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Hero×Magic  作者: sanagi
18/18

18話

 2人は病院へはバスで向かう。

「けっこう大きな病院なんだな」

スマホで送られてきた病院までの地図を見る。

「一般人が魔物に襲われたとき、魔法の変な影響を受けてないか、精密検査する必要がありますから。まあ、今回は表向きも刑事事件だから、捜査しないといけないかな」

バスから降り、病院は目の前にあった。

「上田たちは見舞いに行けたらしいから、禁止はされていないんだよな」

「今さらだけど、俺無関係なのにいていいのかな」

「それだったら、優魔になってる俺が帰らないといけないじゃん」

「それはそうなんですけど」

「まあ、記憶がどれだけ消されているか分からないけど、完全に無関係なことはないから、大丈夫だと思うぞ」

「それはどういう…」

疑問を抱く優魔を放置して、勇真は入口で見舞いに来たことを伝え、許可をもらい、病室へ向かう。

病室に井上の名前を見つける。

個室に入れられてようだった。

「よーっす。無事かー?」

勇真はガラガラと病室のドアを開ける。

「…誰?」

けげんな顔をして、井上が尋ねる。

誰かと話すときに気が抜けて、今の自分の状況を忘れて、そのままの口調になってしまう。

そのことに優魔は頭を抱えて、呆れている。

「俺の親戚なんだ」

「赤志さん」

後ろからやってきて、病室へ入る。

「赤志さんも見舞いに来てくれたんスね」

「まあ、強盗に遭遇したみたいだしな」

「あ、座ってください」

壁にかかっているパイプ椅子を手で示し、その椅子に腰をかける。

「でも、俺は強盗見てないんスよね。顔見る前に襲われて、気を失ったみたいで」

「何も覚えていない?」

「そうッスねえ。スマホ取りに屋敷に行ったことまでは覚えているんですけど」

ほっと安堵のひと息をつく。

さんざん勇真に魔法を使わせているところを目撃されていたので、黙っているようには言ったものの、魔法使いだとバレてしまったことを上層部に知られたら、芋づる式に自分の失態も知られてしまうから。

上層部の記憶操作がうまく作動していることが分かり、安心した。

怪我も思ったよりひどくなさそうだし、これ以上ここにいる理由もない。

そう判断して、軽く雑談して病室を出ようとする。

優魔は椅子から立ち上がった。

「じゃあ、そろそろ…」

「ああ!」

そこで井上が大声を上げた。

驚いて、二人とも体をびくっとさせる。

「ど、どうした」

「この子の顔どこかで見たことあるなあって、ずっと考えていたンスよ」

「ゆ、優魔を?」

心当たりがまるでなく、本当は昨日のこと思い出してしまったのではないかと内心不安がる。

「何でだか知らないけど、10年前の夢を見て。エブリバディガーディアンズ最後の決戦なんだけど」

(昨日、レッドハートが戦っているところを見たからだろうな。昨日の記憶を消されていても、昔のことは呼び起こされたんだ。やっぱり、あの人の活躍はみんな知っているんだ)

推し始めたばかりだが、自分の好きな人が大衆に愛されていると分かり、優魔は気分がよくなる。

「もしかしたら君は小さかったから覚えていないかもしれないけど。俺、迷子になった君を負ぶって、一緒に行動していたンスよ。今頃思い出してなんだけど、この綺麗な顔なかなか忘れられないッスよね」

今は勇真が入っている優魔の顔をまじまじ眺める。

優魔の代わりにお礼を言おうと口を動かそうとする。

「あのときは…」

「あのときはありがとうございました!」

勇真の言葉に、優魔が割り込む。

両手を包み込むようにつかんだ。 

「もちろんあのとき助けてくれたレッドハートにもお礼は言いたかったんですけど、一緒にいてくれたお兄さんのおかげでどれだけ救われたか!」

わめきたてるように早口になる。

「いや、レッドハートのしたことに比べたら、俺なんか全然…」

「そんなことありません。両親とはぐれて迷子になりましたが、お兄さんがいてくれて心細さが和らぎました。両親に引き渡されるまでそばにいてくれて、本当に感謝しています」

井上も優魔の勢いに引き気味である。

「赤志さん、落ち着いてー」

井上と優魔を引き剥がす。

「赤志さんにほとんど言われたけど、感謝しているのは本当なんで」

昨日の話を聞いたときは優魔本人は戦っていていなかった。

優魔の10年前の記憶が鮮明になり、一番の目的であるレッドハートに会うことが叶った。

また、その場にいたお兄さんにもお礼を言いたいという希望も聞いていたので、また優魔の顔見れば、井上も思い出すのではないかというのが、勇真が優魔の体になっていてもお見舞いに行こうと思った目的であった。

こんなに興奮するとは思わなかったが。

「赤志さんもあの現場いたンスね。優魔くん引き渡したときは、ご両親だけだったけど」

「そ、そうだな」

また、自分が勇真なことを忘れてしまったことに気づいて、少し冷静になる。

自分の発言が変ではなかったか、頭の中で思い返した。

「親戚だけど、一緒に住んでた訳じゃないし」

考え込んでしまった優魔を勇真はフォローした。

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