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多分これは、強くてニューゲームな物語  作者: 犬が西向きゃ尾は東
第一幕 大和編

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第拾弐話 転校生と小さな波乱

 暗い場所。湿気がひどい。空気もこもっている。

 ここは――何処だ。

 目覚めた彼は、そしてゆっくりと身を起こそうとして、己が満足に動けぬことに気がついた。

 おかしい。彼は思う。

 そも、なぜ己はこんな場所に横たわっているのか。

 記憶が混濁している。なにも、わからない。

 ――と、そこに音が響いた。

 軽やかな曲が、重々しい静寂を引き裂く。

 見れば、すぐ傍の闇が消えていた。否、小さな光源が発していた。

 彼はそれを目にするのは初めての筈だったが、しかしそれが何なのかは、見た途端に理解できた。

 小さな、掌ほどの機械。これは――携帯電話、だ。

 そして、同時に。

 彼は己が何であるのかをも、思い出した。

 ――嗚呼。

 ――なんという、ことであるか。

 彼は静かに、絶望した。


     ◇ ◆ ◇


「どうなってんだ、こりゃ」

 思わずぽつりと声を漏らす。理由は言わずもがな、である。今、教卓の横にて自己紹介をしている転校生のことだ。

 名は――鬼橋柚葉、というらしい。

 祓い屋の少女。

 たしか師族シゾク名は――《緋崎》、だったか。

 緋崎。

 なんか聞き覚えがあるような気もするが――まあ、今そんなことはどうでもいい。僕も過去に一応術師としての生活を送っていたのだから、祓い屋の師族名くらい聞きかじるだろう。

 そんなことよりも。

 問題は――なぜ転校してきたのか、である。

 来年の春などであるならば、一応は納得できないことも……ないわけではない。

 どちらにしても――昨日の今日。

 これはどう考えても。

「……僕の監視役、か」

 ぼそりと呟く。

 暫定ではあるが要討伐対象からは外れたらしいとはいえ、未だに僕が要注意の古妖であることには変わりがないのだ。

 念のための監視役。

 逆にそれしか考えられない。わざわざ人手を割いて、大変ご苦労なことである。

 というより、昨日から今日までのこの僅かな時間で、よくもまあ転校手続きなんかを済ませることができたのだろう。実はそこの絡繰りが一番気になる。

 ふと見れば、すでに教室の前では鬼橋が自己紹介を終え、担任主導による彼女への質問タイムが始まっていた。

 どんどんと矢継ぎ早に質問されていく中、鬼橋は静かに、そして端的に答えていく。

 なんでこんな時期に?――親の急な事情で。

 ……完全にマニュアルか何かに則ったような返答である。

 ――こりゃあ、聞かなくてもいいか。

 そう思い、騒がしい教室を一旦意識の外へと追い出した。そうして窓から見える青空を眺めながら、ぼうっと今後について思いを巡らす。

 すると、やがてある結論へと達した。

 ――なんにせよ、彼女の方も不用意に接触してくるようなことはない。

 そりゃそうだろう。考えてみれば、なんでわざわざ仲良くせにゃあ、ならんのだ。祓い屋と妖怪。昨日は成り行きで共闘したとはいえ、所詮は敵同士だ。相容れない。それに、監視は離れた場所から行うだけで十分である。

