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そして始まる或る男の独白。
「白。今日も来たよ。」
そういうと、彼女はいつも優しく笑う。
白い髪を揺らして笑う。
そんな彼女はどこか浮世離れしていて、自分と同じ人間ではないように思えてしまう。
「いつも、ありがとう。」
彼女の鈴のように透き通る声に頭がくらくらした。
彼女はいつも縁側に佇んでいる。
縁側で優しく、寂しく空を見上げてはお茶をすする。
時折、家の前の道に目を向けては通り過ぎていく人々に慈愛に満ちた目を向ける。
それは、まるで子供の成長を見守る母のように優しい。
そしてそれは、老若男女を問わない。
「今、お茶を淹れよう。今日は玄米茶にしようか。」
彼女は透き通るような声をして、透き通るような姿をしている。
時折、本当に透き通っているような錯覚まで覚える。
なのに、彼女の口調はどこまでも力強い。
そして、儚い。
結局、彼女は脆いのだ。
脆いから、守りたい。
守りたいと願うのに、彼女は拒む。
この手に無理に閉じ込めたいとさえ、思う。
なのに、つかめない。
彼女は奇麗だ。
なのに、俺の腕におさまらない。
簡単に掴めそうで掴めない。
俺を散々煽っておきながら、彼女はするりと通り抜けていくのだ。