素敵な学園生活13
ナイジェルにとって学園の授業はそんなに難しいものではなかった。
ほどんどは家庭教師から学んでいるので、追加学習をしているようなものだ。
別に他の者よりもずば抜けて頭が良い訳ではなく、勉強時間が長かっただけだとナイジェルは自分で思っていた。
「ナイジェルは頭がいいよな」
ソランドがそう言うがナイジェルは首を傾げる。
「別にそんな事ないぞ。幼い頃から専属の家庭教師に毎日四時間しっかり教えてもらっていたら、ほとんどの者は俺ぐらいになる。いるのは、椅子に座り続けて相手の話を聞く能力だけだ」
「へー四時間なんだな」
「ああ、途中で運動をいれるからそれぐらいだ。勉強ばかりしていると、尻の形が悪くなったり首が曲がったりと身体的に異常が出てくる可能性があるからな。体が悪くなれば勉強にも支障がでる。だから俺の家では勉強漬けは禁止だ。
今は学園に通っているから主に休みの日だけの授業になっているな」
「体の事を考えてるんだな」
「と、いうかそれが一番だな。体の骨が曲がれば人の話を聞くどころじゃなく病院行きだろ」
ソランドにそう言ってからナイジェルは横を見る。
「まぁ、こんな事を話していても成績の順位はミレイダが一位なんだがな・・・」
ナイジェルはそう言う。
今、二人は順位の貼られた掲示板の前に立っていた。
廊下には沢山の人が集まり話をしている。
ソランドはナイジェルの肩を優しく叩いた。
「ナイジェルも六位だから凄いじゃないか」
「ソランドは十位か。幼い頃の自分が勉強もろくにしていなかったソランドをちょっと懲らしめてやれ、と囁くから両頬を伸ばしてもいいか?」
ソランドがもっと頑張れば六位など直ぐに抜かされるかもしれない。
超有名家庭教師から教わり、侯爵婦人の英才教育を見た事があるナイジェルは、ミレイダが一位なのは当たり前だが、ソランドは地頭が良いだけだ。
「何もしていないだけなのにっ」
頬を押さえてソランドは逃げる。
「何もしていないのが問題だ。子供の頃、遊び歩いていたソランドに順位を抜かされた者達はどうなる?草葉の陰で泣いているぞ」
「その表現だとあの世にいっているから、止めてあげてくれ」
ナイジェルの声が聞こえた周りの生徒の一部が、胸を押さえて廊下に手をつく。何かが心に刺さったようだった。
「ほら見ろ、もし俺もお前に抜かされたら廊下で同じ事になるからな」
廊下で手をついている生徒に起きる手伝いをしながらナイジェルは言う。
「どんな脅しだナイジェル。俺はそんなに頭が良くないし、ナイジェルが頑張っているから俺もやろうと思っただけだよ」
「そんなに頭がよくない・・だと」
ナイジェルに起こされていた生徒が呟いてから廊下に沈む。
ソランドよりも順位は下だが、生徒は自分の事を頭が良いと思っていた。
「可哀想に。面と向かって頭が良くない呼ばわりされたんだ。ソランドから止めを刺されたか」
「いやっ、そんなつもりはなかったんだ。よくないのは自分だけで決して他の人に言った言葉じゃないんだ」
「ナイジェルさん・・・」
廊下に沈んでいた生徒がナイジェルに声をかける。
「頭が良くない俺ですが、将来ナイジェルさんの経営する店に雇ってもらえますか」
「俺達は仲間だからな。頑張っていたら必ず迎え入れるさ」
「ありがとうございます。元気がでました」
シャキッと立つと、頭を下げてから生徒は行ってしまう。
これで将来の雇用先は大丈夫だった。
「さっきの人、絶対に俺より要領がいいよな」
「勉強とは活用してこその見本だな」
ソランドとナイジェルは話す。
そんな事を言っていたソランドは次の成績発表の時には八位に上がり、ナイジェルは頑張って五位になった。