 ならば。

 ――彼女一人くらい監視役が付いたって、別に僕の予定する穏やか高校ライフに支障が出る訳ではなさそうだ。

 監視するだけで、別に僕が妖怪だと言いふらすようなことはしないのだ。

 だから。

 ――ま、ほっときゃいいかね。

 気にせずスルーしていこう、そうしよう。

 とりあえず対処方針が決まる。意識を教室へと戻せば、転校生への質問タイムも一段落したところであった。

「よし。まあ、何度も言ったが、皆仲良くしてやれよ」

 担任の言葉に、元気なクラスメイトが数人返事を返す。うむ、と頷くと、彼は教室を見渡してから唐突に切り出した。

「ところでな。実は先生、鬼橋のことは今朝初めて校長から聞いたんだ。驚いたよ。どうも連絡ミスみたいなものがあったらしいんだが、正直よくわからん」

 そりゃあ、別に連絡ミスがあったわけじゃなくて、本当に昨晩唐突に決まった転校だろうし。僕は心の中で小さく呟く。

「まあ、話を戻せばだ。急な話だったもんで、実は鬼橋の席はまだ用意できてないんだわ。幸いと言っちゃあなんだが、今日は香山が病欠してるから、とりあえずその席を使ってもらう。ええと、鬼橋。ほら、あそこだ」

 そう言って、担任は教室の後ろ側にある空席を指さした。

 と、いうか。

 ぶっちゃけ、僕の隣の席だった。

 ――なぜ風邪などひいた、香山ああああ!!

 胸の内で叫ぶ。

 クラスの男子が、羨ましそうな目でこちらへ振り向いているが、代われるものなら代わってやりたい。

「――よりにもよって、隣かよ……ッ」

 小さく呟く。が、次の瞬間には「まあ、どうせすぐに新しい机が用意されるだろうし、隣の席なのは多分今日一日だけだろう」と、少々腹をくくることにする。思い切りの良さには自信のある僕だった。

 しかし、その更に次の瞬間。僕はどうも現状というものを甘く見過ぎていたらしいことを、思い知らされることになる。

「ああ、小杉田健の隣ですね。わかりました」

 当の鬼橋が、なんかぽろっと言ってくれてしまわれたのである。

「――え?」

 誰の漏らした言葉だったろう。決して大きくはなかったはずのその呟きが、教室中に響き渡る。

 シーン、と。

 教室が、静まり返っていた。

 そして、数拍。

 ワッ、という風に一斉に騒がしくなった。

「え、なに? 小杉田って転校生と知り合いなの?」

 振り向いた前席のクラスメイトがそう聞いてくる。曖昧に誤魔化しながら、鬼橋を密かに睨む。

 彼女自身、「やっちまった」みたいな表情を顔に浮かべていた。

 ――もしやこの子、あの狐がいないとダメな子なのだろうか。

 僕の中でそんな疑惑が持ち上がりつつあると、突然がたん、という音が響き渡った。

 見れば、一人のクラスメイトが机に手をつき立ち上がっている。――いや、というかなんというか、何を隠そう、それは我等が団長神谷葵であった。

 再び、教室が一気に静かになる。

「あ、あんた!!」

 葵のそのどこか慌てたような声は、静かな教室へと荒々しく響き渡る。

「健とは! ど、どういう関係なのかしら!?」

 お前もか。

 やっぱり、とそんなことを胸の奥底で呟きながら、僕は静かにため息を吐いた。

 同時に、息を吹き返したように、再び教室中がざわめき始める。

「え、なに、修羅場?」

「へえ。小杉田って、女に興味ないのかと思ってた」

「うん。不死川くんにしか興味ないのかと思ってた」

「二股か……いえ、不死川くんも含めると三股か。最低ね、小杉田」

「ちょっと待って。そういえば私、この前女子中学生と歩いてる小杉田見たよ」

「え、なにそれ。もしかして四股なの!?」

 ひそひそひそひそ、とそこらかしこで交わされる会話。

 なんということだ。あらぬ誤解が生まれてらっしゃる。

 そして、なぜ慧が含まれているのかも、小一時間ほど問いたい。

 ――僕には断じて男色の気などないからなッ!! 慧はただの友達だ!!

 胸の中で叫ぶ。しかし、そこで僕はふとその台詞に既視感を覚えた。

 ――あれ?

