第11話 灰街終焉の夜
空が黒くなったのは、夕暮れより少し早かった。雲ではない。灰街の上に薄い膜のようなものが張り、街灯が灯る前に、昼が引き裂かれて夜が流れ込んだ。耳鳴りのような低音が地面の下で続き、電光掲示板の文字が逆流し、車のクラクションが遠くで断ち切られる。ビルの壁面広告が一斉にノイズを吐き、画面の隙間から黒い糸が垂れた。垂れた糸は地面に触れると、細い動物のように走り、側溝や階段やガラスの亀裂へ潜っていく。
残留魔が溢れている。裂け目は街中に散っている。炉心が崩れたことで、今まで目に見えない場所で抑えられていた流れが街の皮膚に浮き出た。協会の鎖は足りず、黒燿の残党は秩序を切るふりをして混乱を削っていた。切り口は綺麗だが、切る速度が速すぎる。整えられない街は、裂け目のすきまで擦り切れる。
「上へ」
御影純は朱音の背を庇いつつ、協会本館の屋上へ駆け上がった。四方の防護結界が薄く色を変える。白が青の気配を帯び、一部は黄に濁る。結界は祈りで保つ設計に切り替えられており、中央の礼拝堂から細い線が伸び、屋上の四隅へ接続されていた。司書が短い言葉を重ねるたび、線は太くなったり細くなったりする。街のざわめきが、波のように押しては引く。
朱音は風を受け、両手で胸元の紙符を握った。炉心で焼けた一枚はもうない。残る二枚は司書が屋上へ持ち上げてきた祈りの縁と連動して、彼女の体温を守るよう設計し直されている。彼女は一歩前に出て、空の黒に視線を投げた。
「彼の炎は、まだ消えていない」
言葉は叫びではない。誰かに聞かせる声でもない。けれど、風がそれを街の縁にまで運ぶ。祈りの線がそれを写し、屋上の四隅に置かれた薄い石板が微かに鳴った。
「朱音。危険だ、下がれ」
純が制止の声を上げたとき、街の西側でガラスが割れる音が一斉に響いた。ビルの谷間から浮かび上がるように、黒燿の残党の旗が三つ、四つ。旗といっても布ではない。濃い影の柱だ。影は空の膜と呼吸を合わせ、結界の隙を測るようにふらつく。足元では協会の術者たちが鎖を投げ、影の根を絡め取ろうとする。黒燿の若い連中は、倒れた仲間の傷に古い符を貼り、また走る。誰も止まらない。止まる時間がない。
「中央市場の屋上、落ちます!」
狩谷の怒鳴り声が無線で飛んだ。映像は割れているが、屋根が斜めに崩れていくのが音でわかる。瓦礫の隙間から噴き上がる黒い霧は、昨日、最深部で見た冷たい流れと似ていた。違うのは、街の空気がそれに鈍く慣れ始めていることだ。慣れは最悪だ。異常を普通にする。
「結界の配分を換える。北西へ二割」
司書の短い声に合わせ、屋上の石板が一斉に光る。白い糸が絡み合い、屋上の床に新しい円が描かれた。朱音は紙符をその円に合わせ、息を整える。喉の奥が乾き、胸の奥の灯りが微かに痛む。晴はどこにいるのか。灰色の光の中に沈み、まだ名付けられない場所で火を握っているのか。彼女は待つ人間のやり方で呼吸の数を数え、数を忘れ、もう一度数えた。
空の黒が、波のように襞を作った。襞から垂れた糸が、屋上の手すりに触れる。純が杖を振るい、糸だけを斬って落とす。落ちた糸から小さな黒い舌が四方へ散り、風の縁で消えるように司書が術を重ねる。司書は眠たげな目をさらに細め、指を一本、朱音の肩へ向けた。
「掲げなさい」
朱音は頷いた。握っていた紙符を解き、胸の前で両手を広げる。紙符は風にたなびかず、柔らかい板のように浮かんで位置を決めた。その中心に、薄い明るさが生まれる。白ではない。黒でもない。夜目に、光と認められるぎりぎりの縁の色。透明と呼ぶしかない明るさ。光子の粒が形を持たず、それでもそこにあるとわかるような、妙な確かさ。
