素敵な学園生活6
学園での昼休みは長く、二時間はある。
その為、生徒達は学園内にある施設を活用して、生徒同士で交流していた。
レストランはもちろんの事、カフェや食堂。運動をする場所や、図書館、芸術館など様々だ。
その中でもミレイダがお気に入りなのはカフェで、別のクラスのお友達と楽しく過ごしている。
今、この場にいるのは、イメルダ、シルビア、リリー、アリス、クレア、クラリス、アイーシャ、そしてミレイダだった。
丸が三つ結合したかのような形の八人用のテーブルに全員が座っている。
その時々で集まる人数が違うが、そのあたりは自由なので問題なく続けられていた。
授業の話や今日あった事などを皆で共有する。その後は、趣味や新しく見つけたお店の話しなどをしていた。
八人の中の一人、アイーシャが口を開く。
それは自分の好きな本の事だった。
「流行りの恋愛小説に感動してしまって、今思い出しても泣いてしまいます。それぐらい感動しましたの」
「まぁ!その本の題名を知りたいわ」
両手を合わせ、期待するようにリリーが待つ。
皆の視線に、アイーシャがポッと赤くなった。
「湖で愛を囁きながら、ですわ」
それを聞いてミレイダは微笑みながら頷いた。
「良い小説を選んだわね、アイーシャ。わたくしも好きよ」
「ミレイダ様もお読みになったのですね。一緒でとても嬉しいですわ」
「出てくる男性と女性がお互いを思いやる姿が印象的で、それを美しく感じる表現がとても素晴らしかったわ」
「そうなんです、ただの会話なのですけど、その会話の中に自然の音や光景が浮かんで、二人から見える世界はとても鮮やかなのだと思いましたわ。
日常生活でも、私もあれほど感じる事ができたなら、もっと世界は美しく見えるのではと思ってしまいました」
アイーシャは夢見るように上を向いて、胸に手を当てている。
周りも共感するように瞳を輝かせた。
「お二人の言う事を聞いてるだけで読みたくなりました」
クラリスが言うと、隣にいたアリスも頷く。
そうよね、と他の皆も頷いていた。
ーーーー
昼休みが終わりに近づき、お友達も解散してお互いのクラスに戻っていく。
ミレイダが自分の席に行くと、本が机の上に置かれていた。
その本を確認すると先程お友達と話をしていた、湖で愛を囁きながら、と言う題名の小説だった。
小説には細長い紙が挟まっている。
ミレイダが摘まんで少し引いてみたが、紙は取れなかった。
「なにかしら?」
ミレイダが小説を開く、が直ぐに閉じる。閉じた手がワナワナと震えた。
小説の中の二人の名前がミレイダとナイジェルの名前に変わり、色つきの絵まで添えられている。
ミレイダの記憶力が良いせいで、瞬時に脳裏に焼き付こうとするのを深呼吸で何とか防ぎ、根性で元の小説と目の前にある小説の分離に成功した。
額に汗が流れる。
危機一髪だった、とミレイダは怒りを感じた。
「ナイジェル・リグロスシス・・・よくもやってくれましたわね」
ミレイダの呟きは、宿敵に向けるような声だった。
「さすがわたくしの婚約者。相手にとって不足はないわ」
ミレイダの言葉に、婚約者に向ける言葉と違う、と無言で首を振り続けるクラスの者達。
フフフ、とミレイダは笑っていた。




