここで張ると言い出したのです そこに、あなたがたがきました 入れなかった部屋には入るし、のっぺらぼうの人形があなたそっくりになって妙な動きをしてる 正直怖かったです こんな地下にいることもそうですが とにかくあやしかった なにか悪だくみでもしてるのかと」


なるほど 彼女は本当に春に連れられていただけの補完体、何も知らないらしい

ただ、今の話を聞くと、春の動向がやはり気になる

あいつの動きはどうにも妙だ 神の遺骸云々は別にいい だが地下を探し当てたり俺を問答無用で襲ったり だがこれ以上は何もでてこないだろう 話を切り上げる


 

「ありがとうございます 話してくれて」


「いえ あなたがたのおかげでこの町も少しだけ、よくなりました まだ予断を許さない状況ですが、よろしくお願いいたします」




「冬真か、ヒジリさんのところにいたんじゃないのか?」

この後は炊き出しに向かおうとすると、冬真がやってくる

なんでもヒジリさんが呼んでいるとか 炊き出しが終わったら向かうというと

ついてくるらしい


「あ、冬さんだ!」

そういって冬を見つけて走ってくるのは、ヒマワリだった

途中でこけてしまう

「え、えへへっ こけちゃった」

冬はかけ寄り、手を差し伸べる


恥ずかしそうにしながらも、ヒマワリは元気そうに立ち上がる

この子の笑顔を見ていると元気がもらえる そういうパワーのある子だ


ヒマワリのあとをついてくるヒメは、仏頂面でこちらをみている 大好きな姉がとられたみたいで面白くないのだ それと単に俺を嫌っている 警戒しているといったほうがいいだろう


「監視にでも、きたんですか」

ヒメはそういう


「監視という言い方はしてほしくないな 子供達だけではもめたときに、困るだろ」

「...それは、そうですが...はい」

彼女は拗ねてはいても、問題を起こすことはない 物分かりのいい子だ



子供たちにいつものように集まるようにいうと、ぞろぞろ並びだした

冬は前にいる奴から順に皿へよそっていく


「おいどけよ、俺が先だ!」

そういって割り込みをするガキ


「ちょっと!なにするのよ?」


「うっせ、ブス!どけよ!」

こういうガキも当然いる



「へへっ はやくついでくれよ 腹空いて仕方ないんだ」

ああ、こいつ、だめだなと冬真は思った 冬はこういうタイプ嫌いだから

案の定、冬はそいつの皿の上に肉無しの骨を置いた


「おい! なんだよこれ? ふざけてんのか!」


「あ?」

びくつく強気な少年 冬はあまり怒鳴らないけど、キレるとマジでおっかない


「ふざけてんのはお前だろ? お前さ、最近仕事どうした?」

お?余罪まであんのか?


子供にも仕事はある、配給所の手伝いや迷子の案内 

街中に刻まれた治安維持用の刻紋が壊れていないかの確認、ゴミ掃除

難民の中には子供も当然いる、そういう子供達と交流して少しでも緊張を和ませるためだ ナギもやってる


「は?いや、なんだよ、それ...」


「聞かれてる意味がわかんないってことはないだろ 簡単な質問だ」


「関係ねぇだろ てめぇには」


「そうだな 仕事もまともにやらない奴はでてってもらうだけだから 関係ないといえば関係ないな」


「な!ふざけんなよ おまえ、俺を脅す気か?」

とくに体が悪いわけでもないくせに三日も仕事さぼって、そのくせあそびほうけている分際で いい度胸だな


「脅す? 言葉は正しく使えよガキ この町には余裕がない みんな必死に働いてようやく飯にありつけてる 働かざる者、食うべからず 知らなくてもいいけど、損するのはお前だよ」

俺はお前が無知だろうと、相手にしない


「俺は、子供だぞ!」

恥ずかしげもなく、こういうことを言う こんな状況じゃ仕方ないともいえるが、仕方ないで腹は満たせないし、飯が降ってくるわけでもない


「みりゃわかるよ だから?」

この町の状況でそれが特別な意味を持つと思っているのだろうか? ふざけた奴はお前のほうだ


「な! は、恥ずかしくねぇのかよあんた 子供脅して」


「子供だから知識がないのは仕方ない だが、子供でもわかることをわからないフリすれば、子供だから見逃してくれるとタカを括るオツムが弱い奴相手になぜ俺が恥を覚えてやらにゃならないのか、理解に苦しむよ 大人よりも子供を、ってのは理解はできる だが、周りを見ろ 子供だらけだ そしてそれは、街の外もな」

