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最低校の異者ども!  作者: 眞鍋 大輝
9/18

枯木の流木

戦いの始まり

「…さて。作戦を話すぞ?」




模擬戦争が始まった。


真琴(まこと)には何か考えがあるようで、仲間を近くに呼び寄せる。


「1体1の戦闘なら全員が慣れていると思うが


…まぁ、今回は知ってのとおり『戦争』だ。


個人個人がバラバラな事をしていたら勝てるもんも勝てなくなっちまう。」


そこで全員と目を合わせるように見渡す。


「…あまり悠長にしている時間もない。手短に説明する。」


そこで真琴(まこと)が口にしたのは、普通なら到底出来ることではない。



しかし、誰一人として異を唱える者はいなかった。




蒼歌(あおか)


真琴(まこと)達はどう出てくるとお思いですの?」


そしてこちらは五舎サイド。


こちらには2人しかいない。


戦力差があるように思える。が、そういうわけでも無かった。



「…アイツらは一人一人が洒落にならない力を持っている。


それこそ私と…

いや、訓練を積んだ一級の異者(チェイサー)と遜色ないレベルに、な。


あの歳で馬鹿げた才能を秘めた集団だ。」


「…天下の異者(チェイサー)ともあろうお方が、ずいぶんと大きく出ましたわね。」


「大げさに言ったわけでも何でもない。


だがな、アイツらは今の今まで集団戦闘に携わったことが無いのだよ。


…私や君と違ってな。」


その点で言えばお前も十分イレギュラーだな。

と、ユーリカに言う蒼歌(あおか)


「向こうもしばらくは作戦を立てるために動かないだろう。


作戦を立てるための制限時間は五分。


その間にこちらも出来うる手を考えるぞ。」


「了解しましたわ。」


ここで蒼歌(あおか)とユーリカの異能(チェイス)が初めて明らかになる。


「…ユーリ。

君の異能(チェイス)は『電』『雷』だったな?


…広範囲を得意とする君には恐らくサイドから展開してくるであろう雪平姉妹の相手をお願いしたい。


任せられるか?」


ユーリカの異能(チェイス)は『電』『雷』。


主に雷の力を用いて広範囲を攻撃する、超攻撃型の異能(チェイス)である。


「そういう蒼歌(あおか)は一体どういたしますの?


…失礼かも知れませんが固有異能(ユニークチェイス)無しの貴女の能力ではあの2人と式神の少女までは相手できないのでは…?」


「痛いところを突くな君は…」


蒼歌(あおか)異能(チェイス)は、『光』。


いくら『光』の異能(チェイス)であれ、3人を相手にするのは、負けに行くに等しい。

相手はイレギュラー集団なのだ。

そんな事は蒼歌(あおか)だって分かっている。


だから、『固有異能(ユニークチェイス)が無ければ』なのだ。


「あいつらには悪いが、そう簡単に負けてやるわけにもいかんのでな。


…今回は特別だ。


始めっから全力でやってやるさ。ただでさえ午後の授業1時間潰しているんだ。

これ以上五舎に支障が出るのは困るからな。」







改めて簡単に説明すると、双方の布陣はいたってシンプル。


まず『イレギュラーズ』。

こちらは右サイドを氷華(ひばな)、左サイドを炎華(ほのか)が同時に攻める形になっている。


これに対して五舎サイドはユーリカ・エーデルワイス1人でこの2人を相手取る。


そして空いた中央を七海(ななみ)が突破するといった内容。


迎え撃つは天下の異者(チェイサー)


真琴(まこと)は、戦いが始まった瞬間即座に後ろへ下がり、牡丹(ぼたん)と共にそこへ座り込んでしまう。


「さて。集団戦闘が初めてとは言えども、心得くらいは有りますよっと。


…どうせ蒼ちゃん先生はあの性格だ。

真正面からバカ正直に攻めるのが一番力を発揮できる形になるだろうな。




だったらこっちもバカ正直に受けて立ってやる」


「…主さま。」


「ん?なんだ牡丹(ぼたん)。」


「懸念なされていた蒼歌(あおか)殿の固有異能(ユニークチェイス)が気になるのですが…


一体どういった能力なのですか?」


そう。真琴(まこと)も懸念に入れていた蒼歌(あおか)固有異能(ユニークチェイス)


この固有異能(ユニークチェイス)


一つではるかに戦況を変えるほどの力を持っていた。


「まぁ、見てれば分かるさ。


俺が言うのもなんだがあれはちょっとばかり反則的だ。」


そう言う真琴(まこと)の前方では既に双子姉妹とユーリカの戦闘が始まっていた。





「ちょ、ちょっと待て…?


