街中での二人
ある時の帰り道。
街に来ていたミレイダは店から帰る途中、ナイジェル、ソランド、バルトの三人を見つけた。
ナイジェルは髪を切ったようで、少し長めの髪の毛を左右に自然に分け、左側の髪の毛を後ろに撫で付けている。
ソランドは、焦げ茶色に近い金髪の短い髪をきちんとまとめて左に流し、水色の瞳は隣のバルトを見ていた。
薄茶色の短い髪を少し立たせているバルトは、黒い瞳をソランドの方に向け、腰に手を当てている。
三人は目立たず周囲に溶け込んでいた。
周りにいる者達は三人を自然と受け入れている。身振り手振りしながら三人が笑い、肩を叩いて喜んでいる。すると隣にいた見知らぬ人達も巻き込んで話し始めた。
今度は六人で笑っている。ナイジェルも楽しそうだった。
「わたくしと、どこが違うのかしら?」
ミレイダの長い金髪は背中に流され、陽に当たると煌めいている。ハシュリークより明るい色をした緑色の瞳は、ナイジェル達の方を向いていた。
茶色のワンピースを着て、耳には小さな銀色のイヤリングをつけている。華美な服装ではなかったが、周囲から注目されていた。
ミレイダの後ろには、アシュリーとアンナもいて、二人はイルミスレイル家から支給された侍女服を着ている。
エプロンを取り外した姿で、襟は白で、黒に近い紺色の服を着て、同じ色の長いスカートをはいていた。
ミレイダがいるだけで、周りから見られている。
目立たない三人と違って、とても観察されていた。
「この髪のせいかしら・・」
ミレイダが自分の髪を掴むと、サラサラと下に落ちていく。その光景だけでも美しかった。
周囲のざわめきで、ナイジェルがミレイダに気づく。
驚きすぎて体が跳ねていた。
ごきげんよう、とでも言うようにミレイダはニッコリと笑みを浮かべてから、馬車に乗る。ドレスではないので自分で馬車の手すりに掴まって乗っていた。
アシュリーはナイジェルを睨み付け、大袈裟に舌打ちしてから馬車に乗る。
アンナはアシュリーと違い、ナイジェルに頭を下げてから馬車に乗り、しばらくすると出発した。
「舌打ちをするな。そして睨むな。今日は何もしてないだろ」
ナイジェルが独り言を言う。言葉を伝えたかった者達はもういなかった。