表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最低校の異者ども!  作者: 眞鍋 大輝
2/18

ブラックレッド

この物語は、真琴(まこと)達の歩む道の第一歩目である。

引越しを終え、新学期を2週間後に控えた春の日のこと。


彼らは準備を済ませ、24舎男女混合寮。


「わかば荘」で時を過ごしていた。




「まこと。お買い物行かない…?」

「いいぞー。


んじゃ、ちょっと上着だけ取ってくるから先外出て待っててくれ。」


「わかった!ありがとう!」


感謝されるような事でもないんだがな。と、真琴(まこと)はあまり待たせないようにと素早く上着を手に取り、羽織るだけにして外に向かう。



炎華(ほのか)は行かなくていいのか』

『…先を越されたぞ。今日はまことを氷華(ひばな)に譲ってあげるんだぞ。』

『強がりだな』

『…うるさい。』



(こっちに越してきて初めてまことと2人でお出かけができるなぁ…。


とはいっても、晩御飯の買出しとか、そんなだけどね。)


春の暖かな日差しの中、2人はたわいも無い話をしながら歩き続ける。





だが、そんな和やかな雰囲気は唐突に壊される。


低位犯罪者(ワースト)だあああぁぁぁぁ!!!』


低位犯罪者(ワースト)


この世界には異者(チェイサー)の力を無理やり引き上げる、法的に禁止されている《βウイルス》という薬品がある。


この《βウイルス》を服用した者は一様に「低位犯罪者(ワースト)」と呼称される。


なぜ禁止されているのかというと、その単純な効能に対し、やはり副作用は存在するからである。


「使用した異者(チェイサー)の自我を崩壊させる」

というものである。


しかし、例外は存在する。


ある程度実力のある異者(チェイサー)なら、自我の崩壊に耐えることが出来る。


この場合が最も厄介であり、もしも実力の伴う異者(チェイサー)が《βウイルス》を使った場合。


自我の崩壊を完全に耐えることが出来、低位犯罪者(ワースト)異者(チェイサー)の見分けがつかなくなってしまう。


だがらあくまで「実力のあるものは」である。


この《βウイルス》を使用するものは、残念なことに大半が養成校生である。


その理由も


「強さを求めて」


であることが多い。


元から実力の備わったものはよっぽど野心がない限り《βウイルス》を使用するものはいない。そのため、低位犯罪者(ワースト)を見分けることはある程度簡単なのである。


そして普段舎街中では異能(チェイス)の行使は認められていない。


行使する場合は政府への申請が絶対必要である。しかしやはり例外は存在する。


正当防衛、及びに低位犯罪者(ワースト)の発生時である。


「…は、ははァ!!やった、やったぞォ!!この力があれば、もう誰にも負けないィィ!!!」


逃げ惑う人々。


低位犯罪者(ワースト)は最早、普通の異者(チェイサー)の手に負える次元ではなくなってしまう。

「…氷華。


また少し待たせるが、あいつをぶっ飛ばして来ることにしていいか?。」


自分の住む新しい街が破壊されたり汚されるのは嫌なのだろう。


少し不機嫌を顔に出した真琴がそう言う。


対して氷華は


低位犯罪者(ワースト)位なら心配ないと思うけど、気は付けてね…?」


と返す。


堂々とした足取りで歩を進める真琴?


逃げる人の群れに逆らう形であるが、まるで海を割るかのように、彼の進行方向に道ができる。


低位犯罪者(ワースト)の目の前に立つ。


「だァれだ…お前は…?」


「ちっ…完全ではないが自我を保ってるタイプかめんどくせえ。


低位犯罪者(ワースト)よ。人に名を聞く時はまず自分から。


常識だぜ?自我が残ってるなら答えな。」



全く物怖じしない真琴を見て、まるでおもちゃを見つけた子供のように目を輝かせる。



そして興奮したように答える。


「それは悪かったなァ!だが俺もワースト、ではなく神十仁(かみとおじん)という名前があるんだァ!さあ!テメエの名を聞こうか!!」


よっぽど今の自分の力を…


異能(チェイス)を試したいのだと見える。


それに対し真琴は


歌代(うたしろ)真琴(まこと)だ。ワースト。」

やはりいつまで経っても恐れを見せない。

仮にも自分は《βウイルス》を摂取して強化された、低位犯罪者(ワースト)である。


が、目の前の白髪は全く動じてもいないように見える。


「何者なんだァ…?


そんな余裕を持って低位犯罪者(ワースト)に対峙することが出来るとなるとォ


…俺より上…二か三舎当たりの養成校生かァ?」


「残念だがまだ養成校生でも無いんだなこれが。

ま、今期からの養成校生であることに変わりは無いがな。」


それを聞いて、低位犯罪者(ワースト)が憤慨する。


「…ちっ。イキがってんじゃねえぞォ?


