それからの日々・・・・・・
「ごめんなさい、ひめさん、わたしのせいで」
その言葉を残して、羊子が自殺してしまった日、わたしは、泣いた。
泣いてみるのも、悪くない。彼女は、清らかでいい子だったのだから。その魂は、きっと、天国に行けたでしょう。
次の日には、早速、彼女の机の上には、心ない行為がなされていた。汚れた花瓶に挿された、枯れた花。吐しゃ物のような、お供え物。羊子の机は、悪意の塊に彩られ、主のいない無残な残骸として、教室中の晒し物にされていた。
そして、当然のごとく、いじめの標的は、羊子からわたしへと、移ることになったのだ。
でも、最初の頃は、それはまだ、可愛いものだった。椅子にばらまかれた画鋲だとか、食事に混入された異物だとか。わたしは、無数の画鋲の上に、わざと座ってみせ、一日中、平然とした顔をしていた。昼食は、ごはん一粒残さず、異物もろとも、たいらげてやった。
それが、あいつらの邪悪に、さらなる燃料を点火するのだと、分かっていながら。
いじめの初歩から、中級を一通りこなし、それが、わたしに何ら、精神的ダメージを与えていないと分からせてやった。
そうして、お膳立てをしてやった。
彼らが、最後の最後、どのような選択をするのか、見てみたかった。
彼らにだって、まだ、救われるチャンスは、あるはずでしょ。
ね、お父様。
どこの町にも、権力者というものがいる。たとえば、それは、大病院の院長だったり、なんたら企業の社長だったり。それが、政治家や、警察の人間だったりということだって、ある。人間が、生きている限り、腐敗はどの場所にだって、起こりえる。
小池俊太郎は、そういった汚れた権力に守られ、好き放題してる屑の一人だった。
お父様の情報網は、世界の隅々にまで行き渡っているのだから、知ろうと思えば、どんな人間の裏情報だって、知ることができる。
こいつは、過去に、小学生の女の子を、レイプしている。そのレイプ事件は、彼の依拠している権力によって、揉み消された。小学生の女の子の家族は、この事件がきっかけで、崩壊し、母親は、精神的苦痛から自殺した。父親と娘は、まだ生きているが、二人とも、精神的には、ほとんど廃人同様の生活をしている。
すべては、小池俊太郎の、身勝手な欲望によって生み出された、悪夢の連鎖だ。
おまえは、こんな奴でも、救う価値があると思っているのか、とお父様に言われそうだが、そうね、どんな屑人間にだって、心のどこかには、神様が住んでいるはずじゃない。
お父様の、大嫌いな、神様が。
だから、もし、小池俊太郎の心に、少しでも、良心のようなものが垣間見えたのなら、睾丸をつぶすくらいで、目を瞑りましょう。
だって、良心なんて、お父様、神様と一緒くらいに、大嫌いじゃない。
あ、そういえば、杉浦功太は、小池俊太郎の、金魚の糞だったわね。でも、お父様が知っている通り、こういう奴のほうが、ときによって質が悪いのも、事実なのよね。自分を守るために、平気で、他者を傷つけるし、悪事に便乗して、おこぼれをもらったりする。
小池俊太郎の影に隠れ、目立たないくせして、やってることは、小池よりも酷かったりする。心の底に溜まった鬱憤を、自分より弱いものへの陰湿な暴力で解消するなんて、程度の低い邪悪だわ。
倉木美穂も、この杉浦功太と、似たり寄ったりのタイプだ。それに比べて、三橋友里恵の邪悪さの純度の高いこと、目を見張るほどだ。
生まれつきの、天性の邪悪性を備えた、まさに、邪悪の女王の名がふさわしい。
お父様、どうして、人間には、こんな存在が生まれてくるのでしょうね。
脳の異常かしら。それとも、これが、人間の本姓なのかしら。そんなことは、ないと思うけど。
三橋友里恵は、とても知能が高い女の子だった。でも、その知能の高さは、すべて、自分の欲望ゲームだけのために、使われた。お父様が、見抜いている通り、彼女は、幼少の頃に、すでに、人を殺すことが平気でできる精神を持ち合わせていた。
そして、邪魔だった、という理由だけで、妹を殺している。事故に見せかけて。
この女だけは、救いようがないかもしれないわ。
それに、三橋友里恵みたいな娘、お父様、大好きだものね。良心の欠片すらない、魂は。
その他の、生徒。いくらかは、人畜無害。いくらかは、傍観者。いくらかは、たまにいじめに便乗する、うすめた邪悪の持ち主。つまり、このクラスの、その他大勢は、いったん、除外してもいいでしょう。もしかして、この中から、将来、大きな邪悪の樹を育てる者も、出てくるかもしれないけれど、そんなこと、わたしの知ったことではないんだから。
わたしも、そこまでは、面倒は見れないもの。
チャトラン、ね、あたなも、そう思うでしょ?




