七夕のおねがいごと
生まれつき体がよわく、長い間この田舎の病院ですごしているわたしにとって、すだれのむこうの世界は、キラキラかがやいてみえていた。
お庭が、少しさわがしい。
看護士さんにきいてみたら、七夕がちかいから、病院のみんなでおそとの笹の葉に短冊をかざってるんだって。でも、わたしの体は日光によわいから、おそとにはでられない。みんながたのしそうなのに、一人だけ病室にいる。
この病室の窓には、すだれがある。窓をあけたときに、わたしの体に日光があたらないようにって、院長先生がつけてくれたの。
でもそれのせいで、おそとにでられないわたしは、お庭の景色さえもぜんぜんみれなくなってしまった。すだれは窓の外側についてるから、わたしだけじゃ勝手にどかすこともできない。
「遥ちゃんはなにか短冊に書きたいことある?」
そういって、看護士さんはなにもかいてない短冊とペンをわたしにくれた。
わたしのおねがいごと。そんなのずっときまってる。
それは――
七夕の日。
「ハルちゃーん!」
「え?」
病室のドアがあいた。すると同じ病院に入院してる明くんが、小さな笹の枝をもってやってきた。そのあとにも「はるかちゃん」「はるかー」って、わたしの名前をよびながら、おなじ病院の友達が何人もはいってきた。
「みんなどうしたの?」
「ハルちゃんの願いごとを叶えにきたんだよ」
って、明くんはそういうの。でも、わたしのおねがいごとって……
「ほら、みて! 庭の笹の枝、少しだけもらってきたんだよ! 短冊もついてるよ!」
よくみると、笹の葉にはいくつか短冊がついていた。わたしのかいた短冊もある。
「しってる? 笹も短冊も、七夕の日に外にかざるものなんだよ」
わたしには、明くんが何をいおうとしているのか、よくわからない。
だってわたしのおねがいごとは……
「おそとで、みんなとあそびたい」
「うん。だから、笹も短冊ももってきたから、ここはいま、外なんだよ!」
「え?」
さすがにそれはちょっとむりがあるとおもった。
でも――
「さあ、みんなであそぼ!」
それでも、みんながわたしのおねがいごとをかなえようとしてくれた。
それだけで、とってもうれしかった。