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エルフの魔術師。

 美人の登場で色めきだった僕はお店に入って番頭のモムノフさんの元に行って報告した。


「モムノフー。僕にお客様。お父さん、今いい?」

「商会長ですか?お客様はどなたで?」

「私よ」


 後ろに着いてきた美人さんは黒革の兜を外す。モムノフさんは驚いている。僕も振り返ると美しい顔には長い耳がついている。


「言っておくと長耳族ではないわ。れっきとした本物よ。私は商会長に呼ばれてきたの。『魔旋風』が来たと伝えてくれる?」

「は、はい。御高名はお聞きしております。応接室でお待ちして頂けますか?」

「わかったわ。案内よろしく。リョウエスト、行くわよ」

「うん。ませんぷー」

「ぷっ。それは名前じゃないわ。私はエメイラと言うの」

「エメイラ、僕リョウ」

「うん。リョウね、わかったわ」


 案内されて初めて応接室に入った僕は驚いた。贅をこらした細工がついたテーブルと綺麗になめした革が張っている長椅子が置いてある。かなり高そうだ。商談という戦争を行なうところだからこうやって場を整えているのだろう。

 エメイラは当然のようにマントを外して座っている。僕はどこに座れば良いのかわからなく、あわあわしている。エメイラは小首を傾げて微笑みながら


「さあ、座りなさい」


 と彼女の横に座らせた。


「それでいつから光が見えるのかな?」

「わかんない」

「この光も見える?風精よ、身体と装備を綺麗に『清浄(クリーン)』」


 エメイラの全身が一瞬光った。


「ちょっと体、光った」

「そう。凄いわねリョウ。あなたには素質があるわ」

「素質?」

「ええ。かなりの素質が。その年で魔力量がそんなにあるのは大したものよ」


 ノックの音がする。エメイラが応え両親が入ってきた。エメイラが口を開く。


「お待たせしたわね。別件で街の外にいたから遅くなったわ」

「ありがとうエメイラヒルデ師。よく来てくれた。手紙で説明した通りだがもう一度説明しようか」

「そうしてもらおうかしら。奥様には初めて会うわね。風精(エルフ)魔術師(ウィザード)エメイラヒルデよ。エメイラと呼んでね」

「はい、エメイラ様。あなたの事は主人から聞かされております」

「エメイラで良いわ。あなたもいつまで私をエメイラヒルデ師なんて呼ぶのハッセルエン。あなた、子供の頃からの付き合いでしょ?」

「わかったエメイラ、これで良いか?」

「良いわ。じゃあ話を聞かせてくれる?」


 お父さんが主に説明して、お母さんが補足、と言う感じでこの前起きた僕の混乱の状態異常の話をした。話を聞き終わったエメイラが顎に手を当てて考え込む。しばらく考えたのち話し始めた。


「奥様に聞きたいことがあるけど構わないかしら」

「なんでしょうか?」

「これ見える?」


 エメイラは指先から光を発した。


「指ですか…かすかに何か漏れている感じがします」

「そうか。ハッセルエン、確かあなたには他に息子さんや娘さんがいたわね」

「ああ。エメイラ、それがどうした?」

「いるなら呼んでほしいわ」

「今娘がいるから呼んできます」


 と言ってお母さんは家の方に急いで行った。


「エメイラ、どう言う事だ?」

「娘さんを見ればわかるわ」


 しばらくしてミシェ姉さんが連れてこられた。ミシェ姉にも同じ事をやった。ミシェ姉は


「かすかに光っているのが見えますね」


 と答えた。


「なるほどね。リョウ、混乱が起こる前の夜、今まで感じた事がない事を感じたんじゃない?」


 僕は冷や汗をかいた。もしかして転生の事がばれた?


「何?」


 俺は思わず聞いてみる。


「リョウ、変な事、例えば物の見方が変わった事が起こらなかった?」


 えーい仕方ない。


「それ、起こったー」

「やっぱりね。ハッセルエン、それから奥さんの…」

「ハノンです。こっちが娘のミシェレル」

「うん。ハノンとミシェレルも良く聞いてね。今回の事は魔術師(ウィザード)邪術師(ソーサラー)や夢魔系の悪魔のいたずらの可能性もあるわ。でもね、今回は違うと思うの。ハノン、あなたにはかすかに、ミシェレルにはもう少し魔術師(ウィザード)の素養があります。とは言ってもミシェレルは一つか二つの魔術しか覚えられないと思うのだけど。他の息子さん…」

「ロイックエンとストラストです」

「うん。そのロイックエンとストラストにも素養があるかもしれない。これはね、奥さんの家系には魔術師(ウィザード)の血が流れているって事が原因なの。ハノン、何か思い当たる事はない?」

「母の曽祖父が魔術師(ウィザード)だったと。そんな話を聞いた事があります」

「なるほどね。あのね、良く聞いてね。リョウは先祖返りしているのよ。生まれつき魔力があり、優秀な魔力視覚(マナサイト)が備わっているの。適切に教育すれば一流の魔術師(ハイウィザード)になるわ」

「それは凄い。リョウ、やったなー」

「凄いわ。リョウ。あなたに素質が備わってる事を神様に感謝しないとね」


 お父さんとお母さんは喜んでいる。ミシェ姉さんも手を叩いて喜んでる。


「今度の事は魔力視覚(マナサイト)が開いた事による混乱。だって魔術師(ウィザード)邪術師(ソーサラー)が悪戯する意味がないし、夢魔系の悪魔は少年期から手を出し始めるのよ」


 おおう。エメイラが全然違うけど結論を出してくれちゃったよ。


「それでハッセルエン、ハノン、相談があるのだけど」


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