 どういうことだ、と呟こうとして。ふと蘇った光景に、僕は唐突に思い出した。

 ――そうか。あの頃か。

 今から1000年以上も前、僕が平安京で晴明と暮らしていた頃。つまるところ、僕が晴明の屋敷に居候していた頃のことである。

 ある日、僕はふと女中らの立ち話を聞いてしまったことがあるのだ。

『やっぱり、小杉田様が受けなのかしら』

『いや、あえての安倍様が受けということも……』

『いやいや、安倍様はやっぱり攻めでしょう』

 鳥肌が立ちました。

 ――ああ、それを聞いてからしばらく、少し晴明と距離を置くことにしたんだっけな。

 深く考えると色々精神衛生上よろしくないと直感するので、懐かしいことを思い出した……、とそれだけ思って無理やり頭から追い出す。

 と、そのとき。

「ええい、小杉田! なんとかしろっ!」

 担任の声で、僕の意識は現実に呼び戻された。

 見れば、なぜか葵が教卓前まで歩み出ている。

 何があったのだろう、というか何が起こってしまうのだろう。

 何故か二人とも睨み合っているし。――いや、多分葵から仕掛けて鬼橋がそれに反抗しただけなのだろうが。

 互いにガンを飛ばすクラスメイトと転校生に、教室内の囁きもついに熱気を孕み始めた。

 ――一体、どうしろと。

 担任に目を向けるが、すいっと視線をそらされる。

「…………」

 ――めんどくさいなあ、めんどくさいなあ。僕の平穏を返せ、鬼橋!

 そんなことを考える。

 そのときだった。

 キーンコーン、と。

 チャイムが鳴った。

 一時限目開始の合図である。

 どうも僕は、助かったらしい。


     ◇ ◆ ◇


 休み時間になった。

 二時限目前の、次の授業の準備をするための時間である。

 授業終了を告げるチャイムが鳴ってから、未だほんの十秒も経っていないのにも関わらず、現在僕の机は葵ら三人によって囲まれていた。

 逃げ場なし、という奴か。

「説明してもらいましょう」

 目の前の葵がそう切り出した。どういうわけか、少々目が据わっている。なんか怖い。

「いや、そう言われても」

 あれは、小学校時代のクラスメイトです。それ以下でも、それ以上でもありません。

「随分と久しぶりに会ったので、驚きました」

 とりあえず、一時限目の内に考えておいた設定を言ってみた。

「……なんで突然丁寧語になっているのかしら?」

「おっと」

 しまった、つい――などと心の中で続ける。

 どうも今の僕は、嘘がそこまで上手くないらしい。随分と細かいところまで真似ていたのだな、と己の化物性を改めて認識する。

「……ねえ、なにか誤魔化しているでしょう?」

 半目でこちらを見下ろす葵。何ともしがたい威圧感がし掛かってくる。すがるように他の二人へ目を向けるが、慧とチビタは、彼女の横で素知らぬ顔をしているばかりであった。薄情ものである。

