馬車の中
帰りの馬車の中。
ガラガラガラ、車輪の音と馬の蹄の音が聞こえる。
馬車の中ではミレイダとナイジェルが対面で座り、ミレイダの金髪の長い髪がゆらゆらと揺れ、華やかだった。
「ナイジェル様、この頃元気がないようですけど、どうかなさったの?」
「そういうミレイダも元気がないように見えるが、そちらこそどうした?」
馬車の走る音が二人の喋る声に混ざる。
街の者達の声も入ってくるので雑音が多かった。
「わたくしは元気ですわよ。見間違いではなくて?」
「俺も大変元気だ。元気すぎて剣の授業でも相手の木材が真っ二つになるほどだ」
「そうなのですね。わたくしも心理学の授業で相手の心を真っ二つに折る練習を真心を込めてしてますの。気が合いますわね」
「一つ聞くが・・・」
「?」
「その心理学とやらで、現実では有り得ない妄想のブツを消す方法とやらはないのか?」
「ありますけど、所詮方法というだけで成功するのは己の心次第ですわよ。わたくしも失敗しつづけておりますもの、上手くいくのは難しいですわ」
「そうか・・・」
「・・・」
ミレイダには分かった。この男も小説を見たのだと。
「お互い罵り合うのはどうだろう」
「わたくしは好みませんわ。美しくないですもの」
「隠された罵倒の言葉をお互い百ほど書いて手紙で送る」
「それはいいですわね。採用ですわ」
「なるべく早く送ろう」
「書くのは簡単ですわ」
「さすがだ、頼りになるな。俺も十分もあれば書けるだろう」
「そうなのですね。わたくしは書いているものが家にあるので送りますわ」
ナイジェルは半眼になる。
「ちょっと待て。家にあるものって何だ」
「気になさらないで。女性には秘密が多いのですわ」
「嫌な秘密だな!その調子で頼むぞ!」
「およしになって、ナイジェル様。その言葉は聞きようによっては別の意味に聞こえますわ」
帰り道の馬車の中はいつもより煩かった。




