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#14 挨拶




 翌朝、昨日と同じく30分ほど早く家を出て、セツナさんと待ち合わせてから一緒に登校した。


 来栖先輩から厳命されているとは言え、生徒会の先輩後輩としてイチャつかず節度を持っていれば問題ないし、何よりカナちゃんと鉢合わせになった場合、なんらかのトラブルが起きないとも限らないとのことで、セツナさんが一緒に登校することを譲らなかった。


 セツナさんには、

 昨日冷静になって考えて今後の方針を決めたこと。

 そのことを生徒会のみんなが居る時に報告したいこと。

 昨夜カナちゃんから、朝の登校の確認のメールが1度だけあったこと。

 を報告した。


 セツナさんからは「決めたんだね。 あとでじっくり聞かせて」と返事があった。



 学校に着くと、セツナさんから生徒会で時間潰すよう誘われたけど、今日は断った。


「大分冷静になれましたし、敢えて教室でのカナちゃんたちをじっくり観察したいと思うので、今日は教室で大人しくしています」


「うん、分かったわ。 でも、お昼は生徒会室でみんなと食べようね」


「はい、ありがとうございます」とお礼を言って別れた。



 教室に行くと、まだ早い時間なので、人は少なかった。

 自分の席に着くと、窓の外をぼーっと眺めて時間が経つのを待った。




 しばらく経つと教室は徐々に賑やかになり始めた。


 更にぼーっと外を眺めていると、不意に「おはよ」と声を掛けられた。


 ハっとして声のした方を振り向くと、カナちゃんが荷物を持ったまま立っていた。


 滅茶苦茶動揺しながら「お、おはよう、カナちゃん」と返事をすると、「ん」とだけ言って自分の席へ行き、肩にかけていたバッグを下ろした。



 唖然としたままカナちゃんを見ていると、今日も杉村がカナちゃんのところへ寄ってきて、ニヤニヤしながら話しかけていた。



 どういうことだ?

 久しぶりにカナちゃんの方から挨拶されたぞ?

 高校入ってからだと、初めてかもしれない。

 しかもクラスメイトたちが居る教室で。



 それに、教室に入ってきた時も気が付かなかった。

 いつもなら「おはよ~♪」とか言って愛想振りまきながら教室に入ってくるのに、さっきの様子だと今日はそれが無くて、僕の席まで直接来たみたいだった。


 以前だったら、カナちゃんのこんな行動に喜んだりしただろうけど、今はなんだか不気味に感じる。

 何を考えているのか、本当に分からないや。



 再び外の方を見ながら考え始めた。


 カナちゃんは、杉村に好意を持ち始めて、セフレ扱いの僕のことがどうでも良くなっている。と昨日考えた。


 今まで朝一緒に学校来てたのも、どうでもいい感じで僕と一緒に居ることに拘ってる様子は全然なかった。

 実際、朝一緒に居ても全然会話なかったし、ずっとスマホいじってるし。


 それに中学までは僕の部屋にちょくちょく遊びに来てたのに、最近はセックスするときだけしか来なくなってた。

 だから、僕は都合の良いセフレで、僕にはもう興味が無いのだと考えたんだ。


 だったらさっきのアレはなんだったんだろう。


 僕が距離を取り始めたから、焦りだしてる?

 都合の良いセフレを手放したくない?



 いずれにしても、カナちゃんとは二人で話しをしなくてはいけないか。

 それに、やっぱり別れるべきだろう。

 例えば、今更『杉村のことはなんとも思っていない』と言われても、これまで受けた僕のダメージはそう簡単に綺麗さっぱり無かったことには出来そうにない。 





次話は明日7時公開



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