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#24 卒業





 2年の秋ごろ、生徒会の事件から丁度1年経った頃、学校から帰ってくると、家の近くで女性に声をかけられた。



 お世辞にも身嗜みは褒められた物では無く、上下グレーのスウェットにサンダル、髪はボサボサに伸ばし放題に見えた。

 顔も、女性の顔をこういうのもなんだけど、吹き出物が酷く、顔だけじゃなく体全体太った、一言で言うと不健康な印象の人だった。


「あの、ムギくん・・・・」


 声を掛けられ、最初に思ったのは『この人臭い。 女性なのに酸っぱい体臭がキツイな』だった。


 臭いをガマンしながら「どなたでしょうか?」と返事をすると


「わたし、セツナ! ムギくんに話聞いて貰いたくて!」



 びっくりして、思わずマジマジと顔を見てしまった。


 言われてみると、確かにセツナさんの面影があった。



 あまりの変わり様に「うわぁ・・・」と思わず声が出た。


「あの!ムギくん聞いて!私の話を聞いてほしいの!」


 そう叫ぶように言うと、その場で土下座を始めた。


 その隙に「いや、結構です。聞きたくありません」と言って、走って逃げた。






 セツナさんは次の日も同じ場所で待っていた。

 その次の日も居た。

 毎日居た。


 だから僕も毎日逃げた。


 10日続いたので、母親と一緒に警察へ行き、ストーカーとして相談した。

 次の日からは現れなくなり、ホッとした。



 ハナちゃんには、警察へ相談した後に念のため報告して、一応ハナちゃんの方でも何かあるかもしれないから注意するように言っておいた。



 2年になって以降の事件と言えば、これくらいだった。


 あと1度だけ、2年の時にクラスメイトや担任から生徒会長選挙の推薦を受けそうになり、「止めてくれ!」と叫ぶように拒否したことがあった。

 担任は今年からの赴任で去年の事件の詳細を知らなかったらしく、僕から教頭先生にチクって厳重注意してもらい、それ以降大人しくなった。



 後はなんとか穏やかに過ごすことが出来、僕もハナちゃんも無事に卒業することが出来た。


 卒業後の進路に関しては、僕が県外の大学への志望を決めると、ハナちゃんも「私もついてく」と言って同じ大学への進学を決めた。

 二人ともこの地元を離れたかったけど、まだ一人になるのは不安だったので、これ以外の進路はない様に思えた。


 僕の親にもハナちゃんの親にも、1年の時の生徒会事件のことは伝わって居たし、それ以降僕たち二人が寄り添い合って過ごしてきたことを知っていたので、二人で同じ大学へ進学することも、同じアパート(部屋は別)に住むことにしたのも、親同士協力的だった。


 母親からの情報で、カナちゃんは地元の短大に行くそうだ。

 どうでもよかったので「へぇ~」とだけ返事して流した。





 大学に進学してからは、楽しかったと思う。

 環境が変わったお陰か、僕もハナちゃんも笑うことが増えた。


 でもお互い、誰とも付き合うことは無かった。

 僕たち二人の間も、たまにふざけて腕組んだりボディタッチすることはあったけど、性的な行為は一切なかった。


 ハナちゃんは、大学ではとても人気者で、特に男子学生によく声を掛けられていたけど、いつも「う~ん、興味ないかなー?」とか言って、流してた。


 僕の方は、ぼちぼちだったけど、「また今度機会あれば」と毎回同じセリフで断っていた。







次話は明日7時公開



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