八尺様・その4
軍用ジープが走る。搭載されたM2重機関銃をフランス人の男兵士が掴み、少年に狙いを定める。
「喰らいやがれ!!」
男兵士は機関銃のトリガーを引き、少年を撃ち続けた。少年に無数の弾丸が直撃するが、少年の身体に傷もダメージも無い。但し、少年の身体から白い靄のようなオーラが、弾丸が当たった箇所から漏れ始める。
彼等の放つ弾は、物理的な攻撃力は無い。その証拠に少年の肉体は傷付いておらず、オーラが当たった箇所から漏れ出ていくだけだ。
『ディーだ!後二分で装甲車が到着する!それまでに少年を助け出せ!』
「「「「了解!」」」」
環奈達が返事を返す。
「八尺様に憑かれたあの子、結構速いわね!ジープをアクセル全開にしてるのに、距離があまり縮まらないわ!」
マロンの姉が、アクセルを限界まで踏みながら運転する。ジープの目の前を少年が白い靄を出しながら走っていた。その際に通り掛かった子供達も、男女問わず全身から白い靄を放ち始めた。一瞬だが、『ポポポッ』と鳴く子も見られた。
「不味いね。どんどん子供達が魅入られてる」
「マロンちゃん!どうすれば・・・」
すると、機関銃を撃ち続けていた男兵士が射撃を中止して、環奈達に作戦を提案した。
「おい!俺、良い作戦を思い付いた!俺達が追い続けて、少年を即席の捕獲地点に誘い込むんだ!ディーに連絡を入れて罠を仕掛けもらう!」
「でも、ディー達は此処からかなり遠く離れてるわよ!」
「俺は射撃に自信あるぜ!攻撃して誘い込む!ディー達の所へ!」
男は再び機関銃を撃った。少年の右側に弾が撃ち込まれるが、少年は方向を変えない。
「なら、此でも喰らいやがれ!」
男兵士は大きな筒を取り出した。『HORRORS』専用のロケットランチャーだ。怪異を吹き飛ばす為に開発された対怪異用のロケットランチャーだ。
筒の先端にトランプのダイヤ型の弾がはめ込まれ、男兵士は息を切らしながら少年の真横に狙いを定める。
「ハーッ!ハーッ!喰らえ!!」
男兵士はロケットランチャーから弾を放つ。弾は狙い通り少年の真横に飛んでいき、壁に当たって爆発を起こした。少年は爆発に巻き込まれた後に吹き飛ばされるが、少年の肉体にダメージは無く、白いオーラの殆どが血濡れのように赤く染まっただけだ。そして、少年は立ち上がって横に移動した。
マロンの姉はハンドルを切りながらブレーキを掛けて、少年の元へジープを向かせた。そしてアクセルを再び深く踏んで、少年に向かってジープを走らせるのだった。
設定集
『HORRORS専用対怪異弾』
『HORRORS』にのみ支給される特殊な弾。ハンドガン、ショットガン、マシンガン、ガドリング等の銃器にも使える万能の弾丸。どんな怪異や異形の存在にも有効であり、ダメージを与える事が出来る。但し、物理的な攻撃力は無く、物理的な物は壊せず貫通するだけ。貫通しても弾痕は残らず、怪我もしないし壊れない。また、弾は放った後に怪異へ当たらない限り数秒後に霧散して消えてしまう。
『HORRORS専用ロケットランチャー』
『HORRORS』にのみ支給されるロケットランチャー。怪異に対してのみ有効の為、生き物や物質の破壊は不可能。但し、憑いている場合は、憑き物だけにダメージを与えて憑かれた物はダメージを負わない。爆発にも物理的な攻撃力は無く、怪異のみにダメージを与える。弾は己の霊力で補給し構成される為、弾切れにはならないものの、使い過ぎると自分の生命も削ってしまう。
『HORRORS式軍用ジープ』
『HORRORS』専用の軍用車であり、対怪異専用の機関銃を搭載している車両もある。最高速度は300キロである為に、並の人間には運転出来ない。