沈む夕陽は 始まりの朝
鎮魂歌に近い詩
雲間が薄いピンクに染まり
徐々に濃さを増して 光が地平線へ落ちた
空を辿れば 西の地平線が赤く滲むのを
わたしは じっと眺めてた
あのひとが旅たった日
燃える地平線のその先で
きっと新たな朝が始まるのだろう
残酷なまでに繰り返される その光景は
今は苦しく苦いものでも
いつかは美しく優しいものになるのだろう
陽に照らされた星々が 真昼に姿を隠すように
あなたもきっと其処にいるのに
光に照らされてるから 見えないのだろう
いつか会えるその日まで
いったい何回 太陽が地平線へ落ちるのか
いったい何回 朝が始まるのだろうか
朝が始まる苦しさを わたしは何度 繰り返すのか
それでも地平線のその先で
新たな命が始まるのが 胸が詰まるほどいとおしく
すべてに平等に与えられた朝と夜が
憎らしくも やさしくて
腹立たしくても 穏やかで
悲しくても 喜ばしい
苦しくて 切なくて
それでも 眼を離すことが出来ずにいる
あなたのいない世界が始まると言うのに
それでも 世界はうつくしい
それでも 世界はいとおしい
そうして また夕陽が沈み
そうして また朝陽が昇る
わたしにとって 終わりでも
だれかにとって 始まりなのだ
季節は 世界は 誰にも何にも構うことなく
たゆまず 何度も 巡り続けるのだろう
そうしてわたしも また歩むことを続けて
いつか あなたの場所へと旅立つ日まで
時を巡って その都度 空を仰ぐのだ
地平線へ 落ちる夕陽を眺め続け
わたしは 今日も 朝陽を待った
ありがとうございました。