クソガキは顔を青くする


「荷物をまとめろ それが嫌なら、三日分、働くことだ それができたら、飯は用意してやる これは忠告じゃない 警告だ」


次はない 強制退去は働かない者の義務だ この町に入るときに刻まれる刻紋にはそこら辺の制約が入ってる 拒否はできない 犯罪行為も同じことだ そう忠告しても問題は起こるけど



「ふざけんな、ふざけんな! この町の支配者気取りかよクソが あんたはいいよな、好き放題できて、みんな苦しい中、どうせ、いいもんたらふく食ってんだろ!」


「それは誤解だね 

この炊き出しは俺の配給分から出しているし、今でこそ、町の中心みたいに言われているが、この町はアニマの町だ 俺も居候の身だ だから一緒に住まわせてもらえるように努力をしている アニマが俺のやり方を気に入らない、出ていけと言えば、当然俺は出ていくよ」



俺と君は相性が悪かった ご縁がありませんでした どこかに君のことを全力で肯定してくれる場所を見つけてください さようなら 別に俺に必要とされないことが世界の全てではない どこかにいるさ、どんな君でも受け入れてくれるそんな誰かが、たぶん、きっと、メイビー


その言葉に、子供はうろたえる


俺はアニマ達と生活を共にしたいと思ってる 彼らとなら自分以外の大切なもの、ってのが見つかるかもしれない

だがそれはアニマ達の意思を捻じ曲げて俺の言うことを無理矢理聞かせようってものじゃない 彼らが俺を拒絶するなら、それは仕方のないことだ ご縁がありませんでした おしまい それだけの話だ また別の可能性を探すだけ 俺にとってともに生活するってのは、寄りかかるための寄生先を見つけることじゃない



そもそも俺がやっている炊き出しは、通常の配給とは別だ 俺がため込んだ分の飯を配っているにすぎない 気に食わんガキに、懐を痛めてまで配ってやる義理はない

こんなことをやっても焼け石に水だが、やらないよりはマシという程度だ

ナツとナギには充分食わせている ナツもナギもなんやかんやいって節制しようとするからな ちゃんと食べさせないといけない


「俺が、死んでもいいってのか?」


「ああ、死ねよ」

冬は怒りもなく、蔑むでもなく、無下に切って捨てた

俺は働かないし、努力もしないけど、権利だけは欲しいですって恥ずかしげもなくいう奴には俺も恥ずかしげなく、正直な感想を言うことにしてる さようなら


「!」

子供は引くつく顔と今にも冬にかみつきそうな思いで、すげすげと去っていく


「冬さん、ごめんなさい 私たちがふがいないせいで...」

いつも言い聞かせているらしいが、それでもいうことを聞いてくれないものはでるらしい


「別に君らのせいではないでしょ どうしたってああいうのはでてくる 仕方のないことさ 適宜対処していくしかない」


炊き出しも終わり 今度は本拠に向かい、ヒジリさんと話すとしよう




冬真はこの時のやりとりで、ようやく冬という人間に抱く違和感の正体に気づいた

完璧な人間などいない それは冬も同じ

すぐ暴力振るうし、暴言も吐く 足癖も悪い

でもそういう部分じゃない もっと根本的なところに問題を抱えてる 

そんな気がしてた 冬はやる気はあるのに、執着心が見えてこないのだ


冬は嘘は言っていない 本気で言ってる だけど、どこか空虚だ

本気で努力はしているように見えるのに、別にうまくいかなくてもいいや、くらいにしか思ってないように見える その空虚さが怖かった

情熱はあるのに、執着がない そのちぐはぐさがずっとアンバランスに感じてた


その根底にあるものはきっと、どうせうまくいきっこない というあきらめにも似た諦観だ


何度、落胆してきたのだろう 何度、裏切られてきたのだろう


冬の抱える心の闇

僕にはその気持ちがとても刺さった

ナギのことがあるから

冬は一人で考えて、一人で突き進むタイプだ そんな人間が自分と同じ気持ちを抱くこともある

きっと僕がいま、冬の近くにいるのは、意味があることなんだと思う

僕は運命論者ではないけれど、僕がいなくちゃならない理由があるのだ


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