二人の中二病患者発生。
エメイラが帰った次の日、僕はアニナをお供に朝から運動をしていた。今日庭で警備してたのはフレドという警備隊の隊長で、寡黙だが腕が立つとペランスが言っていた。
フレドは頭に鉄のヘルメット。胴体はスケイルアーマーを着て、革の手甲をつけ、硬そうな何かの革ズボンにアーマーブーツを履いている。獲物はバスタードソードって呼ばれる剣かな?
残念ながら鼻から下しか見えないのでどんな容貌かわからないが、口元がほころんでいるのを見ると僕がテクテク走っているのをニコニコと見ている感じがする。
ひとしきり走るとフレドに挨拶をした。
「フレド、おはよう」
「…お坊ちゃま…おはようございます」
「フレドは兜を着けてるんだねー」
「…童顔なので」
「その剣、何?大きいね」
「…これはバスタードソードと言う剣ですね」
「ふーん。すごそう」
フレドがニヤリとする。すごく嬉しそうな顔で話し始めた。
「ふー。お坊ちゃま。そこに気づくとは慧眼です…これはコリント王国でも有数の鉱山から出土した鋼をこの街の一番の鍛冶屋テバーン工房のテバーン氏が鍛えに鍛え上げた逸品です!さらに柄にはフロストヴィニールの皮を巻きつけており滑りづらく抜きやすくなっております!刀身は130㎝で私の身長に合わせた私だけの為に作られたオーダーメイド!テバーン氏の剣は一年待ちが当たり前なのに私はそれを半年で手に入れました!鞘は一般品でしたざこの剣に合わせて作り直しトロールの革で作らせました!先日旦那様の用事で街の外に出ましたがゴブリンだろうがオークだろうが一撃必殺でした!さらに…」
かなりの早口で喋っている。フレドは剣オタクか?前世の僕の友人のオタクと同じにおいがする。僕は話をふんふんと聞きながら昨日の事を思い出していた…エメイラさん綺麗だったなあ。
「……お坊っちゃま。以上が私の剣の素晴らしさになります。おわかりになりますか?」
「わかったよ。ありがとう」
「私今度違う剣を持って参ります。その素晴らしさをお坊ちゃまにも是非知ってもらいたい!!……あ」
フレドは何かに気づいたようだ。アニナの方を見ている。
「ん?」
「…大変失礼いたしました」
「何?」
「…職務に戻ります」
「うん」
僕はフレドと別れ家に戻った。家に戻るとドルトが陣頭指揮をとり家具や荷物の移動が行われていた。商会員の皆が額に汗して働いている。
「ドルトー、何?」
「あー。お坊っちゃま。エメイラヒルデ師が滞在すると言う事で今まで物置場となっていた部屋を改装しております。午前中は荷物の移動と掃除、午後から大工ギルドから人を呼んで改装という流れなのです。お坊っちゃまには大変ご迷惑をかけますがよろしくお願いします」
「なるほどー。何か手伝う?」
「お坊っちゃま…その気持ちありがたく頂戴しますが、お坊っちゃまが手を出すほどの事ではありません」
「そうかー。よろしく」
「はい」
食堂に行くとお父さんとお母さんがまだのようだ。お兄さん二人が何かのポーズをしあっていて、ミシェ姉さんが呆れている。
「ふっふっふ、私は『商人魔法使い』のロイックエン。姑息な半人前魔術師よ。かかってこい」
「半人前と言うな…俺は『オールマイティ』ストラスト。メイジ如き捻り潰してあげよう。うぉぉぉ。俺の右手がうなるぜぇぇぇぇ。」
ダメだこの兄弟。違う次元に行ってしまっている。
「リョウおはよう。この二人さっきからこうなのよ。関わらないようにしようね」
「ミシェ姉さんおはよ」
「おお、来たな俺の最愛の弟よ。その一流魔術師の力、とくと俺に見せてくれぇぇぇ。」
「うーん。ストラ兄さん。変」
「変とはなんだ変とは。俺は今日から『オールマイティ』ストラストなのだぁぁあぁ。」
「うー。面白いけど、やっぱり変」
お父さんとお母さんが入ってきた。二人とも呆れている。
「リョウのいう通りだ。誰が見てるかわからないからやめなさい」
「はい。ストラスト、遊びは終わりだよ」
ストラ兄さんにロイック兄さんが声をかける。
「わかったぜ兄者。俺の力を封印するぜぇ」
「ぷっ」
「あははは」
「いや、面白いなお前」
「もう呆れちゃう」
「朝から、面白いねー」
朝から笑い声が食堂に広がる。今日も楽しい一日になればいいな。