1人で私達2人の相手をするのか?

えっと、エーデルワイス…だったっけ。」

「ほのちゃん名前覚えてないのは流石に失礼だよ…?」


「…私の事はユーリカで構いませんわ?


蒼歌(あおか)に2人の相手をしろと任せられてしまいましたもの…


このユーリカ・エーデルワイス。持てる力のすべてをあなた方お2人にぶつけさせていただきますわ。」


名前を覚えていないことを不快に思うでも無く、悠然と返すユーリカ・エーデルワイス。


その瞳からは絶対的な自信が見て取れる


「…でもそこから動かずに私達2人を相手に戦うことが本当に出来るの…?」

「そ、そうだぞ。

本当に桃井(ももい)先生がそんな無謀な事を考え…」


「無謀ではありませんわよ?


…さて。


そちらから来られないのなら、こちらから行かせて頂きますわよッ!!」


そうユーリカが言った瞬間に、ユーリカの周囲に小規模な雷雲が発生する。


「私はユーリカ・エーデルワイス。


齢はあなた方と同じく15にして『雷姫』の称号を持つ、ランカーの1人ですわ!!!!」


この世界には異者(チェイサー)ランキングというものが存在する。


単純な戦闘能力で順位を付けられた、ある意味で最も分かりやすい強さのランキングである。



ランカーとはその上位12名にのみ名乗ることを許された称号付きの身分のようなものである。



この少女『ユーリカ・エーデルワイス』は、こう言ったのだ。


『私は全異者(チェイサー)でも12の指に入る強さを持っていますわ!!あなた方2人ごとき相手できないはずがありませんわよ!!』


と。そう言ったのである。


…ちなみに桃井(ももい)蒼歌(あおか)八雲(やくも)(あかり)も元ランカーの1人。

教職に付く時に自らその位を返上したが、折り紙つきの強者である。


「手を抜くわけではありませんが、私は固有異能(ユニークチェイス)の使用をせずに戦わせて頂きますわ…


ただ少人数の戦闘に向いていないだけのことなので、あまり気にしないで下さいまし。」


その言葉通りユーリカは固有異能(ユニークチェイス)を使わずに戦闘を行うが、その圧倒的な力の前に近づくことすら2人には許されない。




迂闊に近づこうものなら一瞬で雷に身体を貫かれてしまう。



そう、見えていた。


誰の目にも、そう映っていた。



歌代(うたしろ)真琴(まこと)

黒樹(くろき)七海(ななみ)

