表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最低校の異者ども!  作者: 眞鍋 大輝
8/18

どうか、愛を

新キャラのお嬢さま


「………静かすぎないか?」


真琴(まこと)達は校舎へと入ったが、授業をしているはずにも関わらず、あまりにもそこは静かだった。


「授業に組み込むって、まさか…


全学年の全生徒を集めたってのか…?」


これは普通ではないと、改めて認識する。


「おい真琴(まこと)。これはいくら何でもおかしくないか?」

「…七海(ななみ)もそう思うか。」


「あぁ…


いくら何でも、たかが養成校生徒と教師+αの模擬戦争なだけだぞ?


学校が総手を挙げて行うようなものでは無いはずだろう。」


「ところがそうでは無い。


…って事なんだろうな。おそらく。」



しかしその瞬間、5人の纏う空気が変わった



「…まこちゃん…。


……どうする?」

「…3人。敵対心無し。

どうする?まこと。」


「いや、違うぞ炎華(ほのか)


…正確には1人だ。これ。」

「…牡丹(ぼたん)は主さまをお守りいたします。」

「んじゃ俺は一応いつでも戦える状態にはしておこうか。


真琴(まこと)は、どうする。」


「…決まってるだろ?」


ニヤリと笑う


「大胆不敵に笑っててやるさ。


痺れを切らした相手さんが勝手に寄ってくるはずだからなぁ!!」


真琴(まこと)がそう言った時、何かが起きた。


『…ッ!!』


(今聞こえたのは恐らくノイズの様なものだ。


って事は異能(チェイス)の使用者は別にいるってことだなぁ…



秘蔵っ子の管理がなってないぜ蒼ちゃん先生…。)


臨戦態勢を解かないまま5人は歩を進め始めた。


向かうは体育館。

おそらく全校生徒、及びに桃井(ももい)蒼歌(あおか)を含む全職員。


そして、件の秘蔵っ子が待っている其処へと。









「…だから言っただろうが…


アイツらはそんな簡単に測れるような大人しい奴らじゃないんだよ。」


桃井(ももい)蒼歌(あおか)は『秘蔵っ子』とやらに向けてそう言った。


「…悔しいですわね。私としたことが手も足も出せずに異能(チェイス)を潰されるなんて…。」


その言葉を受け止め、返事を返したのは真琴(まこと)と同じ碧い眼をした少女。


金髪碧眼。

それも相当育ちがいいように思われる言動。


しかしにじみ出る戦意はその容貌に似つかわしくないほど鋭く、それでいて華やかだった。


「あぁ。大人しく見える雪平姉ですらあの有様だ。


…まったく、お前の人を惹きつける力はその異能(チェイス)にも引けを取らないほど強大なものだと再確認させられるよ。


でも手加減はしない。

手加減をされるのは嫌いだろう…?」


「流石。


よく分かってるじゃないすか…


とっとと始めますか。

手を出されたまま、和やかに済ませられるほど俺達『イレギュラーズ』は心が広くないですからね。」


そう言いながら、やはり全員が同じようにそれぞれに笑みを浮かべながら体育館へと入ってくる。



「24舎代表部隊。


隊長の歌代(うたしろ)真琴(まこと)です。以後よろしく金髪さん。」

「…同じく隊長補佐。黒樹(くろき)七海(ななみ)だ。」

「え、えっと、副隊長になっちゃいました…雪平(ゆきひら)氷華(ひばな)です…

…よ、よろしく、ね?」

「ひばなのサポートで、同じく雪平(ゆきひら)炎華(ほのか)だ。

よろしくだぞ。」

「…主さまの右腕、牡丹(ぼたん)です。」


「……以上、八雲(やくも)九火(きゅうび)を除く4名及びに式神1名。


通称『イレギュラーズ』。到着いたしました」


体育館中に凄まじい熱気が渦巻いている。


…『イレギュラーズ』は全員が全員、規格外の化け物。

5人中4人が五舎の前年度の卒業生であり、なんとその4人の異能(チェイス)は、合わせて計7種。


被っている異能(チェイス)の種類もあるので7種に収まっているが、3人が二種異者(ダブルチェイサー)、1人は世界にただ1人の限界者(リミッター)である。




異能(チェイス)には、固有異能(ユニークチェイス)というものが存在する。


限られたものだけが扱うことの出来る、世界に一つしかないその者専用の異能(チェイス)である。


『イレギュラーズ』は、八雲(やくも)九火(きゅうび)含む全員が固有異能(ユニークチェイス)まで持っている。


伝説にならない、わけがなかった。


「『イレギュラーズ』、か…


面白いネーミングセンスだな?それほど似合っている名前はそうそうないぞ。真琴(まこと)。」



桃井(ももい)蒼歌(あおか)歌代(うたしろ)真琴(まこと)が今、一歩出て対峙する。


八雲(やくも)九火(きゅうび)とやらの役職は決まっているのか?」

「俺の左腕ですよ。」

「…ふむ。そうか。どうやらあの娘が上手くやれているようで安心したよ。」


少し驚いた真琴(まこと)


