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はじめの一歩。

 それからお母さんに抱かれながら、濡れタオルで顔を拭ってもらい、抱かれたまま食堂に入った僕はお母さんの手を離れお父さんに抱きついた。これは朝の習慣になっているのだ。


「よしよし、大丈夫だったか?元気そうで良かった」


 とお父さんは僕の頭を撫でながら顔に頬を擦り付けながら言う。髭がちょっと痛い。そしてお父さんが満足して手を離すとお兄ちゃん達二人に抱きつく。


「おはよう、リョウ」

「おはよう、ねぼすけ」


 なんて言いながら僕と抱き合う。それから席についてご飯だ。ご飯の時の掛け声はお父さんの


「今日もごはんにありつけたのは、神様とお客様のおかげだ。感謝」


 という挨拶だ。僕らは


「「「「感謝」」」」


 と言い食事を食べ始める。今日は硬い黒パンとサラダとスープだ。なおパンはスープに浸しながら食べる。そうじゃなきゃ硬くて食べにくいからだ。

 僕をはじめ家族全員結構な量を食べる。一日二食という事もあるかもしれない。


「お父さん、お昼、食べない?」


 と僕は聞いた。記憶では決して昼にご飯を食べないからだ。


「毎日お昼を食べれるのはお貴族様達だけだ。外食をする場合昼に食べる事もあるぞ」

「そうなんだね」

「なんだ?お昼にごはんを食べたいのか?マスに作らせるぞ」

「ううん。大丈夫ー」


 父は僕に甘い。それはそれでありがたいが。

 食事を終えると兄達はそれぞれ準備して学校に行く。僕とお姉さんはその後を着いていき、玄関で見送る。玄関の先はお店だ。僕は入ってはいけない事になっている(時折父に連れられ入っているが)。

 今日はそれが終わるとお姉さんを引き連れて中庭に出た。中庭に出ると幼児のバランスがとりにくい手足を使って走り出す…走るというより早足と言ったところか。ともかく、ぐるぐる中庭を周りながらテクテクと走る。体力がこれで少しついてくれば良いのだが。なにより習慣化する事が大事だと考えてる。お姉さんはニコニコ笑いながらみている。今日の警備の戦士?さんはずんぐりむっくりの髭のおじさんだった。身長は150くらいか。これが噂に聞くドワーフなのか?おじさんは、抜き身のハルバードっぽい武器を支えに立っている。おじさんもニコニコと笑っていた。ひとしきり走った後僕はおじさんの所に行った。ミシェ姉さんは僕を後ろから抱きかかえている。


「こんにちは。お兄さん、人族?」

「ワシはお兄さんというよりおじさんだな。ワシは地精(ドワーフ)族だ」

「んふー。強そうだー」

「おう。Bランクだからそこそこ強いぞ」

「びーらんくって何?」

「傭兵ギルドってところの戦いが上手い戦士ってところだ」

「すごいねー。僕はリョウ。よろしくねー」

「カダスだ。よろしくな坊ちゃん」

「んふー。カダス、昨日のお耳が長い、お兄さん?」

「今は店の方で警備をしている。あいつはおじさんの相棒で獣人(ビーストマン)族。同じBランクのペランスだ。よろしくな」

「ペランスだねー。わかったー」


 その後子供らしい話し方をしながら傭兵の仕事を色々と聞いた。まだまだ聞きたい事があったがミシェ姉さんに打ち切られて部屋に戻った。


 部屋に戻るとミシェ姉さんは母親に呼ばれて修行?に向かった。僕はエスナに面倒を見てもらう事になり、昨日の絵本にとりかかった。まずはエスナに読んでもらい文字の読みと意味を理解しようとする。エスナは文盲ではないと思うのだが読むのが苦手らしいのでちっとも捗らなかった。これは書取りした方が覚えやすいなと思いエスナに紙と書くものも準備して欲しいとお願いした…がエスナの方から難色を示されてしまった。

 仕方ないので諦める、という選択肢は僕にはない。ここはいつものお願い戦法で行こうと心に決め、絵本を持ってお母さんとミシェ姉さんの所に向かった。二人は何かを縫っていた。


「お母さん、お願い」

「なあに?」


 僕は絵本の文字の所を示して


「僕、これ、紙、(書くジェスチャー)、お願い」

「ん?何かな?」

「僕、紙、これを(文字を指し示して)

、(書くジェスチャー)のー」

「ん?絵?」

「違う。これ(文字を指し示して)」

「え?文字を書くの?」

「これーっ(文字を指し示す)」

「リョウ、文字っていうのよ、これ」


 ミシェ姉さんが助け船を出してくれる。


「文字ー!」

「まぁ。文字を書くのね。リョウは天才かもしれないわ。三歳で文字の重要性に気づくなんて」


 お母さんは感動している。ミシェ姉さんも驚いている。


「良いわ。お店から一番書きやすいものを持ってきてあげるわ。お部屋で待っててね」

「わかった。文字ー。んふー」

「ふふふ。ミシェ、続きをやっておくのよ」

「えー、私も見たいー」

「あなたが今大事な事はお仕事を覚えることなのよ。我慢なさいな」

「はーい」


 こうして『お願い』大作戦は成功し僕は、筆記用具を手に入れる事ができた。その後僕に甘いお母さんは書取りをつきっきりで監督したのは言うまでもない。


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