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放課後

「ねぇ、いいでしょ? 別に」

「しつこいな。もうついてくんなよ」


 その後もなぜかどっかに行こうと誘ってくる悠里にうんざりしながら、まっすぐ家に向かっていく。


「もう、どうしてそう強情かな~……って、あれ?」


 悠里は呆れたようにそう言うと、途中で頭に疑問符を浮かべたような声を出した。

 俺もその反応に何があるんだと、その視線を辿り、視線を向けると……。


「新作ゲーム?」


 そこにはゲーム屋があり、ショーウィンドウには最近発売されたゲームが載っていた。


「ああ、あれって、あんた欲しがってたやつよね? へー、今日が発売日だったんだ」

「なあ、悠里……」

「ん? なに?」

「何でこんな大切なこともっと早く言わなかったんだ――――!」

「は、はぁ? 知らないわよ! あたしだって今気づいたんだから!」

「そんなもん知るか。お前が途中でゲーセン行こうとか言ってなかったら、もっと早くそれに気付けたのに!」

「はっ! なに? 八つ当たり? 自分の欲しかったゲームの発売日も覚えてないような人間が。あたしに言われなかったら、どうせ数日忘れたままだったんでしょうから、そこは感謝すべきところでしょ?」


 っち、まったくもって悠里の言うとおりだ。だが、感謝しろなんて言ってくる性格の悪い奴に、誰が感謝などするか。

 大体、前にしてやったら――


『え? ちょっと……あんた頭大丈夫? もしかして今日は台風でも来るんじゃないかしら……』


 って言われて、どれだけ後悔したことか。


 俺は「はぁ」とため息をつき、「じゃ、俺はもう帰るな。金とってきて、ゲーム買いいかなきゃならないから……」と言って、すぐさま帰ろうとした。が、


「あ、ちょっと待った!」


 悠里が何故か俺を止めてきた。

 くそ、なんだよ。俺は早くゲームがしたいんだよ!


 あの前作の神がかり的な感動のラスト。伏線を張り巡らせ、それをラストではありえないほど分かりやすく、かつドラマティックに回収した。

 その続編としての新たなストーリー。それは今までのシリーズで回収されなかった伏線すべてを解決すると言われている、シリーズの最終章。

 その構成や敵キャラの数も今までの非ではない。さらに歴代の人気キャラが再登場という、まさにファンには目からうろこの作品なのだ。


 だから俺も一ファンとしてゲームをやりたいくてしょうがない。

 なのにもかかわらず、こいつは俺を止めるのだ……。オレの怒りは今まさに最高潮となっていた。


「な・ん・な・ん・だ・よ――――!!」


 下校途中の道。周りの迷惑も考えずにそう叫んだ。


「わ!? え? なに? どうしたの? そんなに叫んで?」

「お前こそなんなんだよ! もう話は終わっただろ! だったら、早く俺を帰らせろ。もしくは金を貸せ! そしてゲームさせろ! ついでにお前は死んじまえ」

「いやいや。死なないから。なにさらっと死んじまえとか言ってんの? 女の子に対して物騒よ?」


 誰が女の子だ。お前はどれかと言えば、地球外生命体だ。


「ったく……。んで? なんだよ。用件あるなら早くいえ!」

「あんた何イラついてんの? カルシウム足りてる?」


 お前のせいだよ!


「とにかく、話はこっちのほうが本題だから」

「本題? 俺にとっちゃゲームがででたってことのほうが、よっぽど本題だぜ」


 そんな軽口を叩いてみたが今度は……本当に真剣な様子だった。悠里は俺がその様子に察したのを感じると「はぁ……」と軽くため息をついて、一拍おいてから話し始めた。

「あんた、今日も遅刻だったよね」


 ……まさか、この話だとはな。


「……だったらなんだよ」


 冷たく言い放つ。実際迫力もあっただろう。


「ちゃんと来なさいよ。じゃないと……」

「単位が足りなくて、進学できないか? それどころか、不良学生として退学でもさせられると? ……関係ないだろ。お前には。俺の勝手だ」

「でもこのままだと……」

「うるさい! 俺の勝手だっていってんだろ!」

「……あんた、親に迷惑かけたいの? あんたいつも言ってたじゃない。親には感謝しているつもりだ。だから、あんまり迷惑はかけたくないって。でも、このままだとそれこそ迷惑に……」


 なんなんだよ。何でも知った風に。


「お前に言われる筋合いはねーよ。……何度でも言う。俺の勝手だ。ほっといてくれ」

「だから、なんで!? 咲夜!」


 悠里。お前じゃ分かんねーことなんだよ。この問題は。


「じゃあな」


 そう言って俺は強引に話を終わらせ、自分の家に帰るため歩き出す。

 途中悠里は何か言っていたかもしれないが何も耳に入らず……いや入らないようにして意識を閉ざしながら帰った。

 ただその意識を閉ざす前にひとつだけ声が届いた。


「それじゃまた……前と同じことになるだけじゃないの……!?」




「くそ!」


 その言葉とともに、俺はゲームのコントローラーを投げ出し、ベッドの上にあおむけになる。あれほど待ち望んでいたゲームのはずなのに、悠里の言葉を思い出し、全然集中することができなかった。


「……ほんとになんなんだよ」


 あいつには分からないこと。分かり合えるはずのないことだ。

 でもあの最後に俺の中に響いた言葉。


(前と……同じ?)


 一体何のことだ? いつの話をしている?

 俺には何も思い当たる節は無い。あいつは一体何を知っているんだ?

 ……駄目だ。頭が重い。もう考えるな。

 それに悠里の言っていたことは、俺のこの件に関しては関係ないはずだ。これ以上は無意味だ。


「なぁ、なんで俺はここにいるんだろう?」


 自分しかいない部屋で……いや、家でそんなことを呟く。

 でも、答えは返ってくるはずもない。俺自身もその言葉を発した意味を理解できない。

 ふと視線を横にずらし、ゲームの画面を見た。そのときの俺には、映るキャラたちの目がどうにも淀んで見えた。

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