「晴の……?」
純の呟きに答えるように、透明の明るさがわずかに震え、朱音の指先へ真っ直ぐ繋がった。彼女の瞳の奥に、その色が映る。映った色は、涙で滲まない。はっきりした輪郭がないから、滲みようがない。朱音は口角を上げ、短く息を吸う。
「来る」
その直後、市場側で大きく空が歪んだ。歪みは穴ではない。布がゆっくり引き伸ばされるような、弾力のある変化。黒い膜の下に、別の層がある。最深部で噴き上がった灰色の光の、薄い一片が上昇してくる。風が逃げ場を失い、街の音が一瞬だけ止まった。
そこに——晴がいた。
炎ではなかった。人影でも、影絵でもない。透明な何かが歩いてくる。歩いているとしか言いようのない動きで、空の膜の下、屋上と屋上の間を渡る。彼の輪郭を見ようとすると、目は空の星を数えるときのような疲れ方をする。それでも朱音にはわかった。歩き方でわかる。肩の動きでわかる。風の切り方でわかる。
純もまた、目を細めた。「晴」
透明な何かが屋上の縁に立ち、ほんの少しだけ人の形を取った。髪の位置、顎の角度、右目の辺りに残る冷たい空洞。彼の存在は光ではないのに、周囲の光を揃える力を持っていた。ばらばらに跳ねていた街の灯りが、一瞬だけ同じ明るさで、同じ方向を向く。彼は手を上げた。朱音に。司書に。純に。街に。
「……おかえり」
朱音は言い、あの癖のある笑い方をしそうになって、やめた。ここは喜ぶ場面ではない。彼の姿は戻ったが、戻っていないものがある。この姿のまま長くいさせたくはない。戻るべき場所に戻すのが、彼女の役割だ。
「晴」
純が短く呼ぶ。「燃やすのではなく、流れを戻せ」
透明な晴は頷き——その頷きが風の層を一つ戻した。彼は足元に広がる街を見下ろし、右手を下へ垂らした。指先は色を持たない。だが、触れた先の黒い糸が、触れられたことを思い出すように静かになる。残留魔の舌は熱に弱い。けれど、今の街に必要なのは、熱ではない。透明な炎は、温度を変えずに結び目を溶かす。白が浄め、黒が断ち、透明は「返す」。返すとは、元の位置を思い出させることだ。人の嘘と同じで、魔の嘘は「思い出し」に弱い。
屋上の四隅から、祈りの線が晴の手へ伸びる。線は彼の中に吸われるのではなく、手前でほどけて、細い霧のように街へ降った。降りた霧は信号機の赤に触れ、赤は赤のまま、止まったまま息を吸い直す。電光掲示板の文字は、ノイズをやめてニュースの時刻を出し直す。窓に映った黒い顔は顔であることを忘れ、ただの夜景へ戻る。戻れるものから戻る。戻れないものは、そこで薄くなる。
「来るぞ」
純の視線の先、黒燿の残党の旗が揺れた。彼らは透明の炎を「灯り」と判断し、切り札を投じる。旗の足元で見張っていた幹部格が、地面に刻印を打つ。組織のために積み上げた黒い層を、街の「恥」と「怒り」の溜まりへ接続する術式だ。最深部の冷たさと違い、人の生活の温度で醸成された汚れは、透明より重い。重みで押し潰そうとしてくる。
「朱音」
司書が短く言う。「灯りを“掲げる”のではなく、“渡しなさい”。あなたが光源ではないと、街に知らせるの」
「はい」
朱音は指を開いた。紙符の光は強くならない。弱くもならない。ただ、方向を変えた。屋上の縁から街へ向けて、灯りの責任を放つ。彼女が持たず、街が持つ。透明はそれを待っていたように、流れを変える。屋上から下へではなく、街の中から外へ。透明の炎は、既に街のあちこちに潜んでいた「戻りたい」という微かな意志を拾い上げ、結び付けていく。