それだとまだ学校生ってことになるじゃねえか舐めてんのかァ…?!」


誰かが通報したのであろう。


少し遠くから政府の機動隊がくる音が聞こえる。


「にしてもよく喋る低位犯罪者(ワースト)だな。


騒ぎがこれ以上大きくなる前にお前を仕留めて、機動隊に引き取ってもらうとするぜ。


神十仁。」


到着した機動隊が、一般の異者(チェイサー)である真琴が、低位犯罪者(ワースト)と対峙しているのを見て避難を促す。


「そこの少年!早く退きなさい!相手は低位犯罪者(ワースト)だぞ!!」


責任者らしき人物が真琴に声を飛ばす。



すると、真琴が少し驚いたように声のした方を振り返る。


「…八千代(やちよ)さん?


え?政府の機動隊になんであんたが…?」


『隊長。彼とお知り合いなのですか?』


という声が上がる。


当然だ。


普通であれば一般人と政府関係者が知り合いなどという事は、親子。もしくは同級生…それくらいでしかありえないレベルの事なのである。

「え、あ!?まこと!?お前何して…


いや、あいつが異能(チェイス)を使うとなれば、むしろ俺達が手を出す方が邪魔じゃねえか!!」


お前ら下がれ!!あの白髪に巻き込まれたら最悪もってかれるぞ!!という指示を飛ばし、自身も隊の先頭にいながらなるべく真琴から距離をとる。


歌代(うたしろ)真琴(まこと)と言ったなァ…。


お前は何だ?」


異常性を読み取るほどの自我や理性はやはり残っているようで、少し緊張したように問う。


「見てわかるだろ。

通りすがりの、男子生徒だ。」



「通りすがりの男子生徒が、あんな風に距離を取られ恐れられる事なんてあるはずが無いだろォ…?」



真琴が「普通」ではないことを理解した。


が、遅すぎる。



唐突に膨れ上がるプレッシャー



真琴の体から溢れ出すように、黒い霧状の「何か」が飛び出す。



彼の体を「何か」が覆い、それが晴れたその時




「なんだ、何も変わってないじゃァ…。


…ッ?!その髪はなんだ?!瞳もォ!」



髪はまるで光をなくしてしまったように漆黒に。

瞳は血に濡れたように、先程まで碧かった部分が今度は、真紅に染まっていた。



「よく見ておくんだぞ…これが怪童


二種異者(ダブルチェイサー)』のさらに上を行く、世界初の『限界者(リミッター)


歌代(うたしろ)真琴(まこと)だ。」


八千代の声が機動隊の面々へと伝染する。

ざわめきが生まれる中



真琴が、静かに手を挙げる。



そこからは、一方的であった。


彼を包む周りの影から5匹の『狗』が飛び出す。


そして、低位犯罪者(ワースト)異能(チェイス)を喰らう。


なす術もなく、恐怖で声を上げることもできず、ひたすらその「存在」を削られていく低位犯罪者(ワースト)



不意に、真琴が両手を打つ。


「『五大明王』


東の王。『降三世(ごうざんぜ)

西の王。『大威徳(だいいとく)

南の王。『軍荼利(ぐんだり)

北の王。『金剛夜叉(こんごうやしゃ)

不動なる王。『不動明王(ふどうみょうおう)』」


呼びかけに応え、『狗』1匹ずつの体を突き破り巨大な腕が飛び出す。


「…喰らえ。」


そう言い真琴が手を握りしめる。



すると、5本の右腕が低位犯罪者(ワースト)に襲いかかり


後には地に倒れ伏した「神十仁」だけが残った。



呆気に取られ、皆が起き上がってこない「神十仁」を穴が開くほど見つめる。

そんな中、氷華が真琴に駆け寄り


「…こんな所で式を打つと思ってなかったよ。」


「…あぁ、いっそのこと異能(チェイス)を全部喰い尽くさねえと本当に自我も理性も失くして『化け物』になる可能性があったからな。」


すまん。と氷華に謝る真琴の姿は、気づけば白髪碧眼の彼に戻っていた。





義務的に八千代との事情聴取のようなやり取りを終え、本来の「買い物」という用事を済ませ帰路につく。


そして何事も無かったかのように、また1日が流れていく。


彼、歌代(うたしろ)真琴(まこと)は今、踏み出した。



一方、それを遠くから見ている者達がいた。




「あららら。一方的だったねぇ。」


「仕方あるまい。半端者だったのだ。あの程度の異者(チェイサー)では、歌代(うたしろ)(すず)の駒には勝てんだろうよ。」


「まあいいさ。種は、撒いた。」


「芽吹いた時、僕らはこの天国を…」


落とす。

そう呟いたのは真琴とそう変わらない歳に見える女だった。




読んで下さった方ありがとう!!(テンプレ)


難しくなってしまったかもしれませんが、のちのち全てを解明していく所存ですので末永くお待ち下さい(笑)


今回では真琴(まこと)が初めて自分の「式」という技を見せてくれましたが、彼の技はまだまだございます!ドキドキワクワクさせるようなストーリーを練っていきますので、これからも彼らの応援を宜しくお願い致します。


以上。晩御飯食べすぎた眞鍋でした

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