素敵な学園生活5
ナイジェルは男爵家令息や平民の者達と一緒に、五人で話をしていた。
平民とは言っても貴族の血など今やどこにでも入っている。
権力を笠に着て、女性に手を出していたらそうなる事は当たり前で、二十人も浮気相手をつくり血をばらまいた者達もいるので、おかげで貴族の尊い血とやらは地に落ち、今では家名を大事にするのが主流となっていた。
滑稽だな、とナイジェルは内心思っていたのだが、その様子に気づいた男爵家出身のバルトが声をかける。
「どうかしました?」
「いやなに、お前達と話していると貴族の血の事を思い出してな。あれだけ貴族の血を大事にしたご先祖様が、自らの手で壊したのだと思うと、言っている事とやっている事が違いすぎて滑稽だと思ったんだ。話の邪魔をしてすまない」
そう言ってナイジェルは謝罪した。
「昔ならナイジェルさんに声もかけられませんでしたね」
平民のマイクが微笑んで答える。
「そんな事を言ってる僕ですけど、ナイジェルさんが言った貴族の血が入ってるんですよね」
続けて言った言葉に皆が驚く。
そんな事、今まで聞いた事もなかった。
「え?マイク、お前の家にもか?俺の家もだよ」
「俺の家も入ってるな。2人ぐらい」
平民のアーロンとクレイが続く。
全員で顔を見合せ、ブハッ、と笑ってしまった。
「ま、まさか全員か。俺より高位の家はいないだろうな?」
笑いながらナイジェルが言うと、そっと二人が手を上げる。それを見てさらにナイジェルは笑った。
マイクとクレイは二人で顔を見合せながら何かが通じあっているような顔をしている。
「マイク、クレイそうなのか?俺は伯爵家と子爵家なのに」
アーロンは残念そうにそう言う。
男爵家出身のバルトは遠い目をしていた。全員俺より爵位が上ってどういう事だ、と呟いている。
バルトは珍しい生粋の男爵家の血族だった。
「そうですよ。だいたい貴族の息子が四人いたとして、全員が沢山の女性に手を出したらそうなりますって。昔は下劣な平民とか見下しながら、拒否権のない女性に手を出してましたからね。下劣な平民と見下すなら手を出すなって感じなんですけど、下半身だけ正直者で困ります」
ため息を吐きながらマイクはそう言うが、確かにマイクの顔は整っている。ご先祖様の女性ならすぐに手を出されただろう。
クレイの方を見ると、そちらも男前だ。骨格も真っ直ぐで清々しい感じがする。ご先祖様は苦労したかもしれない。
「時代が変わって本当に良かったな」
しみじみとナイジェルはそう言った。
それを見ながらマイクは思い出す。
「そうですね。時代が変わったと言えば、ナイジェルさんの婚約者もそうですよね。女性は男性の言う事に従うのが普通でしたが今では・・・・」
マイクはナイジェルを見て首を振る。
「ちょっと待て、凄く怖いんだが何があった!?」
「ナイジェルさんの机の中にですけど、ミレイダ様が手作りのキュウリの縫いぐるみを詰め込んでいました。キュウリ、嫌いなんですか?」
「・・っ、くだらない事をっ」
確かにマイクの言う通り、ナイジェルはキュウリが苦手だった。
ナイジェルの机からは緑の長い物体が、でろん、とはみ出している。
「時代は変わりましたね」
マイクの言葉にアーロン、クレイ、バルトは頷いていた。




