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リグロスシス家


豪邸の自室でナイジェルは外に行く用意をしていた。

その後ろで、幽霊のようにたたずむ一人の年をとった片眼鏡をつけた執事。


「ナイジェルぼっちゃま」

「うわあっっ!?い、いつからいたんだ。サンチェス」

「少し前、ナイジェルぼっちゃまが鼻歌をしている時からです」

「声をかけてくれ。驚くだろ」


ナイジェルは襟を整えながらそう言った。


「用があるなら早めに言ってくれ。街に出る約束があるんだ」

「それはミレイダ様とですか?」


ギクッ、とナイジェルは肩を跳ねらせる。


「そそそそう言う事もあるような、ないような・・・」


ナイジェルは、はっきりとは言おうとせず、言葉を濁す。それをサンチェスは目を光らせて見ていた。


「このサンチェス。ナイジェルぼっちゃまが幼い頃から、紳士たるもの女性に優しくあれ、とお教えしてきました」

「ああ、そうだったな」

「ナイジェルぼっちゃまは、きちんとミレイダ様に優しくしておられますか?」

「もちろんだ。ミレイダも優しくしてくれるから、俺も同等の愛情を返している。こうして毎回、プレゼントの贈り合いもしているぞ」


ナイジェルの机の上には、ハンカチや縫いぐるみ、ハサミが置かれている。

机の上の物品を改めて見てみると、これ見られたらマズい物じゃないか、とナイジェルは思った。


ミレイダから貰ったプレゼントを丁寧に机になおしながら(隠しながら)ナイジェルは話を続ける。


「いやぁ、ミレイダの愛情表現は過激だなぁ。ハハハ」

「ハンカチはどういう意味なのでしょうか?」

「俺を地中に埋めたい、独占したいという意味なんだそうだ。令嬢らしい可愛らしい表現方法だと思う」

「ではキュウリの縫いぐるみは?」

「嫌いな食べ物が気になるらしくてな。食べれるようになる為の願掛けらしい」

「ハサミは?」

「たぶん俺がなくしたと言ったのだと思う。それで贈り物にしてくれたんだ。気が利くな」


ナイジェルの嘘をサンチェスは静かに聞いていたが、おもむろに自分のポケットからハンカチを取り出して、目元の涙を拭く。


その表情は嬉しそうだ。


「そんなにナイジェルぼっちゃまの事を思って下さっていたとはっ。このサンチェス、感動いたしました。てっきり、地面に埋って嫌いなキュウリでも食べてハサミで恐怖を感じろ、などの怖い意味だと思った事を謝罪したいと思います」


いや大正解なんじゃないか、とナイジェルは心の中で思った。


「分かってくれたか、サンチェス。それじゃあ俺は出掛けるから後はよろしく頼む」


ナイジェルは友人達と遊ぶ為に、早々に自室から退散した。


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