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第肆話 夢中の伝言と真っ赤なコート

 ――波の音が、聞こえる。

 気づいた時、僕はぽつんと浜辺に立っていた。

「……ここは……?」

 辺りを見回す。

 前方にはどこまでも広がる碧い海。

 左右には白く輝く砂の浜。

 そして――

「……なるほど」

 背後には、鬱蒼うっそうと茂る原始林が広がっていた。

「……夢、ね」

 それも昨夜の続き。

「考えられるのは……」

 僕はもう一度周囲を見渡し、近くにある岩場へと歩いて行った。

 そして、近づくうちに確信する。

 ――やっぱりだ。あいつ・・・がそこにいる。

 僕は岩場に辿り着くと、その岩の影を覗いた。

 そこには人の顔をした巨大な魚が転がっており、僕はこちらに向いていたその瞳と目が合った。

 一瞬、かつてその口から紡がれた言葉が頭をぎる。

「久しぶり」

 僕は思い出したそれをすぐに頭の隅へ追いやると、目の前の彼に向かってそう言った。

「相変わらず、僕の夢では顕現するの難しいみたいだね。ばく

 獏はその言葉を聞くと少しの間瞳を閉じ、そして初めて口を開いた。

「……そうじゃの。流石のわしでも己より力の強い者の夢には、そこの中の身体を使って何とか干渉できる、という辺りが精一杯かの」

 翁のようなしわがれた声で、獏はそう答える。もちろん、この声も彼本人の声ではなく、今彼が使っている・・・・・身体の物であった。

「で、今回はなんだい? 誰から何を頼まれた?」

 僕は傍の岩に腰掛け、そう問いかける。

白夜びゃくやからじゃ」

「……白夜?」

 予想外のその名前に、思わず僕は聞き返した。

 ――白夜。

 僕の数少ないいにしえからの友の一人で、妖怪である。先日赤沼町に帰ってくるまでの百年程は彼女の屋敷に居座っていた。

「白夜って、お前……。まだ別れてから4日と経ってないぞ?」

 獏はふうむ、と一つうなり言った。

「そんな事は儂ゃ知らん。ただ、わざわざ儂を探し出し、ぬしに伝えろとそう頼んできたのじゃ。余程主の耳に入れておきたかったと見える」

 今度は僕がうなる番であった。空を見上げて片手で顔を覆う。

「マジかよ……」

 もしかしなくても厄介事じゃないだろうな。僕は胸の内でそうため息を吐くと、再び獏に目を向けた。

「……で? 内容は?」

 獏はそんな僕を相変わらず感情の読めない瞳で見つめると、少ししておもむろに口を開く。

「――気を付けろ。最近になって突然、新生怪異の動きが活発になってきている」

 そこで獏は一度口をつぐみ、もう一度僕の瞳を覗き込んだ。

「――新大和会シンヤマトカイの残党が、動いているかもしれない」

 ……どくん、と。

 心臓の鼓動が高鳴った。

「……それだけ?」

「……以上で、貰った言伝は終わりじゃよ」

 僕の問いかけに、少し遅れて答える獏。

「あちらになにか返すかい?」

 息を吐き、少し心を落ち着かせる。僕はその問いに頷いた。

「頼む。覚えとく、と、それに、ありがとう。あと、そっちも気をつけろ。そんだけ伝えといて」

 あいわかった、と獏は首肯する。

「ところで、この夢はどうかの?」

 唐突にそう言うと、獏は辺りをなにかおいしそうな物でも見るような目で眺め始めた。

 そして、その様子に僕は苦笑を浮かべる。

 何故か会うのは常に言伝のやり取りの時ばかりであるため、つい忘れてしまいそうになるが、そういえば彼は“獏”だった。

 夢を喰う、伝説上の生物なのだ。

「毎度毎度、飽きないね」

 なんとはなしに、ふと座っている岩の表面を撫でる。

「でも、こいつはやれないよ。これは、僕が持っているべき記憶ものだ」

 その時、傍で水の跳ねる音がした。

「そうか」

 獏の残念そうな声が響いた。

 水の中、何かが跳ねる音が続く。

 僕は視線を岩に向けたまま、そちらを見ない。

「……またな」

 そして、跳ねる音がぴたりと聞こえなくなった。

「……それにしても。白夜の奴、ありがたいけど、やっぱり内容は厄介事関連だったなあ」

 岩に座ったまま、空を仰いでそう呟く。若干恨みがましい声音になってしまうのは仕方がない。僕はこれからは平穏で平凡な学生生活を送るのだ。正直、もうオカルトとは関わりたくないのだ。

