司祭の治療。
俺はそのままベッドに運ばれた。途中から庭で会った戦士?が俺を抱えてベッドに急行してくれた。
目が開けていられない。頭がクラクラする。周りの状況がなんとなくわかるが対応できない。ひどい吐き気がして嗚咽する。幸いにして吐くものがないようだ。
お姉ちゃんが側にいてくれている。エスナと呼ばれた女の子と戦士?誰かを呼びに行ってくると言って駆け出していった。
「リョウ大丈夫か?」
「大丈夫なの?」
と言って声をかけて俺をさする男女の声がする。
「気持ち悪いー。頭がくらくらするー。目が開かないー」
と俺はなんとか答える。女が額に手を当てる。
「熱は無いようね。こんな事初めてだわ」
「母さん、リョウは大丈夫なの?」
「ボクたちにできる事はない?」
少年二人の声がする。
「うむ、そうだな。ハノンこれは色々呼んだ方が良いな?」
「そうね、これは大事かもしれないわ」
「よし、ロイック、店の者を連れて教会に行きテミス司祭に僧侶を派遣するようお願いをしてきてくれ」
「わかった」
駆け出す音がする。
「ストラはフレドを連れて薬師通りのラクラ薬師を呼んできてくれ」
「かしこまりーフレドー!フレドー!」
と言いながら少年は出ていった。
「ハノンとミシェレルはそのまま看病を。私は店を開けて引き継ぎをしてくるからそれまで頼む」
「わかったわ。ハッセル、なるべく急いでね」
「わかった」
それから女性陣は布団をかけたり、たらいを枕元に置いてくれたり、身体を摩ったりと色々と面倒を見てくれた。なかなか状態は良くならない。
何時間か経ったのだろうか?体感的にはかなり長かったが、父とロイックと呼ばれた少年が一人の男性を連れてきた。
「テミス、早速だが診てくれ」
「わかった。ご家族はしばし離れてくれ」
「わかった。ハノン、ミシェレル、離れなさい」
「「わかった(わ)」」
「いくぞ。神よ、大地の精霊よ。この者の状態を示したたまえ『識別』……なるほど」
「どうだ?」
「子供には珍しいな。重度の混乱の状態異常になっておる。何か要因はわかるか?」
「ミシェレルわかるか?」
「朝から少しおかしな事言ってたわ。ここはどこ?って」
「なるほど。最近病にかかった事はあるか?」
「特にないわ」
「もしかしたら外的要因かもしれんな」
「テミス、それはどういう事だ?」
「魔術か、下級悪魔だな。いずれにせよ今から治療する。治療して良くならないようなら外的要因が原因だと思う。魔術師を呼べ」
「わかった。治療を頼む」
「うむ。神よ、この者の混乱を鎮めたまえ。ささやきーえいしょうーいのりーねんじろ!『治療』」
光に包まれていくのがわかる。同時に頭の中に声がした。
(今はゆっくりお休みを。のちのち事情は説明します)
リーリシアさんの声だった。
その声に安心すると俺の吐き気は、大分治ってきた。頭のくらくらも嘘みたいに無くなった。俺はゆっくりと目を開けた。
「リョウ、大丈夫か?」
父らしき人が頭を撫でながら聞いてくる。
「大丈夫みたい」
「あー。よかったわー」
母らしき人が抱きついてくる。
子供たちがニコニコして、顔を見合わせている。
「どこか身体に異常はあるか?」
司祭服?を着た若い男が聞いてくる。
「わかんない」
「そうか。動けるようになったらお兄ちゃんに一度診させてもらえるかな?」
「うん」
「ハッセルエン、薬師は呼んでいるか?」
「ああ、ストラストが今呼びに行っている」
「混乱に対する薬と眠り薬を処方してもらってくれ。私は行く。先程の事忘れずにな。また同じ症状が出たら魔術師を呼ぶように」
「わかった。助かったよ」
「なに、ハッセルエンには学校時代の借りが山程あるからな。いつでも呼んでくれ。忙しくなければ対処しよう」
「テミス…ありがとう」
「それではリョウエスト、其方に神のご加護があるように」
「ありがと」
「うむ」
テミス司祭は出ていった。