第3話 すていたすっ!
2017/04/23 大幅加筆修正 致しました
うっそうと木々が生い茂る森の中、目の前にはふわふわと浮かび上がる石版。
ゴチィィィン! 「シュウっ、なんだっ、これ?」
マサ兄ぃ、ありがとうですっ! 朝より夜の方が身長高いのは、マサ兄ぃのお陰な気がしますっ!
「おっすっ、石版……のようなものでありますっ!」
ちなみに、色は白っぽいのかな。実はほんのり発光してるんだぜっ、すげぇだろ。もっと言うと、その発光してる中に、黒とか金色に光る文字で――
「ふ~ん、なるほどっ! 石版か~」
ヨイトコショっと。
マサ兄ぃ、分かんないからって興味なくさないでくださいよー。今からいいトコなんですから……
一瞬で興味をなくしたマ猿兄ぃは、座り込んで道すがら背広にくっついた葉っぱを、丁寧に手で取り始める。口が裂けても本人には言えないが、その姿は、まるでお猿さんが蚤取りをしているようにしか見えない。
「ウンウン^^ 石版だね~^^」
ハイハイっ、トシ兄ぃもよく出来ましたぁ。ここはタツの兄貴に任せましょうねぇ。
おぃらとマサ兄ぃとトシ兄ぃは、いつもの通り、一家の頭脳タツの兄貴にすべてを委ねた……。
「どれどれ――なるほどなるほど……これは実に興味深い」
タツの兄貴は、右手でメガネを押し上げながら、しげしげと石版を見ている。
「ふむっ、なにか書いてありますねぇ。」
ほうっ、さすがタツの兄貴っ!ほんと他のお猿さん達とは、月とすっぽんぽんですっ!
ちなみに――
名前 :シュウ
種族 :人間(18歳)
体力 : ∞
魔力 :■■
技力 :■■■■
攻撃力 :■■■
耐久力 : ∞
知力 :■■■
精神力 :■■■
器用さ :■■■■
素早さ :■■
魅力 :■■■
――こんな感じ。
石版の左側は、なにやら棒グラフのようなものが、びっしりと書き込まれている。
項目多いな、全部見るのは……うんっ、めんどくさいなっ。
おっ!体力と耐久力が∞(無限大)だ、ははっ、マサ兄ぃにずいぶん鍛えられたからなぁ……
「なるほど、右側にもいろいろ書いてありますねぇ」
どれどれっ――
[スキル]
人物鑑定・食材鑑定
[固有スキル]
ど根性・子供の喧嘩・火事場のう○こ力
[特技]
家事全般
――し、下っ端感 満載な気が……しかも家事全般ってなんですか……。確かに親父や兄貴達の身の回りのお世話、何年もこなしてきましたけども……。
「ほうほうっ、んじゃあっ、わぃもちょっくら見せてもらおうジャマイカっ」
みんながワイワイ楽しげに見るもんだから、マ猿兄ぃも興味を取り戻したようだ。
じぃぃぃ……
――ナンカ……パッとシナイヨネ――
「コホンっ、シュ、シュウの作る味噌汁、わぃは好きだぜ……」
ウッキー! やっぱりマサ兄ぃは、違いが分かる男ですっ!
マサ兄、微妙な慰め、ありがとうですっ! おぃらもそんな兄ぃが大好きですっ!
お猿さん同士これからも慰めあって生きていきましょうっ。
「どうやらこれは、ステータスと呼ばれるもののようですねぇ。」
タツの兄貴は、興味ぶかげに覗き込んでいた顔をあげる。
ウキっ? す、すていたしゅっ? ば、バナナかなにかの名前かな?
「シュウ君、これを消すことはできますか?」
「おっすっ! やってみます」
どうすればいいんだ? えいっ! 消えろっ!
シュボッ
――あっ、消えたっ。
「もう一度出してみてください」
「おっすっ! こうやって、頭の上の球体に、あの……その……こうやってですね……」
たしか、こうだったな、頭の上に意識をやって――えいっ!
ぽむっ 「出ました!」ウッキ~!
「ふむ、シュウ君の言う光る球体も、今出ていると言う透明の板も、私には見えませんねぇ」
タツの兄貴の言葉に、マサ兄ぃもトシ兄ぃもうなずいている。
ほえっ? 半透明の状態だと、自分にしか見えないのか。
じゃあ、こうしてっと、ここからもう一回――えいっ!
ボムっ! 出たよぉー!
「おぉ、見えました。ふむっ、なるほどなるほど。
実は、私もさっきから自分で出そうとしてるのですが無理のようです。
どうやらこれは、シュウ君の【人物鑑定】とかいうスキルが関わってるのかもしれませんねぇ」
なぬっ、一家の頭脳のタツの兄貴でも出せないのでありますか?
ということは……マサ兄ぃには、絶対っ無理ってことですねっ!
フフフン――マサ兄ぃ、大変申し訳ないですが、一足先に人類へ進化させていただきますっ!
ゴチィィィン! 「チッ」
イカンイカン、優越感が表情に出てしまったようだ。
てかマサ兄ぃ、ゲンコツと舌打ちの順番が逆ですよ……。
「では、シュウ君、次はマサ君のステータスを開いてみてください」
はうっ!? やっぱりそうきましたかぁ……。
タツの兄貴、彼は人類からいちばん遠いお方ですよ……覚悟はできてるんですね?
「オッス!やってみます、マサ兄ぃっ、いきますよっ――失礼しますっ!」
「ちょちょちょっ、タンマッ!
シュウっ、痛いのは嫌だぞ、やさしく丁寧になっ。
あっ、そっ、そっとだぞっ……」
マサ兄ぃ、会話だけ聞かれたら誤解されます……。
おいらは、マサ兄ぃの頭の上の球体をおそるおそる見つめた。
ゴクリっ……
おろろしい……、ある意味、本当のお猿さんを見る方が気が楽かもしれない。
おぃらは、マサ兄ぃが慰めてくれたように、彼を上手に慰めれるのだろうか……
そんな事を思いながら、おぃらは、今からパンドラの箱を……あける……。
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