 ふと、段々に周囲の風景が崩れ始めたことに気付く。獏が退場することで、一時的に引っ張り出されたこの夢が、終わりを迎えようとしているのである。

「……夢、か」

 僕はふと、先程獏に再会した時、突然頭に過ぎった言葉を思い出した。

 今回獏の使っていたあの身体の、本来の持ち主がかつて僕に言った言葉。

 崩れる景色と共に薄れゆく意識の中で、最後に僕はその言葉を思い浮かべる。

 ――殺してくれ。

 2600年前。あいつは開口一番にそう言った。


     ◇ ◆ ◇


 この町に帰ってきて、早くも1週間が経とうとしている。いや、正しくはまだ今日で6日しか経っていないのだが、明日で7日が経つ。ほぼ1週間だ。

 また、それは夢の中にて獏から忠告を伝えられてから1週間が経つ、ということも意味する。

 今日までの生活を思い浮かべる。

 特にこれといって何かが起きることもなかったと思う。あえて言うのなら、高校でいつも一緒につるんでいたメンバーの内の一人が、今週はずっと欠席だったのが少し気がかりなことぐらいと、あとは、今になってよく見てみると慧が意外に法力を有していることに気付き驚いた、ぐらいか。とりあえず彼の前では今後絶対に霊的な力を使わないぞ、と心に誓った。

 まあ、何事もないのは結構である。平凡で平穏な学生生活を求めるこの僕には、事件性とか怪奇性とかは全く必要ない。

 今日は7月21日。

 多くの学生の安息日――土曜日である。

 と、いうわけで、かくいう僕も若者らしく(正しくは外見のみが若者)、現在は街へと繰り出していた。

 ――主な目的は、先日破損した窓ガラスの購入。ちなみに破壊ではない。あくまで破損である。

 今朝起きた時、さすがにいつまでも段ボールとガムテープじゃ嫌だなあ、と思ったのだ。

「……それにしても」

 目立っている。

 何が、でも、誰が、でもない。

 現在進行形で、僕が目立っている。

「……何故だ」

 先程からちらちらとこちらを覗き見る人々の視線が痛い。

 何故だ……?

 学校でも影の薄いキャラで通っているこの僕が、以前(2600年前)の班活動の際「あれ、おまえいたっけ?」とナチュラルに班長に問われたほどの実力を有するこの僕が、何ゆえ、何ゆえ現在こんな街中で目立っている……!?

 そして僕はその場で何十分と頭を抱えてうなり続け――と、いうことは勿論ない。こんなこと、考えるまでもなく一目瞭然である。

「――やっぱ、この恰好か」

 僕はそう呟くと、傍のショーウィンドウを覗き込み再度己の恰好を確認する。今日は休日なので、今僕は紺の着流しに裸足で下駄、という非常にラフな和装をしていた。ちなみに蛇足だが、その格好の上で更に普通のリュックサックを左肩にかけているので、少々ちぐはぐした印象を受ける。もっと言えば、周囲は完全に現代モダンな街並み。

 ――今の時代、やはり和装の人は珍しいのか。

 しかしそう考えて、僕は非常にやるせない気持ちにさいなまれる。大体、数十年前までは洋服ではなく、今の僕のように和装が普段着であったのだ。それなのに、時代の流れというだけでここまで変わってしまうのは、少し悲しい気もする。

