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#10 別れの始まり




 この日は昨日よりも早い時間だった為まだ空も明るく、セツナさんが僕を家まで送ってくれた。


 カナちゃんの家の前を通る時、もう家に帰っているのか判らなかったけどカナちゃんの部屋の方を見ない様にした。



 僕の家の前に着くとセツナさんは「今日は色々辛いだろうから、キスは止めておこう。 代わりにハグしてあげる。おいで」と言って、両手を広げた。


 僕は黙ったままセツナさんの腕にすっぽり収まってハグしてもらった。

 セツナさんはしばらくの間、僕をあやす様に背中をポンポンとしてくれてた。


 セツナさんの優しさが、じんわりと心に染みる。


「ありがとうございます。 セツナさんのお蔭で何とか耐えられそうです」


「うん、兎に角今はあの子のことは考えないようにね? それと、早いとこ決着つけよう」


「はい。 家まで送ってくれて、ありがとうございました。 気を付けて帰って下さい」


「うん、それじゃあ明日の朝、駅で会おうね。 おやすみ」


「おやすみなさい」



 帰るセツナさんが見えなくなるまでその場で見送ってから、家に入った。


 自室で着替え終えてからスマホを確認したけど、カナちゃんに送ったメッセージは既読が点いていないままだった。



 この日はこれ以上カナちゃんのことを考えたくなくて、部屋の明かりが点いているといきなり押しかけてくるんじゃないかと怖くなり、明かりを点けずに過ごし早めに寝た。




 朝起きてスマホを見ると、送ったメッセージに既読が点いていたので、これで一緒に登校しなくて済むと安心出来た。


 ただ、一度だけカナちゃんから通話の着信があった様で、でも消音モードにしてて気が付かず、何を言ってこようとしてたのか不安になったけど、どうせ何考えてるのか判らないし、ロクなことじゃないだろうと自分に言い聞かせて気にしないことにした。




 通学中にカナちゃんと鉢合わせになるのを避ける為、いつもより30分早い時間に家を出て、セツナさんともその時間で待ち合わせをしていた。


 無事、カナちゃんと会うことも無く駅に着くと、既にセツナさんは来ていた。


「おはよう、ムギくん。 大分顔色は良くなった様ね。 昨日はちゃんと寝れたかな?」


「おはようございます。 セツナさんのお蔭でゆっくり寝ることが出来ました」


「そっかそっか、じゃあ行こっか」


「はい」


 流石に朝は人が多いので、セツナさんは腕を組んではこなかった。


 セツナさんには、カナちゃんに送ったメッセージに既読が点いてたことと、夜中に1度だけ着信があったけど消音モードにして寝てたので朝まで気が付かず、話をしていないことを報告した。


「そうね、とりあえずあの子が何を考えてるのかまだよく解らないし、今日は様子を見ましょ。 教室で辛いかもしれないけど、何とか耐えてね」


「はい、色々心配掛けてすみません」


「恋人を心配するのは当たり前のことだよ? 気にしないでいいからね」



 恋人か・・・

 セツナさんの言葉を聞いていると、カナちゃんとの思い出が、ドンドン色褪せてくるな。

 心配なんてしてもらったことないよ。







次話は明日7時公開



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