管理神の断罪。
「よろしくお願いします」
「うむ。よろしく頼む。実はな鈴本君、君は取り違えられたのだ」
「はい」
「君は鈴本遼太君だ。そして取り違えられたのは鈴木遼太君だ。」
「本来その人が死ぬ話だったのですか?」
「その通りだ」
「でも俺は十年以上前から病気にかかってましたし、いつ死んでもおかしくなかったですよ」
「そうだな。そもそもそれがおかしい話なのだ。君は本来なら二十代半ばで結婚し幸せな家庭を得て、会社をやめ新たに事業を起こして成功する予定となっていたのだ」
「そうなんですね。じゃあ、俺の恋愛がなかなか続かなかったのは…」
「ああ、想像通りだ。すまんな」
「マジかー。神様、俺、おかげで大魔法使いになりましたよ」
「魔法使い?地球にはマナはないはずだが……クックック。なるほどなるほど、面白い喩えだ。いや、ホント申し訳ない」
「はあ」
そんな感じで話していると障子の外から女性の鼻歌が聞こえてくる。それは障子の前で止まり勢いよく障子が開かれた。リーリシアさんが綺麗系ならその人は可愛い系の女性だった。
「やっほー。リーリシアねえさん。留守番ありがとうー。お土産買ってきたよー。一緒にたべ……あ。あ。ああ。そ、そ、創造神様。ご機嫌麗しく。お勤めご苦労様です。此度はどんな用事でございますか?」
「地球の管理神ルーラよ。お主はとんでもない事をしでかしてくれたな。これを見てみよ」
「は、はい。鈴木…鈴本…鈴木……あ」
「取り違いはまだ修正が効く。だが取り違えを放置しておくとは何事だ。同様の取り違えが現在十件ある。先程までリーリシアとその同僚が火消しと改善を行って修正を図っていたが、鈴本君が今回亡くなった為、三十京の並行世界ができあがっておる。ルーラ、お前に三十京の面倒は見れるのか?」
「あ、あ、あ。す、すいません。創造神様ごめんなさい。私にはそこまでの能力はありません。大変申し訳ありません」
「何故立っておるのじゃ。」
「あ、大変申し訳ありませんでした」
ルーラ神は土下座した。なんか自分の事ながら大変な事になっていると肌で感じる。創造神は怒りに怒っているようだ。すごいプレッシャーを受けてた。ふと横を見るとリーリシアさんが滝のような汗をかき、手を出して俺の前にかざし、何かから身を守ってくれているようだった。それに気づいた創造神は息を整え、怒りを鎮めているようだ。しばらくすると
「リーリシア、すまんな。大分神力を使わせてしまったようだ。補充しておいたから許せ。鈴本君には申し訳ないがもう少し付き合ってくれ。さて、ルーラよ。只今をもって神力は取り上げた」
「え?あ、ああーっ」
「お前が調子の良いことを言うから知性体の数を増やしていったが、お前とお前の部下の仕事ぶりは目に余る。それぞれ輪廻の輪に入れ、細菌から始めてもらう。地球の事は安心せよ。既に後任は決まり着任しておるからな」
「う、うぇーんっ」
「泣いてもすまない事をしたのよ、ルーラ。私もあなたを信頼してたの。もう少しちゃんとあなたに向き合うべきだったわ」
「お姉さん……。うぇーっ」
「ルーラよ、お前、鈴本遼太君に言う事があるか?この者はお前のせいで人生を狂わされたのだぞ。そして、鈴木遼太君は明日死ぬ事になった。帳尻合わせの為にな。もっとも、彼は元々一人虚しく死ぬ予定だったのが愛する家族に見守られながら死ぬから、いくらか鈴本君よりはマシだろう」
「も、も、もう、しわ、け、あ、あり、ありません」
ルーラ神、いやルーラは頭を下げない…いや、下げれなかった。持って生まれたプライドと、自分が優位な立場だという優越感が頭を下げるのを良しとしなかったのであろう。色々な感情が入り混じった苦虫を噛み潰したような顔で俺を見ている。
創造神はルーラの頭を踏んづけて無理やり頭を下げさせ、俺に向き直った。