「知っているんですか?九火(きゅうび)のこと。」

「知っているも何も…」


そこで、真琴(まこと)にそっくりな…いや、真琴(まこと)が似てしまったのかもしれない不敵な笑みを蒼歌(あおか)が浮かべる。


「あれの姉。

八雲(やくも)(あかり)は私と同期で同じ一舎の代表仲間だ。


お前の式神も(あかり)に教えてもらったのだろう?」


「…ははっ。そういうこと、か。


はい。これは(あかり)先生に教えられ、手に入れることの出来た大切な仲間です。」


そして真琴(まこと)が金髪碧眼の少女の方を向き、言う。


「俺の名前は歌代(うたしろ)真琴(まこと)。この部隊の隊長で、蒼ちゃん先生の愛弟子だ。「自称だがな。自称。」…じ、自称愛弟子、だ。うん。


…よしっ。君の名前を教えてくれないか?」


少女は驚いたように目をパチパチと瞬かせる。


「…驚きましたわ。

蒼歌(あおか)がそんなにフレンドリーに接する殿方なんて初めて見ましたもの。」

「お、おい待てこら。そんな事ないぞ…おい…」


少し困惑したように言い返す蒼歌(あおか)を見てコロコロ笑う。


よく笑うようだが、笑い方一つとっても美しい動作だった。


「私の名前はユーリカ・エーデルワイス。


…貴方はどうやら面白い方であるようですわね。ファーストネームでお呼びしてもよろしいかしら?」


「あぁ。構わないぜエーデルワイス嬢。んじゃ俺もファーストネームで呼んでも?」

「あら。積極的な殿方ですわね。

蒼歌(あおか)が溶かされるのも無理はありませんわね。」

「だから…私は別に溶かされてなど…」


やはりコロコロと綺麗な声で笑う。


真琴(まこと)!!私の事は特別にファーストネームで…いえ。」


突然呼び捨てにされて少し驚く真琴(まこと)


「『ユーリ』と呼ぶことを、特別に許可しますわ。

喜びなさい?私の愛称を呼ぶことを許した殿方は父上を除いて貴方だけですわ。


本来ならば父と旦那様となる方以外には許すことは、ないのですわよ?」


『え、それってつまりまこちゃんを自分の夫にするつもりってこと…?!』

『だ、だめだぞひばな…!!それはまずいぞ?!』

『はぁ…アホ姉妹。落ち着け。馬鹿がバレるぞ』


「…雪平姉妹もお前のこととなると相変わらずだな」


「…?何のことだ?」


「何でもないさ。この鈍感が。」


何故か蒼歌(あおか)まで少し拗ねたようにボソリと呟く。



ダンッ!!!


と、ユーリカ・エーデルワイスが一歩前に踏み出し、桃井(ももい)蒼歌(あおか)と肩を並べる。


「…始めますわよ。真琴(まこと)


私とあなたの、戦争ですわ!!」


天下の異者(チェイサー)

桃井(ももい)蒼歌(あおか)と肩を並べることが出来る異者(チェイサー)など、そうそういない。


それを再認識した真琴(まこと)


…いつから似てしまったのだろうか。

不敵なはずの笑みを浮かべる。


不思議と、真琴(まこと)蒼歌(あおか)の2人が顔にするその笑みは、周りに不快な印象を与える事はなく。

むしろ一種の清々しさまで与える、爽やかさを併せ持っていた。



「あぁ!!受けて立ってやる!!


だが一つ訂正だ。ユーリ。」


「あら。何かしら?」


伝染したかのように笑みを浮かべながらユーリカ・エーデルワイスが返す。



「…ユーリと俺の戦争じゃねぇ…。



俺達と蒼ちゃん先生、ユーリの…


これは俺達『イレギュラーズ』との戦争だッ!!!!!!」


体育館中から熱狂の声が上がる。


初歩的な異能(チェイス)の応用。『拡声』を蒼歌(あおか)が使う。


《只今より、養成校24舎代表チーム対学校五舎代表、桃井(ももい)・ユーリカ両名の模擬戦争を始める!!!!!》





師と弟子の戦いの火蓋が、今。


切って落とされた。










この日私は、突然姉様に呼び出された。



「…九火(きゅうび)。少し聞きたいことがあるの。


いいかしら?」


「ええ。構わないわ姉様。」


「…24舎は、どう?」


質問の意味が、よく理解できない。


「…?どういう、意味かよく分からないわ。」


姉様は少し困ったように笑う。


「正確には、『イレギュラーズ』の…


同じ代表の皆をどう思っているのか聞きたかったのよ。

遠まわしになってしまってごめんなさいね…」


少し、いや、とても意外な質問だった。


私が同じ代表の皆をどう思っているのか…




私にも、分からない。


でもひとつ言える事はーーーー


「あの人たちの輪に、私も入りたい…?」


いや、違う。


自分に嘘をつく必要などない。


正直に口にしよう。


初めて一人の人を気にしている、と。



『血筋の壁を越えて…

式神を召喚した。


あんなに大きな、とてつもない力…うかつに近づいたら喰われてしまいそうなほど深い、何かを持った


歌代(うたしろ)真琴(まこと)という少年を』




「私は彼を、理解したい。


初めて自分から興味を持てた人間よ。


八雲(やくも)九火(きゅうび)は、歌代(うたしろ)真琴(まこと)と共にありたい。と、思っているわーーーーー」



八雲(やくも)九火(きゅうび)は、家のしきたりによって決められるはずの自分の許婚を


初めて自分から意見を出し


歌代(うたしろ)真琴(まこと)を許婚とする事に決めた。






八雲(やくも)九火(きゅうび)の欠けていた感情が埋まり始めたこの時。



真琴(まこと)の知らないところで、真琴(まこと)を想う少女が、またひとつ。



控え目であるが、可憐な笑顔の花を咲かせた


九火(きゅうび)もまた一つ。小さな花を咲かせました。


わたわたしている蒼歌(あおか)せんせー可愛いよせんせーかわいい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