 ……いや、まあ、この時代を2600年も心待ちにしていた僕が言うのもなんだけれど。

「ま、気にせず行くか」

 伊達に長生きはしていない。僕はそう気持ちを切り替えると、好奇の視線にさらされながらも、涼しい顔を維持して歩いて行った。

 大体、これは普段着だ。僕にとって恥ずかしがる要素が見当たらない。

 ――カラン、コロン。

 下駄が、心地よく鳴り響いた。


     ◇ ◆ ◇


 ……………………………………。

 …………………………。

 …………………。

 静寂。静寂だ。

 闇の支配するその世界で、男は一人目覚めた。

 ……ここはどこだ。俺は、誰だ。

「……嗚呼、そうか」

 全てを思い出す。男は笑みを浮かべる。

「――お館様」

 遥か遠くから、己を呼ぶ声が聞こえた。

 報告を聞く。

「……して、どうだった?」

 声が降ってくる。

 そして。

 生と死と、主に死しか存在せぬその闇の世界で、男は一人、静かに嗤った。


     ◇ ◆ ◇


「ねえ、知ってる? 最近広まってる噂」

「え、なになに? 知らない。教えてよ」

「あ、私は知ってるよ。あれでしょ? とうとう二組の後藤と佐倉が別れた、てヤツでしょ?」

「違う違う。学校じゃなくて、今町全体に広がってる怖ァい噂」

「ん、あ、そっち? 知ってる知ってる。小学の弟が言ってたわ、たしか」

「ええ、なになに? どんな噂なの?……えと、怪談、みたいな?」

「そうそう。怪談」

「でもさあ、正直あれ古臭くない? 私らの親の世代でしょ? あれ一番流行ってたの。あれはないわあ」

「え、古臭い……って?」

「はは、まあ、たしかに古臭くは感じるけど……マジらしいよ」

「は? マジって……マジ? ありえないんですけど」

「ねえ! だから、その噂って結局なんなの?」

「ああ、ごめんごめん。そんな怒んなって」

「私もごめんね。えと、それで噂なんだけど……最近、出るらしいのよね」

「ああ。どうも、夕暮れ時に一人で人気のないトコ歩いていると……出るらしいね」

「「――口裂け女が」」


     ◇ ◆ ◇


 夕焼けが町を染める。

 昼が終わり、夜の帳が下りる時。その、瞬間に現れる一時いっときの幻想。

 14歳程に見える少年――佐藤博さとうひろしは、橙色に染められた路地裏を一人歩いていた。

「……早く帰んねえと。すぐに暗くなっちまうしなあ……」

 頭上を見上げる。建物と建物の隙間に見える小さな空は、もう少しで夜だと明確に告げていた。

「……はあ」

 大体、恭弥の野郎はなんなんだ。博は一人ぶつぶつと呟きながら路地を進んでいく。

 この路地は、彼の自宅への近道であった。多少薄暗くとも、幼い頃から何度も使用してきたこの道は、彼にとっては恐怖の対象にはなりえない。

「……ん?」

 ふと、博は前方に人が立っていることに気付いた。

 女の人だった。

 長い黒髪を垂らした背中を、こちらに向けている。薄暗いことも相まってよくは見えないが、どうやら赤いコートのような物を着込んでいるらしいことは分かった。

 ――こんなところに。珍しいな。

 この路地裏は薄暗いが、狭くはない。人が二、三人はなんとか並行して歩けるぐらいの幅はある。

 博は多少いぶかしみながらも、そのまま女の傍を通り過ぎようとした。

 その時である。

「……え?」

 がしり、と。

 博は女に左肩を掴まれていた。

 ――え? え?

 そして、困惑した博が後ろを振り向くと。

「……ぃっ!?」

 目の前。息のかかるほどすぐそこに、女の顔が肉薄していた。

 初めて見る女の顔は、はっきり言って怖かった。

 目はぎらぎらと輝き、その顔の半分を覆うマスクには、何故か口に沿った形に血がにじんでいた。

 ――な、なんなんだ!?

 博は困惑した。と、そこで先日学校で聞いた噂話を思い出す。

 ――最近、口裂け女が出るらしい。

 友人は、そう言って笑った。ま、ただの噂だろうけどね、と。

 しかし。もしそれが本当だとしたら――?

 博の背に、冷たい汗が流れた。

 ――この状況、限りなく笑いごとじゃなくね!?

 思えば、最初女を見た時点で気づくべきだったのだ。

 真夏なのにコートを羽織る人間がいるか? 答えは否。そんな奴いるわけない。

 ……と。その時だった。

「――わたし、きれい?」

 マスクがなければ間違いなく博の顔に息がかかるようなそんな位置。そこで、女は突然尋ねてきた。

 その目は、何の感情も宿していない。

 一方、博は。

 ――やばいやばいやばいやばい! 来ちゃった来ちゃったよ!? 有名な台詞来ちゃったよ!?

 完全に混乱していた。

「わたし、きれい?」

 感情のこもっていない平坦な抑揚で再び問う口裂け女(ほぼ確定)。

「わたし、きれい?」

 ――なんとかせねば! なんとかせねば!

 ここ赤沼町に生を受け、はや14年。男、博はただただ助かる道を考えた。

 きれいだと答えても、マスクを取った後に殺される。

 きれいじゃないと答えたら、もちろん一瞬で殺される。

 ――どうする? どうすればいい?

「わたし、きれい?」

 そして彼は、更に尋ねてくる口裂け女を一瞥すると覚悟を決めた。

「……な、なあ……」

 震えそうになる声を無理やり抑えながら、出来るだけ自然な動作で口裂け女へと向かい合う。当然、その途中で自然に彼女の右手を左肩から外すことに成功する。また、この時更に自然な風に装いながら微妙に彼女との距離を一歩離すことも行う。

「……なあ。こ、答えるからさ。先におれの質問に答えてくれよ……おれは、どう?」

 彼女の感情の読めない瞳を見つめる。

「……おれ、かっこいい?」

 一瞬、その場の時が固まった、ような気がした。

 正直「ハイ、やっちゃったー!」という気持ちが大きかったが、博はごくりと唾を飲み込むと、どうだ!? と言わんばかりに目の前の女の反応を待った。

 ……ところで、彼がこのようにおかしな行動をとったのにはわけがある。

 彼は、口裂け女の話で、ポマードとべっこう飴以外に助かる方法を知らなかった。しかも、べっこう飴だけでなくポマードも実物を持っていなくてはいけないと思い込んでいた。

 それ故に。

 ――自分が助かるには、前代未聞の離れ業で頑張るしかない!!