そして桃井(ももい)蒼歌(あおか)以外の目には。



「くっ…


焔剣(レーヴァテイン)》!!」

「私も…


氷鎌(アダマス)》!!」


2人がそれぞれ得意とする獲物を異能(チェイス)により顕現する。


炎華(ほのか)は、神話に登場する(おおとり)を唯一殺せるとされる伝説の刀剣を。


氷華(ひばな)は、万物を切り裂くとされる時械神クロノスの使用した鎌を。


それぞれが構えた獲物を振り下ろす


「《轟炎(フレアラー)》!!!!」「《氷界(アイスエイジ)》!!!!」



『雷姫』ユーリカ・エーデルワイスの両サイドから放たれる、圧倒的質量。


かたや地獄を彷彿とさせる禍々しい『地獄ノ業火弾』。



そしてもう片方は軌道上にある万物を全て、名の通り『粉砕』しながら迫り来る『絶対零度ノ息吹』。




「…これは想定外ですわ…?」


流石の『雷姫』にも焦りが浮かぶ。




…そもそも、ランカーになるには条件がある。


有力な家計に生まれた者は基本的に時期関係なくランキングを決める争いに参加する事が出来る。


が、通常の異者(チェイサー)は基本的に養成校2年目の後半からしか参加出来ない。




つまり『イレギュラーズ』は全員ランク争いに参加していないだけ。





『イレギュラーズ』の面々は全員、とうの昔よりランカーに肉薄するその才能をその身に秘めていた。







しかし、ランカーにも意地がある。


才能如きに負けるわけにいかないのだ。






『雷姫』、ユーリカ・エーデルワイスも対抗する。



「《大停電(ブラックアウト)》!!!!」


その名の通り辺り一帯を暗闇で埋め尽くすかのような雷雲が発生する。


「私ともあろうものが、ここで負けるわけにはいかないのですわッ!!!!」


3つの技が重なった瞬間


体育館の中は爆風に包まれる。



全員が倒れてもおかしくないほどの力の奔流。


しかし、誰一人として倒れる者はいなかった。




「……ッ…わ、私はまだ倒れませんわよ…?」


だがしかし。


爆風が晴れた時にい『立って』いたのは『雷姫』1人であった。


「こんな強いとは思ってなかったね…ほのちゃん…」

「あちゃー…。

私たちは膝をついちゃったって事は、私とひばなは負けちゃったのかな?」


負けた筈なのにいっそ清々しく見える2人。




「ご苦労様だ。2人とも、下がって休むといい。


…まぁ、さっさと真琴(まこと)の所に行って褒めてもらってこい」


そう言い残して間髪入れずに『雷姫』ユーリカ・エーデルワイスに肉薄する影が


2つ。




ひとつはその身に『闇』を宿し、『雷姫』を戦闘不能にしようと闇の塊を振り下ろす黒樹(くろき)七海(ななみ)


もうひとつはーーー


「…流石にそう簡単には倒させて頂けませんか。」




「お前の相手はこの私だ。馬鹿者


…良くやった。ユーリ。君も下がって休んでいるといい。」


大きく笑みを浮かべた天下の異者(チェイサー)


「…とうの昔に捨てた名ではあるが、名乗っても誰も怒るまい?」


それは、ランカーを示す二つ名。


「人成らざる者…


亜人(デミス)』、桃井(ももい)蒼歌(あおか)が特別にお前の相手をしてやろうッ!!」




七海(ななみ)の使う『闇』の異能(チェイス)を光り輝く右手で受け止めて見せた桃井(ももい)蒼歌(あおか)その人であった。













「ごめんねまこちゃん…私達2人はもう復帰は厳しいかも…」

「だぞ…。」


「あぁ…良くやったよ2人とも。


相手がランカーだったのは大誤算だったが、それでも2人が戦ってくれたのはとても大きい。


胸を張れ。相手方だって、もうこの『戦争』に復帰は不可能さ。」


満身創痍の二人に向けてにこやかにそう言ってみせる。


「さて…


高みの見物もお終いだ。」


そう言って真琴(まこと)


この『戦争』が始まって、初めてその腰を上げる。



「行くぞ牡丹(ぼたん)



こっから先は俺達のフィールドだ…



何人たりとも侵させやしないぜ?それが天下の異者(チェイサー)であってもな。」




七海(ななみ)の元に歩き出す。



気付けば真琴(まこと)の姿は黒髪灼眼へと風変わりしていた。
















「…んくッ…」


私としたことが…


『雷姫』としたことが不覚を取りましたわ…。


それにしてもあの姉妹が使用した武具…


いえ、気のせいですわね。




そんな事よりも気にしなければいけないのは真琴(まこと)


歌代(うたしろ)真琴(まこと)


あの2人の強さは身に染みて分かりましたわ…


恐らくあの黒樹(くろき)七海(ななみ)という殿方も、蒼歌(あおか)の相手を任せられる程ですもの。


恐らく相当な手練れであるようですわね…?




ならその3人を束ねる真琴(まこと)は一体…







鎌首をもたげたその疑問は、それからすぐに解決することとなる。



歌代(うたしろ)真琴(まこと)の圧倒的な戦闘力によって、嫌でも分からされる事になるのだった。

重い腰を上げた真琴(まこと)


七海(ななみ)ちゃんの戦いも見どころになると思われますね?

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