純が前へ出た。刃は振るわない。刃はこの夜に似合わないと知っている。代わりに、彼は結界の調律を取る。四隅の石板を順に叩き、屋上の円に足を軽く置き、司書の声に合わせて手の形を変える。祈りは手順でもある。手順の美しさは、敵にも味方にも伝わる。黒燿の残党の一部が、影の柱を保つことより、自分の呼吸を整える方に心を奪われたのを、純は見逃さない。彼は視線で、彼らを街へ戻す。
「戻っていい。切るべきは、別の糸だ」
黒燿の若者の一人が旗を下ろした。仲間が怒鳴る。彼は振り返らない。戻った先で、誰かの手を取る。街にいる、名もない誰かの手。協会の鎖がそこへ伸び、結び直す。鎖は絡め取るためだけでなく、繋ぎ直すためにもある。
透明の炎が広がるにつれ、空の黒い膜は薄くなる。薄くなるが、消えない。消えない層がある。消えない理由がある。最深部の骸庫にあった「外」の冷たさの名残。それは街の外側に張られた目に見えない皮だ。皮は今、敏感すぎる。風に触れるだけで痛む。透明の炎は皮を焼かない。触るだけで痛みを忘れさせることもできない。だから、皮の下で、別の方向から支える。
「晴。ここ」
朱音が胸に手を当て、足元の円から一歩出た。祈りの線が彼女の足跡を縫い、足元の石が少し温かくなる。彼女は一度だけ空の膜を見上げ、目を閉じた。
「戻る道は、ここにある」
彼女がその言葉を置いた瞬間、透明の晴は微かに輪郭を濃くした。濃くなったのは色ではない。存在の重さだ。彼は屋上の縁から歩み出て、空中の見えない橋を渡るように街の中心へ向かった。彼の通ったあと、残留魔は消えない。消えないが、静かになる。静かに、見ている。見たいものを忘れて、視線の置き場所を探す。その隙を、祈りの線が埋める。協会の術者たちは鎖を張るのをやめ、線を結ぶ側へ回る。黒燿の残党の一部は旗を捨て、肩で息をして座り込む。座り込むことが許される空気になる。
そこへ——黒燿の幹部が二人、屋上に現れた。昨日、炉心で笑った男と同じ刺青を胸に持つ者。彼は透明の晴を見上げ、口の端を上げた。
「戻ってきたか。灯火」
「戻るために沈んだ」
「沈んだ先で、何を見た」
「名前のない光」
幹部は短く笑い、足元の印を踏み鳴らした。屋上の端から黒い糸が突き上がる。糸は透明に絡みつかない。絡みつけない。彼はそれを自覚すると、次に朱音へ向けて糸を投げた。紙符の光がそれを受け止めるが、重さが違う。重さがかかれば、祈りの線はきしむ。純が一歩で間合いを詰め、刃の代わりに掌で糸の根を押さえ込んだ。
「終わりにしよう」
幹部は肩をすくめ、顔の刺青を軽く撫でた。「君たちの終わりと、街の終わりは一致するのか」
「一致させない」
純が押さえた糸は、透明に触れず、白にも触れず、朱音にも触れず、地面へ戻された。幹部は後ろへ跳び、屋上から飛び降りる。風がその体を拾い、影の柱が残った。柱はもう、街の大勢を変えない。柱の下で、誰かが泣き、誰かが笑い、誰かが電話をかけ、誰かがうずくまる。街が街にもどる速度は、人の速度だ。透明の炎は、それを急がせない。ただ邪魔を取り除く。
空の膜が、音もなく剝がれた。剝がれたというより、置き換わった。黒の層が薄い灰へ、灰が淡い青へ。星は見えない。街灯の光が、地上の代わりに空を照らす。透明が、空へ昇っていくのが見えた。晴の輪郭はさらに薄く、軽くなり、風の層に溶けようとしている。
