第3話 絵師探し
小説の完成が見えたあたりで小説投稿サイトに連載形式でアップしていった。ちらほら反応があったのはうれしく、執筆のモチベーションが上がった。
とは言え、作品はさほど注目を浴びることもなく完結して終了した。
完成した小説に絵をつけることにする。表紙や挿絵をイラストレーターに描いてもらうのだ。とりあえず小説が必要だったのはこの依頼をするためである。
Twitterやイラスト系SNS、クラウドソーシングサイト等でイラストレーターを探す。
条件としては、『女の子の絵師』、『できるだけ若い子』、『自分よりも下手』、『絵の投稿頻度が速い』ということ。
やっぱりやり取りするなら若い女の子のほうがいい。もしかすると仲良くなれるかもしれないからだ。
それに絵柄的にも男より女子が描いた絵のほうが俺は好みだ。これは個人差があるだろうけど。
『自分よりも下手』という条件をつけるのは、俺よりも絵が下手であれば俺がアドバイスできるからだ。俺もワナビーでちょっと絵を描いてたからな。
イラストの依頼では、ラフの段階とかで依頼主が修正を要求するリテイクという作業が発生することがある。そこで俺が絵に直接修正内容を描いてリテイクを頼むことで、絵師女子から「的確な修正指示だ!」と俺の株を上げることができるかもしれないのだ。
リテイクを重ねることでやり取りも増え、より仲良くなれる……かもしれない。
俺が修正を入れるリテイクを行えば、少々下手な絵でも俺の描けるレベルまでは引き上げることができる。絵をうまくなりたい子であれば俺に感謝してくれるかもしれない。
ちなみに、絵師の実力で報酬の相場も決まってくるから実力の低い絵師だと費用を安く抑えられるという効果もある。今回はそこはあまり重要ではないが。
『絵の投稿頻度が速い』ということは、絵を描くペースが速いということだ。絵を描くのが好きな子だと推察される。絵も描けば描くほど上達するわけだから将来有望な子というわけだ。
今回一回の依頼で終わらせるつもりはないからな。絵が上達してくれることは望ましい。それで絵のアドバイスした俺が感謝される可能性も高まる。
そういう狙いで絵師を探したところ、SNSでプライベートな投稿とイラストの投稿とを分けていない女子学生らしい絵師を見つけた。若い子らしくネットリテラシーが低いようで、友達とのやり取りを写真を載せて公開している。写真には多少加工がしてあるようではあるが。
この女子絵師に俺の小説のイラストの依頼を出すことにした。
イラスト系のコミッションサイトを見ると、数万円出せばアマチュアのそこそこうまい絵師が絵を描いてくれるようだ。
探し出した女子絵師に、カラー表紙を1枚とモノクロ挿絵を数点という内容を3万円でオファーすることにした。
実力に対して結構高額な報酬だ。金銭面で断られることはないだろう。
絵師に依頼するときは、希望の構図とかデザインとか納期とか支払方法とか、しっかり内容を決めて依頼するべきだが、今回はやり取りを増やしたいのでわざとアバウトに依頼する。
『かなん様
はじめまして。私は小説を書いております瑠璃 代助こと、井 光平と申します。
このたび、かなんさんにイラストの依頼をお願いしたくご連絡を差し上げました。
描いていただきたいのは、私の自作小説『らぶちゅうちゅう!』のイラストです。
カラーの表紙を1枚、モノクロの挿絵を数枚描いていただけたらと思っております。
料金は3万円でいかがでしょうか?
こういった依頼は初めてで、いたらないところもあるかと思いますが、お引き受けいただけると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします』
こんな内容でメールを送信した。
それにしても、いざ送信するときって不安感ですごい緊張するものだな。
「ええい、ままよっ!」って呟きながら送信ボタンを押したぜ。
さて、ちゃんと返事は来るだろうか。