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三日間の反省

「と……まぁ、起きたはいいがどうするか……」


 というのも、今日は土曜……休日だ。やることが一切ない。


「はぁ――……まぁ、そうなにもかもうまくいくわけないよな~」


(まだ何もやってないけど……)


 俺が今、こんなことを思っているのには、ちゃんと理由がある。

 別に、学校に行きたいわけじゃない。というより、好き好んで学校なんて場所に行くやつなんか、そうはいないだろう。目的は、その学校にあるだけの話だ。


 ただ、俺は蘭に会いたいと思った。

 昨日は本当に酷かった。なにが酷いって、そうとしか形容しがたいほどに酷いってのが酷い。もう、それは蘭に会わせる顔なんかはあったもんじゃない。


「まぁ会わないといけないんだけどさ」


 けど……蘭は俺に会ってくれるだろうか? あいつの気持ちを踏みにじり、勝手に帰った俺を。それだけじゃない。


『そんなの気まぐれだ。お前のことに気を持ったくらいのな。それじゃあな』


 こんなことを言ってしまったのだ。……酷いぞ。さすがに。我ながらにも思う酷さだ。

 つーか、よくもまあこんな台詞ポンポンとでたもんだな、俺。いつもどんなこと考えてんだ?


「……ってあれ? 話がシフトチェンジしてる?」


 少し話がずれていた。軌道修正。

 言った後は強引に帰っていたわけだが、蘭は後ろでなんか言ってたしな。

 完全に無視しちまって、なに言ったかは覚えてないけど。


「ここまで考えた結果だと。絶対に蘭に会うことはできないな」


 会えても逃げられる可能性大きいし。

 ここでふと、蘭の言っていた言葉を思い出す。


『天皇寺さんは僕にとって大事な人です。だから、その人には僕の気持ちを知ってほしいんです』


(その言葉は俺にはもったいなかったな。でも、今でもそう思ってくれているなら俺も……俺にとって大事な人になってもらいたいな)


「ふぅ。まぁ、結局実際に会ってみないとどうにもならないしな。謝ることさえできない。それまではポジティブにいこう」


 あーあ、これだったらケータイの番号とか聞いとくんだったな。ケータイ持ってるかすら怪しいやつだけど。


「…………やることがないな」


 蘭の件については、その時になってから考えると結論が出た今、やることは消えてしまった。

 何か無いか。というか、考える必要があったのかすら怪しいものだが……仕方がないので、昨日のことを考えるとしよう。


「…………やべーな。昨日の俺」


 なにがって、本当、家に帰った後の俺。やべーよ。なに考えてたんだよ。アホか。いっそ死ぬか?


『友達なんてオレには必要のないものだ』


 馬鹿、アホいやいっそAHOすぎて何にも言えないレベルだ。マジで一回死んでおいたほうがいいかもしれない。

 それ以前に、友達が悠里しかいないなんて、悲しすぎるだろ。もう少しいるだろ?

 というか、よりによってなんで悠里なんだ? あいつは俺に付きまとってくるウザいやつだろ。友のカウントには入らん。

 ほら、思い浮かべてみろ。


 自らの友人の姿を……うん……。


「誰もでてこねー……」


 やばい。友達『一人』もいないじゃん。確かに今日までなんか変につっぱってたところとかはあったかもしれない。でも、いるだろ普通? 『一人』くらいはさ。友達って言うか一緒によく話すやつが。なんで『誰も』いないんだよ。


「……茶番はこれくらいにしよう……」


 もう認めるしかないか。やつが……愛崎悠里が、俺の唯一の友達だったということを……。


(よかったな。今日、初めてお前のことを友達だと思ったよ……)


 自分の中で悠里に対する評価が少し変わったところで、再び昨日のことを考え始めた。


(昨日の俺か……。昨日の俺は確かに中二臭かったが――)


 それでも、一つだけ本当なことはあった。


『俺は、それが……『友達』というのが……いることで自分の大切な他の何かが消えてしまうことが怖いんだ』


 この言葉――。

 これだけは確かに事実だ。

 自分の大切な何か……。それはまだ分からないが、きっとこの答えも、この先の真実にあるんだろう。

 だから、俺はそれを知るまでは少なくとも――


「友達ってものに希望を持っていたいと思う」




 その後も特にやることなく過ごしていると、一つあることを思い出した。


「そういやゲーム……」


 やってなかった……。というよりも、買ってから結構あわただしい日々を送っていたからな……。しかし!!


「そんなのはもはやただの言い訳! ゲームのユーザーとしてあるまじき行為!」


 そう言ったのもつかの間、一瞬にしてゲームはスタンバイされた。

 ……さあいくぜ。今日はやりまくってクリアまでもっていくからな……。




 早速やっているとふと思った。


(そういえば、まだ買ってから三日なんだよな……)


 三日といえば、俺に言わせればとっくにクリアしてなければならないが、そっちは関係ない。言いたいのは、この三日という時間がとても濃いものだったということだ。

 蘭に会って。

 蘭の心を踏みにじって。

 最近変な夢見るなーと思っていたら、大切なこと思い出して。

 母さんに会えて。


 心の変化があった。

 俺は本当に、この三日ですごく変われた気がする。


「ってうお! つよ!」


 いきなり強敵が現れた。

 なんだこいつ……明らかに今の俺のパーティーで倒せるレベルじゃねー!


「おいおい嘘だろ!? まだ結構序盤じゃねーか。それなのにこんなパワーバランス崩壊してんの出んのかよ」


 さすが鬼畜なレベル設定を施されてることで有名なシリーズなだけあるぜ。


「うおー! やったるぜ! 燃えてきた!」


 その後俺は、一睡もせず徹夜でゲームをクリアしたのだった……ってやりすぎだよ俺。


(九時だろ始めたの……)

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