第6話 ゴム風船と違和感っ!
2017/04/24 加筆修正 致しました。
「あそこに少し開けた場所がありますねぇ。あそこで少し休みませんか?」
ガニマタで歩きにくそうにしているマサ兄ぃを気遣ったのか、タツの兄貴がカシラに提案した。
さっきのオオカミもどきとの激闘で、マサ兄ぃはパンツに名誉の負傷を負っちゃったからね。
軽くうなずいた代貸しが、タツの兄貴が指し示した方向に進路を変えたので、皆ゾロゾロそれに続く。
たどり着いたその場所は、どうやら人の手が入ってるようで、焚き火の跡を中心に木もきれいに伐採されていた。テーブル代わりなのか、大きな木の切り株が残してあり、その横には椅子代わりなのか太目の丸太が置いてある。
目が覚めてから初めて、人の手によるであろう加工の後を見て、ほんとちょっと安心した。どうやら見渡すと、伐採の時に使う休憩地か、はたまたキャンプで楽しむ場所なのか――とりあえずはどこかに人里もあるのだろう。そのうち道にも辿り着くに違いない。
「冷えっ! (ひえっ!)」
「………………」
マサ兄ぃがごそごそとポケットからジッポのライターを取り出したので、おぃらはその辺にいくらでも転がっている小枝を集めると、焚き火跡の中心に積み上げる。マサ兄ぃが火をつけようとしているが、濡れてる部分が太ももに当たるのか、その度に奇声をあげて手を震わすのでうまくいかないようだ。
見ていて楽しかったんだけどさすがに可哀想なので、マサ兄ぃからライターを借りて代わりに焚き火につけてあげた。
が……しんめりした感触に、はげしく後悔……。当然と言えば当然か、ずっとジッポもマサ兄ぃのポケットに入ってたんだもんね。慌てて水場を探したんだけど、この辺にはなさそうだっ。
『パチパチパチ……』
焚き火が火と煙を上げ始めた。カシラが丸太のひとつにどっかり腰をおろしたので、おぃら達もそれぞれ適当な丸太を見つけ、腰を下ろした。
当然マサ兄ぃは、焚き火の一番近くに陣取り、チャック全開で大股を広げドライパンツだ。
「にわかには信じられませんが、我々の権藤組での最後の状況、シュウ君やマサ君の不思議な能力、先ほどの奇妙な生き物から考えるに、どうもここは異世界とよばれる所のようですねぇ」
一家の頭脳タツの兄貴が、みんなを見渡す。
異世界、なにそれ? ま、まあタツの兄貴の言うことだから間違いはないか――よく分かんないけどとりあえず、うなずいとこっと……。
マサ兄ぃとトシ兄ぃのお猿同盟も、おぃらと同じタイミングで神妙な顔をしてうなずいたので、おぃらと思いは一緒らしい。
「とりあえずさっきみたいな生き物が、またいつ襲ってくるかもしれません。武器もなにかしらあったほうが良さそうですねぇ。
この世界の文明がどうなってるかも、まだ全然わかりません。各自、持ち物をチェックしときましょうか」
ゴソゴソゴソ
タツの兄貴の言葉に、マサ兄ぃもトシ兄ぃも立ち上がってポケットの中を探り出す……
「どうも殴りこんだときのまんまみてーだな。
携帯は置いてきてたし長ドスと……ハジキは一丁持ってたが、弾ギレだわ」
切り株の上に、長ドスとリボルバー拳銃とジッポを置くマサ兄ぃ。
「どうやら私もあのときのままのようですね。
持ち物はこれだけです――弾はもうありませんね」
タツの兄貴が出したのは、オートマチックの拳銃だけ。
そうだよなー。殴りこみで、みんなありったけの弾を撃ちつくしたもんなー。
「僕も持ち物はこれだけー^^ 弾はもう全然ないよ」
……トシ兄ぃの前にある切り株の上には、一丁のオートマチック拳銃……そしてなぜだか大量に積み上げられた上げた大人のゴム風船――たしかにひとつひとつ丁寧に梱包され、ギザギザが沢山ついてるけども……手裏剣には使えないよね、それ……。
なんで仇討ち行くのにそんなもんポケットに入れてたんですか? 3ダースはあるじゃないですか……。
きっとこれが大人のエチケット――身だしなみという奴なんだろうね。おぃらはまだまだ子供のようだ……。
あっ!
慌てておぃらは、着ていたジャージのポケットをまさぐる――
あった!
――手に当たったそいつを引っ張り出す。
「カシラっ、あの時お借りしたドスです。お返しします」
座っているカシラの前で背筋をのばすと、白木のサヤにはいったドスを差し出した。
おかしいな? サヤはどこかに投げ捨てたはずだったし、ドスも血まみれになってたはずだったけど、持ち手もきれいなまんまだ?
でも、無くしてなくてほんとによかった……。
このドスは、親父がずっと持ってた物だ。親父が権藤組に暗殺された後は、カシラが引き継いで大事に持っていた。殴りこみをかけた時、事態を打開する為にやむなくカシラに借りたんだった。
カシラは、おぃらが差し出したドスをじっと見ると、ぼそりと言った。
「……シュウ……そいつはおめーが持っとけ……」
カシラの言葉になぜかしら、マサ兄ぃ、トシ兄ぃ、タツの兄貴も軽くうなずく。
んっ? なんだ? この雰囲気?
若干の違和感を感じながらも、おぃらはカシラに礼を言って、ドスをポケットにしまいこんだ。
――このカシラの言葉が、どんな意味を持つのか、まだまだ未熟なおぃらには知る由も無かった――
サブタイトル先に考えたら、こうなりました……
本当に申し訳ありません。
違和感の謎が解けるのはかなり先になります……