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時の話と僕のお客様。

 更に三日が過ぎた。

 なんとなくで気づいたがこの惑星は一日の時間が地球より長いようだ。不思議に思って朝、ロイック兄さんに聞いてみた。


「ロイック兄さん、時間て何?」

「うーん。時間というのはだな、ある時とある時の間の長さだな。わかるか?」

「わかんないー」

「難しい事聞くなあ。ストラ、説明できるか?」

「それは僕にも説明できないなー。時計で説明したらどうかな、お父さん」


 とストラ兄さんが言った。時計、あるのか!お父さんはうなづいて僕に聞いた。


「リョウ、今日もお店に挨拶いくのか?」

「うん。挨拶するー」

「ならその時教えてやろう」

「んふー。ありがと」


 僕はウキウキしながら朝の駆け足を終え、書取りをしている。


「お坊っちゃま、何かいい事ありました?」


 とエスナが聞く。


「エスナ、時間、知ってる?」

「ええ、わかります」

「お父さん、教えてくれるの」

「そ、そうですか?それは良かったですね」


 いまいちエスナには響かなかったようだ。


「時間、大事、わかる?」

「ええ、なんとなくは」

「だから、知る。大事」

「そんなものですかね?」

「そんなものー」

「リョウー、準備できたぞー」

「あ、お父さん。行ってくる」

「行ってらっしゃいませ」


 それからお店に行き、中の人々に挨拶をしてからお父さんの隣にちょこんと座る。


「良いか、大事なものだから触るなよ」


 お父さんは慎重に箱を開ける。中に入っていたものは時計だった。宝石が飾ってあり綺麗だ。


「きれー」

「綺麗だろ。これは時計だ。貴族様用の道具だ。魔法道具なんだよ、これは」

「とけい?まほうどうぐ?」

「時計ってのはな、時を知るためのものだ。魔法道具とは魔法技師と言われる人達が魔法を利用して作った道具なのだ。わかるか?」

「んふー?」

「わかんないか。無理もない。今日は時計を説明するぞ」

「うん」

「ここにチカチカと動く針があるな。そして長い針と短い針があるのがわかるか?」

「うん」

「それが今の時を示している」

「うん」

「この針が示したところが今の時間だな。今10時30分だから今日という日がはじまって短い針が10までいき、長い針が10回回ったあと半分ぐらいの所で止まっていると言うことだ」

「ふーん」

「このチカチカ動く針があるだろ?」

「うん」

「これが65回チカチカしたらちょうど一周回る。そうすると1分という単位になる」

「うん」

「これが65回続くと1時間になるのだ」

「65回?」

「そうだ」


 なるほど一分と一時間は65秒と65分なのか。秒の進み方はほぼ同じだ。


「日が変わって1時間が13回続くとお昼になる。さらに13回続くと次の日になる、わかるか?」

「なんとなく?」

「街に鐘が2時間ごとになるからそれでわかるようになる。今はこういうものだと覚えておくと良い」


 暗算しよう。26×65分で1日1,690分か。そして×65秒か。うーんとうーんと…110,000秒くらいだな。地球が確か1440分×60秒で86,400秒だよな。地球時間で暗算すると110,000÷3600で約30時間半か。長いな。それにしてもなんで13時間なんだろう。地球と同じように六十進法ではないのは不思議。リーリシアさん、なんでですか?


「そして1日が26回繰り返すと一月となる。それを13回、それで一年だ」


なるほど。一年は26×13で338日となるって事だね。


「んー」

「まあそれもわかるようになる。いいか、商人をするにも他の仕事をするにも時間は大事だ。なぜかわかるか?」

「わかんない」

「時間はみな同じく流れているからだ。これは王様でも、貴族様でも騎士でも、商人でも、工人でも、農民でもどの種族でも一緒だ」

「みんな同じ1分を感じるの?」

「そうだ。その時間が流れていけば、みんな子供になり大人になり老人になり死んでいく。だから時間は大事なんだ」

「わかったー。時間は大事」

「そうそう、そう覚えておくと良い」


 商会員の人が走ってくる。


「お話中すいません。商会長、お店の方にお客様がいらしてます」

「わかった。リョウ、そういう事だからな」

「時間は大事。いらっしゃいませ行くー」

「そうか。頼むぞ」


 僕は丁稚さんと並んでいらっしゃいませとお客の呼び込みをする。僕が店先に出ると近くの屋台から何人か出てくる…前も来てくれたお客様だ。お客様達はボクや丁稚さんにチップを渡しながらお店に入っていく。もしかしたらボクにチップを渡す為に待っててくれたのかな?と一瞬自意識過剰になりそうになったがその考えを捨てさって呼び込みを頑張った。

 セス大通りの人通りが多くなってきた。なんか時々僕の事を指で指される。珍しいよね。三歳だもの。ちなみに誘拐の心配はない。隣にハルバードをもったカダスさんが立っているから。


 もう少しで終わろうかな、と思ったらものすごい美人のお姉さんがこちらに向かって歩いてきた。黒革製のヘルメットに黒革鎧。鎧下は上下共緑色。腰に細剣を差して、淡い黄色の短いマントをつけている。ヘルメットの隙間から紫色の豊かな髪が陽の光を帯びてたなびき、整った白い容貌に薄紅色の唇。深い藍色の瞳が僕を見つめていた。


 横にいたカダスさんが声をかける。


「久しいな」

「お久しぶり。息災だった?」

「ああ。そっちは?」

「問題なしよ。ね、この子見ていい?」

「ふふ。いいぞ」

「ねえねえ、これ見える?」


 女の人が指をかざす。指先から綺麗な光が出ている。


「きれー」

「そう。見えるのね。僕お名前は?」

「リョウエスト・スサン」

「そう、あなたが。私はあなたのお客様よ。お父様のところに案内してくれるかしら?」


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