#13 冷静
生徒会解散後、セツナさんと二人で帰り、セツナさんを家まで送っていった。
最後、家の前でセツナさんはキスをしたそうにしていたけど、来栖先輩からの厳命もあるからキスはせずに帰ってきた。
家の近くでカナちゃんの部屋をちらりと見たけど、帰っているのかどうかは解らなかった。
自宅に入り、夕食とお風呂を済ませて、自室のベッドに寝転がって今後の事を考える。
生徒会のみんなが僕の事を思って、色々と協力してくれているのはとても有難い。
でも何か引っかかるんだよな。
今日、安井君が「大げさ」だと言っていた。
そう言われた瞬間、ちょっと冷静になったんだよね。
確かに昨日や一昨日、あの現場を見てしまった時はもの凄い敗北感を感じて、悲しいやら悔しいやらで滅茶苦茶凹んだ。
でも冷静に考えると、もし、まだカナちゃんが一線を越えてない場合、結構ありふれた状況なのかもしれない。
彼女が今の彼氏よりも他の人を好きになっちゃって、その人と付き合いたいけど、でも彼氏とはまだ繋がってて、それでも好きな人と居たいから、彼氏のことほったらかしにして好きな人とイチャイチャ・・・。
そして、そのイチャイチャを見せつけることで彼氏の方から諦めてくれれば、彼女にしてみれば、面倒な別れの手順を踏む必要が無くて楽ちんだ。
そう考えて当てはめると、今の状況で二人を責めても「付き合っていない。 ただ友達として仲良くしてるだけ」と言われてしまえば、浮気の一歩手前程度で、制裁だなんだと騒ぐ程でも無いと思う。
出来ることと言えば、せいぜい「彼氏の前で非常識だ」「彼氏の気持ちも考えろ」程度の非難くらいだろう。
昨日、現場を目撃した直後に決議を執ったから、みんなショックだったりその場のノリみたいなので挙手しちゃったけど、実はまだそこまで騒ぐレベルじゃないのかも。 今後は本当に制裁を加えるレベルに発展するかもしれないけど。
だけど、杉村、アイツは何か気に食わない。
そうか。
カナちゃんが10年以上も一緒に居た僕には一度も見せたこと無い笑顔を、あんなスカしたパっと出の男には無邪気に見せるのことが、僕は悔しいんだ。
逆に言えば、10年以上も一緒に居たのに、一度も笑顔にすることが出来なかった自分が不甲斐なくて情けないんだ。
う~ん・・・杉村は気に入らないし、あんな奴にカナちゃんを盗られるのは悔しいけど、やっぱり、穏便にお別れして終わりにするのが妥当なのかな。
張り切ってる生徒会のみんなには悪いけど、静かに騒がず終わらせるか。
そもそも、カナちゃんの中では既に僕はただのセフレ扱いになってる可能性も高いし、そのセフレがいくら騒いだって、傍から見たら見苦しいだけだよな。
よし、明日生徒会のみんなに僕の結論を報告して、その後でカナちゃんと最後のお話してキチンと別れよう。
そう決心すると、気持ちが軽くなった気がした。
この日、カナちゃんから『明日も学校さきに行くの?』とメッセージが来た。
『うん』と一言だけ返信すると既読がすぐに点いたが、その後返事は無かった。
次話は本日17時公開