素敵な学園生活4
午後の学園。
今、学園では男性は女性に髪飾りを送り、女性は男性に手作りクッキーを送る事が流行っていた。
「いらない事を流行らせるんじゃない!俺が腹痛で倒れたらどうしてくれるんだ」
「ナイジェル・・・・これを」
ソランドが机の上に胃薬を置く。
「毒消しは毒の種類が分からないと使えないらしいから、専属の薬師を側に」
「真面目な顔をして対処法方を言うな!回避方法を考えろ」
「食べない、でいいんじゃないか?」
「それはそれで負けたようで嫌なんだが・・」
「なら男らしく早食いの上、全食いで。そして、笑顔で美味しかったと言って自宅で倒れると完璧だな」
「何故俺がミレイダ相手にそこまで気を使ってやらねばならんのだ」
ナイジェルは頭をガシガシとかく。
「どうしたナイジェル。元気がないな」
「ハシュリーク様」
この国の第四王子ハシュリークは同学年の別の教室にいる。
たまにこうして来る事があった。
「様付けはいらないよ、と言っても無理か。せっかくの同学年なのにな」
「同学年だからこそできない事もありますよ」
「普段は柔軟すぎるというのに、こういう事は頭が固いな。で、どうした?」
ナイジェルとソランドは顔を見合わせる。
「生徒の間で流行っている、髪飾りとクッキーの話はご存じですか」
「ああ、もちろんだ。私も婚約者のユキシェルと交換したぞ」
おいしかった、と満足そうだ。
「ところでナイジェル、預かっているものがあるんだ」
机の上にクッキーが入った袋が置かれる。
「ユキシェルとミレイダが一緒に作ったらしい。これなら大丈夫だと思うぞ」
「ハシュリーク様!」
感動したようにナイジェルはハシュリークを見る。神の使いのように見えた。
用事は済んだとハシュリークは笑顔で去る。
残ったのはクッキーの袋だった。
開けてみるとクッキーの端の部分が炭化している。普通に失敗していた。
ユキシェルの手作りをハシュリークは美味しいと食べたのだろう。二人の愛の深さを知った。
「・・・そうだよなぁ、令嬢だもんな」
「・・・・・」
ソランドとナイジェルはそれから言葉を発しなかった。
ナイジェルは食べたが普通に不味かった。