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Hero×Magic  作者: sanagi
13/18

13話

 突き飛ばされた先は蜘蛛の糸で閉ざされた扉であった。

その糸に貼り付けられ、また背中を打ちつけた痛みで優魔は動けない。

「赤志さん!?」

「井上はここに隠れてろ。絶対出てくるなよ!」

勇真は優魔のもとへ駆け出していく。

「あ、赤志さん…」

痛みをこらえながら、弱々しい声を出す。

「赤志さんの体、さんざん傷つけちゃって、ごめん」

「んなこと言ってる場合か!むしろ、今痛い思いをしているのはお前だろうが」

糸を引きちぎって、優魔を下ろそうとするが、糸がもともと固いことと、勇真の体と比べて優魔の体は非力なため、力が出せない。

「俺、ここから動けそうにないかも」

「ああ。早く外してやるからな」

「だから、井上さんと逃げて」

その言葉を聞き、一瞬黙り込んでしまう。

「お前、何言って…」

「井上さんを探したとき、裏口あるの見たでしょ。俺を相手にしている間、時間できるから、その間に」

「優魔を見殺しにしろって言うのかよ」

絶望に満ちた表情になり、うなだれる。

「ごめん、元に戻せなくて。俺の体で生きてもらうことになる」

「そうだ、元に戻れば」

強くすると、致命傷を与えるかもしれないと思い、痛くない程度にお互いの額を打ちつけあう。

「戻れ戻れ戻れ」

必死に、願いをこめて。

「赤志さん、あの蜘蛛来ちゃう」

「戻ってくれよ」

勇真は崩れ落ち、目から大きな涙がこぼれ落ちる。

「俺が助けに行くってい言ったから。今の俺には何もできないのに」

無力な自分に絶望するしかない。

「それでも付いていくって決めたのも俺だから」

優魔の言葉に耳を傾けるため、顔を上げる。

「助けを待つだけの自分が嫌だった。あの日助けてくれたあの魔法使いみたく、誰かを助けられる誇れる自分でありたかったんだ。例え姿が変わったとしても」

その人は魔法使いじゃないし、憧れられるような存在じゃないと、本当は言いたかった。

「ここで全滅したら、本当に後悔しちゃうからさ。早く行って」

ここで自分の身を犠牲にする生き方のために、助けた訳じゃない。

それでも、優魔の中にいるのは、自分で自分を誇ることができた最高だった自分だ。

そんな自分を召喚できれば、この場は切り抜けられるはず。

涙をぬぐい、立ち上がる。

「今は資格がうんぬん言ってる場合じゃない」

覚悟は決めた。

振り返り、巨大蜘蛛と対峙する。

そのことに、優魔も気づいた。

「俺の体で無茶…」

「エブリバディチェンジ」

そう唱える。

ここには変身道具もない。

優魔の体には、変身できるだけの魔力はない。

でも、勇真にとっては、勇気を奮い起こす言葉であった。

「エブリバディチェンジ?」

勇真がどうしてそんなことを言ったのか分からず、優魔は思わず復唱する。

そうすると、心の底に火が灯ったような感覚がする。

その火が体中に広がり、炎となり体を熱くする。

「何、この感覚…」

異様な感覚だったが、不快は感じなかった。

むしろ馴染み深く感じた。

「え?」

勇真の姿は変わらず、優魔のままである。

しかし、その周りに炎がメラメラと燃えているように見える。

それが、昔優魔を助けてくれた魔法使い、全身が赤い装束で、ヘルメットをかぶり、そのヘルメットの目の部分はシールドがあり顔は下半分しか見えない。

その人が重なった。

「燃える心臓、レッドハート!」

決めポーズを取る。

「みんなを守る、みんなで守る。我ら」

「「「エブリバディーガーディアンズ!/…」」」

ファンの井上は興奮して、優魔は昔をなぞるようにともに言う。

「あの子、再現度高いッスね!」

憧れていたヒーローを10年ぶりに再び見れたような感覚で、興奮が収まらない。

「赤志さんがあの時助けてくれた魔法使いだったの?」

そうつぶやく声は、勇真にも井上にも遠く、届かない。

「気持ち、高まってきた…」

拳を握り締める。

(あの武器、俺がどれだけ見て、使ってきたと思ってたんだ)

勇真の両手の上で風が巻き上がる。

もやがだんだんと形作っていく。

そして、ベースが白く、パーツに所々赤く塗られたライフルが現れる。

「久しぶり、相棒」

懐かしい目をして、眺めていた。

「エブリバディガンだ!」

井上は子供の頃に戻ったように、わくわくが止まらなくなっている。

優魔も目をきらめかせていた。

(すごい疲労感がする。これが魔力を使った結果なのか?)

はあはあ、息を荒くしている。

「1人しかいないけど、一撃でやられてくれよ」

エブリバディガンのトリガーに指をかけ、構える。

「ハートショット」

静かに言い放ち、弾丸が飛び出す。

撃ち出した威力に耐えられず、反動で銃口が天井に向くように、跳ね上がる。

蜘蛛に真っ直ぐ向かっていった弾丸は、弱点の心臓に打ち込まれる。

「グギャー!」

蜘蛛が悲鳴を上げると、爆発が起きる。

その威力で蜘蛛は焼け、遺体すらも残らず、灰をまき、消えた。

「やったか」

勇真は疲れでその場に座り込む。

蜘蛛が消えたことで、糸も消え、優魔も解放される。

「大丈夫、赤志さん?」

勇真のもとへと駆け寄る。

「おう!これくらい平気平気」

腕をぶんぶん振って、無事なアピールをする。

パチパチと音がする。

その音の方を見ると、蜘蛛が消えたあとも、炎が残り、屋敷に飛んでいた。

「これはやばい?」

優魔が冷や汗を流し、顔を引きつらせると、

「に、逃げろー!」

勇真が叫んだ。


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