プロローグ
一つ。
コレは、私の戦いである。
一つ。
コレは、救済の誓いである。
一つ。
コレは、私の復讐である。
ガン!
荒野に響いた甲高い金属音。
その音源には、茶色のローブを纏い、3メートルはあろう巨大な剣を叩きつけている者。
対するもう片方は、ニンゲンでは無い。
人の形を保ってはいるが、ライオンの様な巨大な牙に、像が如き巨大な鼻をブン! と振り回している。
それに見合う巨体は、3メートルの大剣が小さく見えるほど。
肩まで伸ばした緋色の髪が、勢いのまま靡き、殺意の籠った隻眼が、男を捉えていた。
「流石だな。やはり、『喰らう月』は筋が良い!」
あくまでも冷静に、されど興奮気味に評価を叫ぶ。純粋な賞賛を、異形の怪物『喰らう月』は聞いていない。
その溢れんばかりの殺意が、彼の言葉を削ぎ落としていたのだ。
「今宵は月食。キサマの力も最大だ。よって、殺すに値するぜ」
「グォォォォォォォ!!」
狂気と正気がぶつかる。
神速の一撃を、神業と呼べる剣術でいなす。一撃必殺。まともに喰らえば即死だろう。
『喰らう月』が攻撃モーションに入った瞬間、既に攻撃は命中している。二重必殺と呼ばれる、これまた神業。
と、
「いくぜ!」
神業と神業の殺し合いの最中、男が飛ぶ。横一閃の鼻を足場に、空高く飛び上がったのだ。剣を強く握る。
瞬間、獣が飛んだ。
「サセルカ!!!」
地面を思いっきり蹴り、男に追い付かんと迫る。獣の細い腕は高度を増す度、段々大きく、その爪は鋭く変化していく。
人差し指の爪だけで、男の土手っ腹に巨大な風穴を開けられるだろう。
だが、
「へ、遅いんだよ! 喰らって砕けろ! 『三日月の太刀』!」
斬撃。
三日月を描いたソレは、
「グォォォォォォォアアアアアアアァァァァァァァァァ──────!!」
獣を一刀両断し、勢いのまま地面まで大きな亀裂を作り上げた。
「俺の勝ち!! ふぅ……」
ゆっくりと、地面に着地する男。
大剣を地面に突き刺して、落下の勢いを殺した。「っと、いけね」そう言って、獣に駆け寄る。獣は絶命していた。即死だろう。
胴体を真っ二つに斬られ、思いっきり地面に叩きつけられている。
コレで死んで無いと言うのはムリだ。
「良かった……ちゃんとくたばってくれて」
ローブを脱いだ男は、少年だった。
死体を確認しつつ、月を見上げる。
空に浮かぶは満天の空。そして、真月。
「後、何体。俺は殺せば良いんだ?」