 しかし、そんな状況で。

 救いの手は思わぬところから差しのべられた。

 なんと、当の鬼橋本人がこちらへと割り込んできたのである。

「小杉田君の言っていることは本当です。私と彼は、ただの小学校時代の級友――いえ、ただの知り合いという認識で大丈夫です」

 そう言うと、鬼橋はちらりとこちらに目を向けた。

 目が合うが、それもすぐに葵の方へと移す。相変わらずとして、何を考えているのかわからない女である。

「鬼橋さん、だったわね」

 鬼橋に、葵がその綺麗だが、少々きつい声を向けた。葵の標的が、僕から鬼橋へと移る。

「それは、本当――なのかしら」

「ええ、本当ですとも」

「本当に――それだけ、なのかしら」

「それだけ――ですね、はい」

 葵と鬼橋が見つめ合う。数瞬の間が開いた。

 折れたのは、葵だった。

「……まあ、いいわ。それで納得してあげる」

 少々不満げながらも、そう言う葵。

 助かったぜ。そう密かに胸を撫で下ろしながら、ふと僕は思った。そもそも、なぜ葵はこうまで鬼橋と僕の関係に突っ込むんだろうか。さっきも誤魔化すな、とか言っていたし。

 ――もしや、鬼橋が祓い屋だということに、気づいているなんてことは……ないよな。

 いくら将来有望でも、未だ新人巫女の域だろうに。……まさかね。

 そんなんじゃあ、いつ僕が人外だと看破されるか分からなくなってしまうじゃないか。

 僕が一抹の不安を覚えたところで、その休み時間は終了した。


     ◇ ◆ ◇


 今日は火曜日なので、授業は六時限で終了する。

 現在時刻15時30分。

 放課後だ。

「さあ、次の調査に向けて会議を始めましょう」

 僕らの他には誰もいなくなった教室で、そう声高らかに宣言する者がいた。

 葵である。

 今日も誰一人用事がなかったため、赤沼探偵団の活動が始まったのだ。

「いや、ちょっと待とうか」

 そして、そこに異を唱える者がいた。

 僕だった。

「調査って……昨日、行ってきたばかりだよね」

「そうね」

 間髪入れずに頷く葵。

「あれ、そんな頻度で行くものだっけ? 調査」

 僕の記憶がおかしいんだろうか。多くても一月に一、二度程度だったと、そう覚えているのだけれど。

「ふふん。実はね、理由があるの」

 葵は自慢げにそう言うと、そのたいして育っていない胸を張る。

「……今、誰か失礼なこと思ったでしょ」

「気のせいじゃないかな」

 危なかった。今日の葵は感が鋭い。

「まあ、いいわ。実はね、先週の修行のときに聞いたのだけれど、最近、怪異事件が勃発しているみたいなの」

 ぎくり、とした。

「はっきり言って、この勃発頻度は異常といっていいわ。私たちの町は、私たちで守りましょう」

「たしかに昨日、マジもんに当たったばかりだもんな」

 強く言う葵に、静かに聞いていた慧が追従した。

 余談だが、彼らは、昨日の怪異について自分たちが独力で解決したと思っている。そのため、怪異との戦闘について少々の自信を強くしている節があった。――いや、逆に裏で僕が解決したのではと疑われるよりは幾分もマシなのだが。

「そんなに最近、多いの?」

 チビタが問う。頷く葵に、

「そうか。なら、スクープのチャンスかも」

 彼はデジタルカメラを取り出してそう言った。

「チビタ。無理しなくていいぜ。昨日、震えてたじゃないか」

 慧がそう声を掛けるが、チビタは首を振って、

「みんなが行くなら、俺だけ行かないわけには行かないよ」

「泣かせるねえ」

 慧に首へ腕をまわされていた。

 葵が、こちらへ向く。

「健。あなたも、行くわよね?」

 数瞬の間を置いて、

「勿論だよ」

 僕は、そう言った。

 ――本当に、ため息をつきたくなる。

 しかし、まあ。

 新大和会が動いている可能性が高い以上、共にいて数少ない友人の身を監視している方がいいだろうことは確かだった。

「それで、次は一体何なんだ?」

 チビタに腕をまわしたまま、慧が尋ねる。

 すると葵はその勝気な瞳を光らせ、

「ふっふん。聞いて驚きなさい」

 一拍置いて、言った。

「怪人アンサー、よ」

 その場に静寂が下りた。

 そして数秒後。

「――あの、さ。葵」

 チビタがためらいがちに口を開く。

 慧もどこか居心地悪そうだった。

 一体どうしたのだろうかと僕が思っていると、チビタが言う。

「俺もその都市伝説は知っているけれど、それ、それはさ……」

「たしか――創作、だぜ」

 戸惑いながら口をつぐんだチビタの後を、慧が継いだ。

 ――ああ、そういうことか。

 先程から状況についていけなくなっていた僕も、やっと理解する。

 どうもその都市伝説は、とうの昔に作り話だと告白されている類のものらしい。

 さて、そんなことを知らずに堂々と言った奴は今どんな顔をしているのか。そんな少しの嗜虐心を胸に見てみると、予想に反し、葵は何も変わらぬ涼しい顔で立っていた。

「そんなことくらい、知ってるわ」

 ――え?