朱音は一歩、前に出た。屋上と空の境目に、足先をかける。
「まだ、帰ってきてない」
透明の晴が、首を傾けたように見えた。彼女にははっきり見えた。彼は笑っていない。泣いてもいない。彼の表情は、透明のままだ。けれど、彼の返事は確かだった。
「帰る」
「約束」
「約束」
その言葉が交わされた瞬間、司書が屋上の円の中心を杖で一度叩いた。礼拝堂から伸びた線が屋上を通って街に降り、街の至るところで小さな輪に変わる。輪は目に見えないのに、人は足で踏んでわかる。踏むと、体の中心に短い音が鳴る。家のドアを開けたときの、鍵の乾いた音に似ている。
「終わりではない。——帰還の合図」
司書の声は、風に負けない。祈りは、音を持つ。音は、道になる。
透明の晴はその道を見た。道は無数にある。無数の帰り道が、街のいたるところに、目に見えない輪として光っている。彼は手を下ろし、空に馴染むのをやめ、街へ降りようとした。降りる場所を選ばない。選べない。選ばせることが、秩序の最初の暴力なのだと、彼は記録室で知った。だから——輪に、任せる。
最初の輪は、屋上の縁にあった。朱音の足元。彼女は一歩、後ろへ下がった。彼女の輪を、彼に譲る。輪は軽く音を立て、透明の晴を静かに受けた。受け方は簡単だ。彼が人の形を取り戻すのではない。街の側が、彼の不在の形を埋める。透明は、一瞬だけ、服の重みと、皮膚の温度と、髪の湿り気を纏った。音が戻る。心臓の打つ音が、耳の奥ではなく、胸の内側で鳴る。
「晴」
朱音は駆け寄らない。彼が自分の足で、輪から輪へ進むまで待つ。彼は一歩。膝が軽く折れ、息が詰まり、次の瞬間、深く空気を吸う。透明が肺に入らない。空気が入る。痛みはない。空腹に似た感覚だけがある。右目の闇は、静かだ。骨の中の火は、もう囁かない。囁きは祈りの音にやさしく混ざり、騒がない。戻ってくるために、透明であることをいったんやめる。やめられた。だから、彼は、戻った。
「ただいま」
声は掠れていない。震えてもいない。小さい声だが、屋上にいる全員が聞こえた。
「おかえり」
朱音は笑ってみせた。怒るのはあとでいい。怒る準備は、とっくに終わっている。今は笑う。笑う準備も終わっている。彼女は晴の手を取らない。代わりに、紙符の残りを彼の胸にそっと押し付ける。紙は燃えない。燃えずに、薄く透明になる。透明は、もう怖くない。
街全体が、光に包まれた。白でも黒でもない光。呼べば透明、あるいは、名前の決まらない新しい色。色は、誰を傷つけることもなく、誰かを抱きしめることもなく、ただそこに広がった。残留魔は静かに消える。消えるといっても、どこかへ連れ去られるわけではない。自分で元の場所に戻っていく。戻れないものは、街の隙間で粉になって風に乗る。風は優しく吹き、散らす。
黒燿の旗は、いつの間にか地面に横たわっていた。拾う者はいない。幹部の一人は刺青の上からシャツを閉じ、群衆に紛れて消えた。協会の鎖はほどかれ、結び直しに回った。司書は杖を肩に担ぎ、眠たげな目で街の輪郭を見た。
「終わった?」
朱音が問うと、司書は首を横に振った。
「終わらない。終わらないから、続けられる。——でも、今夜の戦は、ここまで」
御影純は背を伸ばし、屋上の縁から街を見下ろした。ところどころで小さな拍手が起きる。拍手は誰に向けたものでもない。拍手の方向が定まらないのは、街が自分へ拍手しているからだ。生き残ったことへの、小さな祝福。やり過ごしたことへの、ささやかな承認。
