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第六話 敗北して


「───────────ァ」

 酷い、夢を見た。醜悪で、どうしようもない。ハラワタが煮え繰り返りそうだった。

 それは、あの日の思い出。

「……」

 竜巻がうねる。それは、街を飲み込む。自分をも、父親まで全て。殺戮の渦。もはや災害の一種であったそれは、ある一人の異獣混人(クレー・ガント)によって引き起こされた。

「許したくない。許せない。アレは……」

 湖の帝王(サラマンダー)

 帝王を冠する男は、竜巻を引き起こし、その他を鏖殺。父と自分……それに、妹だけを残した。

「何故……! 父を狙った!?」

 竜巻では無く、己の手で父を殺した。竜巻によって発生させられた雲が晴れ、暁の光が差し込む。その姿、正しく天使。実際は、悪魔のそれだが。

「アアアアアアアアアアアアアアア!!」



 目覚めた時、空には夕焼け雲が蔓延っていた。一体、何時間経ったのだろう。

 ボロボロの身体をムクリと起こす。何だ、思いの外動くな。グーパーグーパー。トントンと地面を小突く。

(痛くない……?)

 覚えている限りは内臓が砕かれたはず。骨も折られた。肉も絶たれた。なのに、復活した自分の身体には、傷が一つもついていない。

 その代わりとしてか、身体には茶アザのような無数の火傷痕があった。触れても痛みは無い。火傷特有の膨らんだような感覚も無かった。

(……誰が?)

 回復力については自信があった。昔から、直ぐ怪我は治っていた。それも、尋常では無いスピードだ。だが、その彼ですら違和感を感じていた。

(火傷痕?)

 斬利の記憶は、陰陽の極(ハ・マ)に蹂躙された所までだ。それ以降の記憶は無い。だから、何故撤退したのか、何故自分は生きているのか、判らなかった。

 少なくとも、自分の知る陰陽の極(ハ・マ)はそんな事しない。

 確実に仕留める。それが、彼のモットーのはずだ。執念深さだけなら、彼の知っている限り一番だ。

「……行かないと」

 新幹線を遠くから眺める。通報が入ったのだろう。警察やら消防隊やらが現場で忙しそうに働いていた。

(っても、どーしよ)

 フォッサマグナまで新幹線一本のはずだったのに。

「よう斬利! 半年ぶりだな」

 聞こえた声は足元から。下を向くと、地面がボコ、と開き、そこから少年が現れた。

「ユメキリ!? 何でオマエがここに?」

 ユメキリ。『白の土竜(クリード・ドリュウ)』の狂乱名(バルサ)を持つ異獣混人(クレー・ガント)だ。白い無骨なヘルメットに、手にはクワのような鋭い爪が生えている。

「ハートランドに言われてな。『どーせトラブルから手伝ってこい』って。まさか、予感が的中するとはなぁ」

「感心すんな。……まぁ、ありがとう」

 彼の掘った穴に潜り込む。穴は人1人が余裕で入れるほどの大きさであり、直列に巨大な道が進んでいた。

その中でも、目の引くのは一台のバイク。

 ユメキリの愛車だった。

「フォッサマグナまで掘ってある。ああ、終わったらハートランドに渡しておいてくれ」

 エンジンの爆音がトンネル内に響く。バイクに跨ぎ、ハンドルを握った。

「ああ。またな、ユメキリ」

「おう。また会おう、斬利」

 轟くエンジンの振動と共に、斬利を乗せたバイクは一直線で目的地へと加速し始めた。

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