 驚く僕らに、彼女はさも愉快そうな顔で続ける。

「でもね、覚えておきなさい。例え作り話であっても、怪異というものは生まれるのよ」

「おい、それはどういう――」

 慧がかみつこうとするが、それは突然の声によって中断されることになった。

「――へえ。なかなか面白いお話をされているんですね」

 バッ、と僕らは一斉に振り向く。

 気がつかなかった。

 円形に集まっていた僕らのその背後に、鬼橋が立っていた。

「あ、あんた、なんで……」

 口をぱくぱくさせる葵に、なにも変わらぬ淡白な表情で鬼橋が言った。

「ちょっと忘れ物をしたもので」

 そう言って彼女がそばの机から取り出したのは、何の変哲もないただのペンケースであった。しかし――僕は、見た。その裏に、一枚の札が張り付けられているのを。

 ――ちゃんと監視してました、ってことか。

 一瞬ちらりと見えたその札に描かれていたのは、おそらく遠見の術式。

 離れた場所――札を張った場所の周囲一定区間を映像として見ることができる効果がある。

 おそらく、僕の放課後になっても教室に居残り続ける空気を見て、咄嗟に机の中へ置いたまま下校集団に紛れたのだろう。

 なんともまあ、仕事熱心なことである。

「ところで」

 学生鞄にペンケースをしまいながら、鬼橋は葵に向けて言った。

「怪人アンサーについて調査する、と言ってましたね」

「え、ええ、そうよ。それが何?」

 無意識に身構える葵に、しまい終わった鬼橋は顔を上げると一言放った。

「やめてください」

「――は?」

 思わず呆けた声をあげる葵。それに、鬼橋は再び淡白な声色で言った。

「だから、やめてください。怪人アンサーの、調査」

 数瞬の間が開いた。

「な、なんであんたに指図されなくちゃ、いけないのかしら」

 口の端をひくつかせながら、葵が問う。

 慧とチビタは、先程からただ茫然と成り行きを見守っている。

 僕? 当然、めんどくさいから僕も傍観である。

「いえ、危険ですし」

「大丈夫、私は強いから」

「そもそも……」

「そもそも――なに?」

 淡々とした鬼橋に、激情の葵がかみつく応酬。それは、鬼橋の放ったその一言で終わりを告げた。

「そもそも、その件については私に依頼が来ていますので」

「――依頼?」

 怪訝そうな顔の葵に、鬼橋が続ける。

「はい。ですから、手は出さないでいただけますか。神谷葵さん」

「……あなた、私のこと」

「はい。大浜神社の巫女でいらっしゃるそうですね。たしかあそこは呪術協会賛同系列だったはずですが――まさか私の邪魔をするなんてことは、ないでしょうね」

 目を見開く葵。

 ついでに、そのそばでは慧がぽかんと口を開けている。……何故だろう、間抜け面の筈なのに、イケメンがやるとそれも愛嬌になってしまう。あ、チビタが写真に撮った。後でファンクラブにでも売りさばくつもりなのだろうか。

「あなた……やっぱり、そう、だったのね」

 ゆっくりと噛み締めるようにそう呟く葵。そして彼女はキッ、と目を向けると、静かに尋ねた。

「鬼橋さん。あなたは――」

 しかし、最後まで言う前に、鬼橋がそれを遮る。

「はい。改めまして名乗りましょう。私は鬼橋柚葉。祓い屋師族、《緋崎》が後継者。日本呪術協会所属の」

 そこで鬼橋は、僕ら全員の顔を眺めてから、言った。

「祓い屋です」

 僕が密かに思ったことを言っていいだろうか。

 ――なんか、どんどん面倒なことになってきたんだけど。


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