 そう、博は思い込むに至ったのだった。

 命の危機を前にして、なんとも愉快な少年である。

「…………」

 口裂け女はまだ黙っている。

 彼はひたすら待った。逃げる隙チャンスが現れる時を。

 そして、やっと。

 ゆっくりと口裂け女の顎が動く。博はそれを見ると、すぐさま走り出せるように腰を落とす。

 口裂け女が喋った。

「わたし、きれい?」

「…………え?」

 ――……まさかの完全無視スルーですと!?

 博は口裂け女のレベルの高さに戦慄した。何のレベルかは、彼も知らない。

「……くそっ!」

 しかし。既に肩を口裂け女の拘束から解き放つことには成功していた博は、そのままそこから駆け出した。

 ――逃げろ。逃げろ。ここを抜けるまで走り抜け!

 幸い、走ることは得意だ。

 100メートル走の今までの最高記録が11秒ジャストだったことが、彼の唯一の自慢だった。

 ――100メートル12秒の口裂け女よりは早いはず!

 そう、博は確信していた。

 路地裏の出口まであと少し。

 ――さて、どれくらい引き離しただろうか。

 必死に走りながらも、どこか余裕のある表情で後ろを振り向く博。

 と、その前髪をヒュンッと音を鳴らして過ぎ去った何かが持ち去った。

 見れば、それは鎌だ。

 顔を上げる。

 すぐ後ろで、口裂け女がその耳まで裂けた大きな口をニタアッと笑みに歪めた。

 彼は知らなかったのだ。口裂け女の速さは、他に100メートル5秒だとも言われていることを……!

 どこまでも愉快な男である。

「…………ども」

 とりあえず挨拶してみる博。

 お返しに鎌を振りかぶる口裂け女。

 その鎌をかすりながらもなんとかける博。

「いやああああああああああ!!」

 人間、死ぬ気になれば何でもできる。勿論、本人の限界(11秒/100メートル)を超えることだって……!

 博は地を蹴った。

 ――速く、速く……! もっと、速く……!!

 後ろから追いかける口裂け女のハイヒールの音が路地裏に高く響く。

 背後から襲ってくる鎌が、体のあちこちにかする。

 もう、彼は既に満身創痍であった。

 ――疲れた……もう……走れ、ない……。

 と、密かに弱音を吐いたその時。博は石につまずいてその場に倒れこんでしまった。

 ――立ちあがれ、ない……くそ……。

 同時に、彼は自分が今倒れているのが路地裏を抜けた場所であることに気が付き喜びそうになるが、一瞬でそこが元々路地裏と同じくらいに人気がない場所であることにも気づくと、がっくりと肩を落とした。

 背後から、悠々と歩いてくる口裂け女の足音が聞こえる。

「誰か……助、け……」

 無意識にそう呟いたその時。

 博は、傍に誰かが立っていることに気が付いた。

 ――もう、駄目なのか……。

 せめて彼女がほしかった、と微かに呟く。

 最後の余力で彼は傍に立つ人物を見上げる。非常に怖かったが、せめて自分を殺す奴くらいは最後に見ておこう、という彼の意地だった。

 そうして、佐藤博が意識を失う直前に見たのは、鎌を振りかぶる口裂け女ではなく、苦い顔でこちらを見下ろす何故か着物姿の高校生であった。


     ◇ ◆ ◇


「……おいおい……」

 夕焼けに染まる帰り道。

 僕は目の前に突然飛び出てきた少年を見て、思わず呟いた。

 少年はそのままその場に倒れこみ、微動だにしない。幸いどれも浅そうだが、体中に刃物で切り付けられたような傷があった。

 ――夕焼けの中、血だらけで路地裏から飛び出してきた少年。

 明らかに非日常なワンシーンだ。この僕が思わず苦い顔をしてしまったのはしょうがないと思いたい。

「大丈夫かー? おーい?」

 とりあえず傍へ寄って揺さぶってみるが、反応はなかった。

「……どうしようか、これ」

 やはり、まずは病院だろうか。そう呟いた時だった。

「……っ!?」

 僕は一瞬で少年を抱えると、一気に5メートル程横へ跳んだ。

 同時に、先程僕らがいた場所へ一振りの鎌が突き刺さる。

「……マジかよ」

 僕の目の前。そこに、鎌を片手にゆらりと立っていたのは赤いコートに身を包んだ、口が耳まで裂けている女だった。

 ――どう見ても、都市伝説にある「口裂け女」の姿である。

「……勘弁してくれ」

 僕のその呟きは、誰に聞かれるでもなく風に吸い込まれていった。


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