晴はその音を聞き、胸の内の火に手を当てた。火は、温度を持たなくなっていた。透明に近い。近いが、消えてはいない。彼は純に顔を向ける。
「やらなければならないことは、まだ残ってる」
「ああ。裏口だ。封印の外縁の線だ」
「それに、揺籃の紐。台本。——もう二度と、誰にも“選ばせるふり”をさせない」
純は目を細め、少し笑った。「器にされた男の、いい顔だ」
「器を、自分の手に持ち直した」
「なら、あとは使い方だ」
朱音が小さく咳払いした。「私にも、怒る時間が必要」
晴は身構えた。純と司書が同時に一歩、横へ避ける。朱音は腕を組み、眉を上げた。
「突き飛ばしたね。あの時」
「突き飛ばしました」
「痛かったよ。怖かった。——でも、ありがとう」
怒りは短く、感謝は長く、両方が同じ重さで彼の胸に載った。晴は素直に頭を下げる。
「ごめん」
「許す。条件つき」
「条件は」
「帰ってくること。私が怒りたい時に、ここにいること。——それが、私の祈りの形式」
晴は頷いた。「約束」
空は完全に夜に戻り、街の灯りはいつもの明るさに落ち着いた。透明の光の名残は、人の目ではほとんど見えない。けれど、歩いているとき、曲がり角でふと迷わないで済むとしたら、それは多分、今夜の残響だ。信号が変わる直前に足が自然と止まれば、それも残響だ。誰かが誰かに「おかえり」と言いやすくなっていれば、それは——透明な燈火の仕事だ。
「戻ろう」
司書が杖を肩に担ぎ直す。「礼拝堂は、あたたかくしてある。祈りの縁の調整をする間、君たちは少し、ただの人に戻りなさい」
屋上の扉が開く。階段の影が、人の背にちょうどいい深さで落ちる。晴は一歩、足を踏み出した。右目の闇は相変わらずだが、怖くない。闇は闇として、そこにある。そこにあるものを、無理に白くしない。白も、黒も、透明も、使い方だけが問題だ。
階段を降りる途中、晴は振り返った。灰街の夜は、何もなかったような顔をしている。何もなかったわけではない。何もなかったふりをしているだけでもない。今日の夜は、今日の夜として、街の底に積もる。明日の朝、新聞の隅に小さな記事が出るだろう。電車は遅れ、学校は平常運転を宣言し、パン屋の棚にはいつもより少し多くのあんパンが並ぶだろう。
彼は胸の前で指を組み、深く息をした。祈りではない。切り替えの手順。透明だった炎を、骨の中の所定の場所に収める。戻り道の輪はまだ街じゅうに浮かんでいて、誰でも踏める。戻れない人のために、明日も輪を増やせばいい。戻れる人のために、輪を減らしてもいい。選ぶのは、彼一人ではない。
階段の踊り場で、朱音が並んだ。彼女の手は冷たくない。紙符は透明のまま消え、代わりに小さな白い紐が彼女の手首に巻かれている。司書がさりげなく結んだ、新しい縁だ。縁は軽く、ほどきやすく、結び直しやすい。縛るためではなく、帰る場所を示すための紐。
「晴」
「うん」
「お腹、すいた」
「同じことを、今、考えてた」
笑いが階段の壁に柔らかくぶつかり、静かに落ちた。御影純は先に降りながら、背中で笑った。彼もまた、人に戻る。戻る場がある。戻る言葉がある。戻るまでの手順を、彼らは手に入れた。
灰街の終焉の夜は、そうして静かに過ぎた。
終焉は、終わりではない。
街は再生を始め、燈火は名前のない色を手に入れた。
まだ行くべき場所がある。
封印の外縁。
揺籃の紐。
そして——彼ら自身の物語の、次の頁。




