今後の話。
食後のコーヒーを楽しんだあとリーリシアさんが指を鳴らす。すると食器が消えて、ちゃぶ台の上には書類が現れた。
「鈴本さん。本当に、本当に名残惜しいのですが、あまりこの空間にいるのは良くありません。この空間は今仮初でつくられた空間となっており、いずれ崩壊するからです。そして創造神様のお力で作られた空間なので私には維持する事が難しいのです」
「あれ?創造神様は?」
「今は火消しに回っております。多分このまま戻らないかと。創造神様からの伝言で『私の加護を授けておいた。良き来世を』とのことです」
「なるほど。ありがとうと言っていたと伝えて頂きますか?」
「わかりました。伝えておきます。さて、鈴本さん。あなたはこれから転生、と言うことになるのですが、いくつか選択して頂きたいと思います」
「はい、どんな選択でしょうか?」
「生まれ、性別、特性、能力などです。私の質問に応えていけば次の転生先が決まると言う形ですね。よろしいでしょうか?」
「はい」
「生まれ変わるならどんな所が良いですか?」
「どんな所とは?」
「SFのように文明が発達しているところとか、ファンタジー世界とか、西部劇のような世界だったり、先史文明の世界だったり、多分ご想像されている世界はあります。ちなみに生まれ変わるのは人間ですよ」
「リーリシアさんの管理されている世界はどんな世界ですか?」
「どちらかと言うとファンタジーな世界観をしています」
「ファンタジーかぁ……うーん。ものすごく惹かれるのですがリーリシアさんの所を第二希望にさせてください。やっぱり日本に生まれたいですね」
「わかりました。性別はどう致しましょうか?」
「男性で。今度はちゃんと男になりたいです」
「今度は魅力的な容姿の男性になりたいと言う事ですか?」
「うーん。そう言う事ではなくて、顔がそこそこ整ってるのも良いのですが、人間的に魅力を鍛えたいなあ」
「なるほど、でしたら今も魅力的だと思いますよ」
「そうかな?ありがとうございます」
「次なのですが、次の人生に何を求めますか?お金ですか?地位ですか?名誉ですか?それとも愛情?」
「うーん。正直言ってお金はいっぱい欲しいですね。けどそれより何より健康をまずは求めます。健康ならばお金は稼げると思うので。あとは運が良ければ良いですね」
「はい、わかりました。次の質問ですが、どのような環境で生まれたいですか?お金持ちな家庭?束縛されない家庭?愛情たっぷりな家庭?」
「愛情たっぷりな家庭が良いですね。お金がそこそこあれば嬉しいかな」
「はい。次ですがどんな能力を自分に求めますか?」
「うーん。文武両道でなんでもできるタイプになりたいですね。もう一つ可能なら縁を繋げる力が欲しいです。今世はなかなか縁を繋げる事ができませんでしたから」
「なるほど。最後の質問です。鈴本さんは来世で今世の記憶を思い出す事を任意で決める事ができます。来世で今世の記憶を思い出す?思い出さない?思い出すとしたらいつが良いですか?」
「うーん。反面教師で思い出すとしておきます。思い出すとしたら赤ん坊の頃は嫌ですね。もう少し大きくなってからが良いです」
「最後に何か一言どうぞ」
「リーリシアさんみたいなお嫁さんが来たら最高なんですけどね」
最後、俺はかなり照れながら質問に応えた。リーリシアさんを見ると心なしか赤くなっている感じに見える。俺は気のせいだと思いながらもリーリシアさんの言葉を待った。
「えーっと。えーとですね。これで質問は終わりです。これから門を開けますので門が空いたら中に入って下さい。転生が始まりますので」
「わかりました。リーリシアさん、色々ありがとうございました。」
「こちらこそ大変ご迷惑をかけました。地球の担当者には良く良く言い聞かせますので安心して下さいね」
そう言ってリーリシアさんは右手をかざすと高さ十メートルはあるであろう大きな門が現れる。三メートルほどの高さであろう扉がゆっくりと開く。
「それではお別れです。良き来世をお迎え下さい」
そういって俺の手を握り俺を門の方へいざなう。俺は頷きリーリシアさんの指示に従う。一歩、また一歩と進むごとに仮初の肉体が消えていくのを感じる…振り向くとリーリシアさんと視線が交差する…俺はにっこりと微笑むと門に一歩踏み出す。
が、踏み込む瞬間、背中に強い衝撃を感じ、俺は意識を失った。