八尺様・その2
環奈達は家に到着した。マロンの傍に居ながら、緊張が解けないままの足取りで歩いている。
「環奈ちゃんったら、そんなに緊張してたら身が持たないよ?」
「初任務だよ?本物の怪異と戦うなんて初めてなんだもん」
「でも大丈夫だよ。私達の動きを見て、君なりの戦い方を身に付けた方が良いよ」
「・・・うん、僕、頑張るよ」
マロンは環奈の手を握りながら、連絡の有った家に一緒に入り込む。
家に入った環奈達。内装は綺麗なままであるのだが、壁の至る所に札が貼り付けられており、窓には新聞紙が貼り付けられている。
「こんなに札を・・・八尺様ってそんなに強い怪異なんですか?」
環奈の問いに、黒人隊員の男が答える。
「ああっ。過去に八尺様の封印されている村へ出向いた『HORRORS』のメンバー15名の内6名が連絡取れなくなっちまって、そのまま行方不明になっちまった。生き残った奴等は何も見てなかったらしいぜ」
「しかも、行方不明になった奴等は全員20歳以下の若い男女だシ、全員がそれなりに訓練を積んだ若く有望な人材ダヨ。君も、気を付けなきゃ駄目ダヨ」
中国人男性の隊員も答えた。環奈の頭を撫でる。環奈は少し安心した気がした。
「環奈ちゃーん!早く行こう!」
「う、うん」
環奈はマロンの元へ走る。その様子を見ていた男性隊員二人は、期待の目で環奈を見ていた。
「懐かしいな。俺達が初めて『HORRORS』に入った時も、あんな風に緊張しまくってたな」
「昔の話ダヨ。環奈ちゃんはまだ若いネ。まだ未熟だから、俺達が守らないと駄目だネ」
「それに、マロンも居る。彼女は最高のパートナーを見つけたな」
「そうだネ」
そして、男達も環奈達を追う。そして、家族から詳細を聞いた。
「皆さん。改めて、お話を伺えますか?」
マロンの姉が訊いた。環奈達はソファーに座り、向かい合うように男女二人が向かいのソファーに座る。更に彼等の子供であろう少年も傍の椅子に座っている。
「一週間前の事でした。八尺様を封じているお地蔵様が、何者かに壊されてしまったと聞いたんです」
「しかも、私達の家に通じる道に置いてあったお地蔵様が壊されたんです。今はまだ何ともありませんが・・・嫌な予感だけが過ってくるんです」
両親の顔は青ざめている。母親に至っては泣き出していた。息子の方は、不安で顔色が悪いようにも見える。
「お願いします!色んな神社やお寺に赴きましたが、何処も断られてしまいました!もう貴方達しか居ないんです!」
「お願いします!報酬もより多く払うと約束します!息子を助けてください!」
両親が頭を下げた。本気で言っているのは態度で理解出来る。
そして、10人でそれぞれ作戦を立てた。
「よっしゃ。じゃあ息子の傍には誰かが居てやらんとなぁ。環奈、マロン、お前達が傍に居てやれ」
「うん!」
「は、はい!」
マロンと環奈が少年を守る。他は家の中と、家の外で待機する事にした。
少年と共に、彼の自室へやって来た環奈とマロン。彼の部屋にもまた、無数の札が貼られており、仏の銅像が置かれている。
「ほ、本当に来るのかよ?」
「来るよ。ほら」
マロンが懐から取り出したのは、スマホ型の小型装置だ。
其処の画面には、赤い点が距離や怪異レベルと共に記されている。
距離600・・・500・・・400と、徐々に近付いてきているのが理解出来る。
怪異レベルは『5』と記された。
「っ!環奈ちゃん!」
「う、うん!」
環奈は両足のホルスターからリボルバーを取り出して、マロンが腰の鞘から短剣を二つ取り出して構える。
「だ、大丈夫なのか!?」
「怪異レベルは5!今の部隊じゃ対処が難しいかもしれない!環奈ちゃん、周囲を警戒してて!」
「わ、分かったよ!」
環奈もリボルバーを正面に向けながら、周囲に気を配る。
警戒をしながら、迫り来る八尺様に対して警戒を続けた。
そして、あの声が聴こえた。八尺様が来た事を示す、あの声が。
『ポッポッポポッ・・・ポポポ・・・』
装置解説
怪異探知機
怪異を探知するスマホ型の探知機。怪異が近くで発生したり出現際、画面に赤い点の形で表示し、更に距離や怪異レベルまで表示される。
単語
怪異レベル
怪異の強さ又は厄介さを現す。最高レベルは10。最低レベルは0。
<怪異レベルの基準>
レベル0:霊媒師一人で1日掛ければ対処可能。『HORRORS』の兵士1人で対処可能。
レベル1:霊媒師5人の元で4日間お祓いを受ければ対処可能。『HORRORS』の兵士5人で対処可能。
レベル2:厄除けグッズを持った上で霊媒師10人で4週間掛けて対処可能。『HORRORS』の兵士15人で対処可能。
レベル3:厄除けグッズを持った上で住職25人で3年掛けて対処可能。『HORRORS』の兵士35人で対処可能。
レベル4:高位の霊媒師100人で10年掛けて対処可能。『HORRORS』の兵士155人で対処可能。
レベル5:霊媒師では対処不可能。『HORRORS』200人で対処可能。装甲車、戦車一台で対処可能である。
レベル6:『HORRORS』の装甲車、戦車をそれぞれ10台も出撃が必要であり、重武装の兵士10万人を配備。
レベル7:『HORRORS』の戦車、戦闘ヘリをそれぞれ30台も出撃が必要であり、重武装の兵士40万人を配備。
レベル8:世界10ヵ国もの『HORRORS』から戦車、装甲車、戦闘ヘリを100機も出撃させ、重武装の兵士を100万人も配備する。
レベル9:世界が非常事態宣言を発令し、世界戦争を引き起こす。
レベル10:対処不可能。もう何をしても敵わなず、世界終焉は避けられない。
後で変更するかもしれません。