#05 覚悟
セツナさんが「セックス、セックス」と連呼した喫茶店を出て二人で駅に向かうと、カナちゃんと相手の男子の姿はもう無かった。
僕は内心ホッとしつつも、鼻歌歌いながら僕と腕を組んでるセツナさんに頭が痛い思いだった。
電車に乗っても腕を組んだままだし、地元の駅で降りてからも組んだままだった。
改札出て「それでは、さようなら」と別れようとすると、腕を離してくれずに「何言ってるのよ、家まで彼女を送っていきなさい」と再び命令が下った。
「まぁ、確かに夜道を一人は危ないしな」と自分に言い訳をして、腕組んだままセツナさんの家まで送って行った。
家に着いて今度こそ「それでは、さようなら」と別れようとすると、「キス、忘れてるわよ」と。
忘れてませんよ
ワザと逃げるつもりだったんですよ
と内心でツッコミを入れたけど、セツナさんは僕の腕を力一杯掴みながら、目を閉じてキス顔のまま待っている。
「はぁ」と溜息を漏らしてから、セツナさんのおデコにキスした。
「おデコじゃなくて、クチでしょ! マウス・トゥー・マウス!」
やっぱりダメか・・・
もうヤケクソになって唇にキスして、口の中に舌を捻じ込んでグチョグチョのディープなキスした。
セツナさんは一瞬目を見開いてビックリしてたけど、すぐに目を閉じて舌を絡ませてきた。
数十秒ほどグチョグチョとキスしてから唇を離して、「今度こそ帰ります。 今日は色々とありがとうございました。おやすみなさい」と言って、背を向けて帰った。
セツナさんは蕩けた顔のまま「うん、おやすみ・・・」と一応反応はあった。
◇
家の近くまで来てカナちゃんの家の前を通ると、カナちゃんの部屋に明かりが点いていた。
立ち止まって部屋の明かりを見つめていると、さっき見たクラスの男子と楽しそうに笑うカナちゃんの笑顔が思い浮かんできた。
嫉妬と悔しさが溢れそうで、この場で叫びたくなる。
あの光景を見て僕がどんなに辛かったか、大声あげてカナちゃんに分からせてやりたくなる。
でも叫ばないし、大声もあげない。
今ここで僕が叫んでも、多分カナちゃんは部屋から出てこないだろうし、窓からも覗こうとはしないだろう。
きっと自分が更に惨めになるだけだ。
今日何度目かの溜息を吐いて、再び歩き出して家に帰った。
家に帰り晩御飯を食べてお風呂に入る。
シャワーを浴びてたら、覚悟が決まった。
お風呂から出ると、スマホにセツナさんからメッセージが着ていた。
『ムギくんのキス、見直したわよ。 明日からもよろしくね』
『覚悟決めました。 セツナさんの彼氏にしてくれて、ありがとうございます』と返信した。
次話は本日17時公開